こんばんは!
今日は冬至です。
少し暖かい冬至ですね。
さて、今年最後の「河内国の昔話」になります。
仏名寺さんは、この辺りでは最も大きな寺院です。
本堂も群を抜いて立派です。ちょこっと羨ましかったりします。
今回は、その仏名寺さんにまつわるお話です。
「太鼓楼」
「ドン ドン ドン」
仏名寺の太鼓の音が、村中に響き渡りました。
「お昼やでー。弁当にしようや」と刻(とき)を知らせる太鼓の音は、村人の生活に密着したものでした。
山門の北にあったこの太鼓楼には、二匹の豆ダヌキが住んでおりました。
春の彼岸会も近いある夜のことでした。打ち合わせに来た檀家総代の伊太郎さんと豊吉さんが、夜も更けてから寺を辞しました。
庫裏の玄関まで和尚さんに見送られ、山門まで来た時です。ひょっこひょっこと草履の音も軽やかに近づいて来る小さな人影を見ました。それは、前かがみの小さいからだの寺の奥さんでした。あたりはおぼろにかすんで、芽のふくらんだイチョウの大木が頭におおいかぶさるように四方に枝を伸ばしておりました。
「こんなに晩の遅いのにーごりょさんが門まで送ってくれはったなぁー」
二人は恐縮して、何度も頭をさげて帰途につきました。
山門から十間(20m)ほど来た時、豊吉さんがはっと立ち止まり、「寺のごりょさん、きのうから実家へ帰ったあんおとちがうか。おっさんが、そう言うたあったな」
「せやけどー、さっきの人は、確かにごりょさんやったで。帰ってきはったんやろうな」
そうかなぁー」と、合点はしたものの、何かはっきりしないものが残りました。
そこで、二人は翌朝、田仕事に行く前に寺に立ち寄ってみました。
「まだ、家内は寺の方へ帰って来とりまへん」との和尚さんの言葉でした。
では、昨夜見た奥さんは幻だったんでしょうか。
いいえ、それはきっと太鼓楼の豆ダヌキが、奥さんに化けたのだと、村人はうわさをしました。
また、こんなこともあったのです。
浅吉さんが、夜更けに山門の前を通った時、小さな黒い影が屋根から飛び降りてきた気配を感じました。
と、浅吉さんはぴたっとその場にくぎづけになってしまったのです。下駄だけが地面に吸いついたように動かないのです。無理に右足を出そうとしたその時、頭や肩に力が入り、前にどてんと転がってしまいました。
不思議にも下駄だけが二つちゃんと立っているのです。
村人は、これも豆ダヌキが下駄の歯の間に入って人を転ばせるのだと、夜おそく寺の前を通ることを恐れておりました。
今日は冬至です。
少し暖かい冬至ですね。
さて、今年最後の「河内国の昔話」になります。
仏名寺さんは、この辺りでは最も大きな寺院です。
本堂も群を抜いて立派です。ちょこっと羨ましかったりします。
今回は、その仏名寺さんにまつわるお話です。
「太鼓楼」
「ドン ドン ドン」
仏名寺の太鼓の音が、村中に響き渡りました。
「お昼やでー。弁当にしようや」と刻(とき)を知らせる太鼓の音は、村人の生活に密着したものでした。
山門の北にあったこの太鼓楼には、二匹の豆ダヌキが住んでおりました。
春の彼岸会も近いある夜のことでした。打ち合わせに来た檀家総代の伊太郎さんと豊吉さんが、夜も更けてから寺を辞しました。
庫裏の玄関まで和尚さんに見送られ、山門まで来た時です。ひょっこひょっこと草履の音も軽やかに近づいて来る小さな人影を見ました。それは、前かがみの小さいからだの寺の奥さんでした。あたりはおぼろにかすんで、芽のふくらんだイチョウの大木が頭におおいかぶさるように四方に枝を伸ばしておりました。
「こんなに晩の遅いのにーごりょさんが門まで送ってくれはったなぁー」
二人は恐縮して、何度も頭をさげて帰途につきました。
山門から十間(20m)ほど来た時、豊吉さんがはっと立ち止まり、「寺のごりょさん、きのうから実家へ帰ったあんおとちがうか。おっさんが、そう言うたあったな」
「せやけどー、さっきの人は、確かにごりょさんやったで。帰ってきはったんやろうな」
そうかなぁー」と、合点はしたものの、何かはっきりしないものが残りました。
そこで、二人は翌朝、田仕事に行く前に寺に立ち寄ってみました。
「まだ、家内は寺の方へ帰って来とりまへん」との和尚さんの言葉でした。
では、昨夜見た奥さんは幻だったんでしょうか。
いいえ、それはきっと太鼓楼の豆ダヌキが、奥さんに化けたのだと、村人はうわさをしました。
また、こんなこともあったのです。
浅吉さんが、夜更けに山門の前を通った時、小さな黒い影が屋根から飛び降りてきた気配を感じました。
と、浅吉さんはぴたっとその場にくぎづけになってしまったのです。下駄だけが地面に吸いついたように動かないのです。無理に右足を出そうとしたその時、頭や肩に力が入り、前にどてんと転がってしまいました。
不思議にも下駄だけが二つちゃんと立っているのです。
村人は、これも豆ダヌキが下駄の歯の間に入って人を転ばせるのだと、夜おそく寺の前を通ることを恐れておりました。