津軽ジョンがる電源日記

『KOJO TECHNOLOGY』 電源メーカースタッフ日記

蚤の心臓!(でも毛生えてる)

2006-08-29 21:22:29 | インポート

MQ R1技術解説第3弾!!今回はうちの電源の「蚤の心臓?」(インバータ)部にまつわる話だ。(^o^)丿ちょっと専門用語が出てくるけど頑張ってね!

最近ではよく耳にするインバータ。ノイズ源として結構 嫌われ者で、厄介もの扱いをされている。そこをほら!何とかするのが腕な訳でしょう)^o^(

うちのインバータ部には、IGBTというパワーデバイスを使用している。パワーデバイスにはこの他、バイポーラトランジスタ、MOS FETやもちろんSITというものが存在する。(他にもいっぱいあるけどね!)

MOS FETはゲートドライブの消費電力が非常に少ないという反面、大電力化が難しいとされている。(最近はパワーも随分取れるようになったけどね・・・)これに対し、IGBTはゲートがMOS構造であるうえに、出力段(コレクタ-エミッタ間)がバイポーラトランジスタ構造となっていることから、大電力型に向いていると言われている。(SITについては別な機会に!)

一方、スピードに関してはMOS FETに分があり、非常に高速なものが出てきている(数百KHzやMHz単位)が、その構造からドレイン-ソース間には、逆方向にダイオードが形成される。(MOS FETを製造する過程で、勝手にできる)

インバータを構成する場合、逆方向ダイオードはリカバリダイオードとして、回路動作に一役担うのだが、高速化が難しく、折角のMOS FETのハイスピードを上手く生かすことができず、インバータとして使用する際のネックとなる。(これもまた技術革新により、だいぶ高速化されてきた)

これに対し、IGBTの場合、リカバリダイオードは同一パッケージ内に後付けされることから、高速なダイオードを選択(あくまでもデバイスメーカが選ぶのだが・・・)することができる。

このリカバリダイオードのスピードの違いは、インバータ動作において、直接ノイズレベルに影響している。MQ R1試作の折、MOS FETバージョンも取り組んだが、やはりノイズレベルが大きくなることから、IGBTの採用に至った。MOS FETの技術革新も目覚しいことから、今後は立場が逆転するかも(>_<)

そう言えば、今回の試作はあんまりデバイス壊さなかったなぁー!(ジョンがる隊長じゃなくて、同僚が実験したからでしょう(>_<)あんたがやってりゃもっと壊してたよ! )電解コンと同じで、派手な壊れ方すんだけどなぁ~。でも昔、半導体研究所(仙台)いた頃、これまた同僚がモジュールタイプ(ごつくて壊そうと思っても壊れそうにないやつ)のパワーデバイス、派手にやったよなぁー。

「ド・ガァーン!」モジュールの糊付けが剥がれて、パッケージ丸ごと天井まで跳ね上がったよなぁー。他の研究生が何事かと人だかりができたよなぁ~。あー懐かしい。半研(半導体研究所)でのエピソードは、また今度ね!

また、他のノイズ対策として、スナバ回路※1定数をカット&トライで決定し採用。パターンレイアウトにおいても、ループ面積を極力抑え、インバータに供給される直流電圧(約DC280V)ラインを対面させることで、浮遊容量※2を形成させ、外来ノイズの侵入や放射を防いでいる。また、その高周波スイッチングの影響から、表皮効果※3も発生するため、パターン面積を大きく、広くとっている。

大電力を扱うのにとても繊細なんだね!

MQ R1のインバータ出力は、PWM(パルス幅変調)制御されたパルス波形を確認することができ、出力電圧のピーク近傍では、その幅が広く、ゼロボルト付近は、狭くなるよう制御されている。

今後のデバイスの進歩により、更に高周波化に進むことは間違いないと考えている。ちょっと真面目すぎたかなぁ~(-_-;)

※1 サージ(スパイク)電圧を吸収する回路

※2 部品として存在しない、目に見えないコンデンサ

※3 高周波電流は導体の表面に集中する現象(よって導体の断面積が大きいよりも、細い線が何本も束になっている方が表皮効果に強い)