こんばんは。
今夜も河内の民話です。
あんまり続けるとネタがなくなるのですが、まだ大丈夫です。
《キツネの悲しみ》
加納村の南に、猫の額ほどの田を作り、農閑期のときは、猟をしている幸助という人が住んでおりました。
ある年の五月のことです。村の東を走る今米堤に、銃をさげた幸助の姿が見えました。堤の両側の畑は、おたふく豆の花が咲き競っていて、のどかな昼さがりです。幸助はその豆畑の中で眠っているキツネを見つけたのです。
「しめた。こんなとこに大きなキツネがいよったぞ」と銃をかまえました。
その気配にキツネは目を覚まし、畑のうねを飛び越えて逃げます。しかし銃に自信のある幸助は「ズドン」。鋭い銃声が五月の空を引き裂きました。ねらいたがわず一発でキツネをしとめたのです。幸助は意気揚々と太い尻尾を垂らしたキツネを担いで家に帰り土間につるしました。このことを聞きつけた村人たちはつぎつぎと見物に来ました。そして一発でしとめた幸助の腕前に感心していました。
しかし見物に来た人の中には、今にもこぼれ落ちそうな大きな乳房を持った母ギツネを哀れに思った人もあったのです。
その夜のこと。上機嫌で寝た幸助は、雨戸をたたく音に目を覚まし、「だれやねん。今じぶんに―。どうしたんや」と窓から外をのぞいてみました。門口の前には、何か小さな黒い影が飛び跳ねているのです。月明かりでよくよく見てみると、それは、三匹のキツネの赤ちゃんなのです。その三匹が、しっぽで必死に戸をたたいているのです。「トントン、トン」とたたく音が「返せ、返せ」と聞こえるのです。
幸助は「昼間に撃ったキツネのややこ(赤ちゃん)に違いない。まだ乳飲んどったんやなー」とあ然とつっ立っていました。
どれだけの時間がたったのでしょうか。東の空が白みかけた時、キツネの赤ちゃんの姿は見えなくなっていました。
でも話はこれで終わったのではありません。
やがて幸助の娘が美しく成人して嫁に行ったのですが、女の子を産んだ後、乳が大きくはれあがり痛み出しました。あらゆる手当てをしたのですが、少しも良くならず、ついに娘は苦しみながら死んでしまったということです。
「これはきっと母ギツネを殺したたたりやでー恐ろしいこっちゃなぁ」と村人たちは、うわさし合いましたと。
今夜も河内の民話です。
あんまり続けるとネタがなくなるのですが、まだ大丈夫です。
《キツネの悲しみ》
加納村の南に、猫の額ほどの田を作り、農閑期のときは、猟をしている幸助という人が住んでおりました。
ある年の五月のことです。村の東を走る今米堤に、銃をさげた幸助の姿が見えました。堤の両側の畑は、おたふく豆の花が咲き競っていて、のどかな昼さがりです。幸助はその豆畑の中で眠っているキツネを見つけたのです。
「しめた。こんなとこに大きなキツネがいよったぞ」と銃をかまえました。
その気配にキツネは目を覚まし、畑のうねを飛び越えて逃げます。しかし銃に自信のある幸助は「ズドン」。鋭い銃声が五月の空を引き裂きました。ねらいたがわず一発でキツネをしとめたのです。幸助は意気揚々と太い尻尾を垂らしたキツネを担いで家に帰り土間につるしました。このことを聞きつけた村人たちはつぎつぎと見物に来ました。そして一発でしとめた幸助の腕前に感心していました。
しかし見物に来た人の中には、今にもこぼれ落ちそうな大きな乳房を持った母ギツネを哀れに思った人もあったのです。
その夜のこと。上機嫌で寝た幸助は、雨戸をたたく音に目を覚まし、「だれやねん。今じぶんに―。どうしたんや」と窓から外をのぞいてみました。門口の前には、何か小さな黒い影が飛び跳ねているのです。月明かりでよくよく見てみると、それは、三匹のキツネの赤ちゃんなのです。その三匹が、しっぽで必死に戸をたたいているのです。「トントン、トン」とたたく音が「返せ、返せ」と聞こえるのです。
幸助は「昼間に撃ったキツネのややこ(赤ちゃん)に違いない。まだ乳飲んどったんやなー」とあ然とつっ立っていました。
どれだけの時間がたったのでしょうか。東の空が白みかけた時、キツネの赤ちゃんの姿は見えなくなっていました。
でも話はこれで終わったのではありません。
やがて幸助の娘が美しく成人して嫁に行ったのですが、女の子を産んだ後、乳が大きくはれあがり痛み出しました。あらゆる手当てをしたのですが、少しも良くならず、ついに娘は苦しみながら死んでしまったということです。
「これはきっと母ギツネを殺したたたりやでー恐ろしいこっちゃなぁ」と村人たちは、うわさし合いましたと。
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