Quelque chose?

医療と向き合いながら、毎日少しずつ何かを。

自宅でのサーキットトレーニングは骨量を増やすか?

2019-05-10 | 医学・医療・健康
なんというか、手作り感あふれる論文を見つけました。
 
 
「女子大学生における、骨密度と筋肉量の増加・脂肪量減少のための自宅でのサーキットトレーニングの有用性」という論文。
大阪の梅花女子大のTakahata先生の単著です。
 
 
41名の女子大生 (18.5 ± 0.6 歳)を対象とし、トレーニングを行う群と行わない群に分け、運動実施群には3ヶ月の間、自宅でのサーキットトレーニングを行ってもらったとのことです。そして開始時、2ヶ月後、3ヶ月後に、超音波法によって踵骨の骨量を測定。
 
 
サーキットトレーニングについては、
この先生がチョイスしたいくつかの有酸素・無酸素運動
(無酸素運動は腹筋、スクワット、腕立て伏せ、 カーフレイズ、ヒップレイズ、有酸素運動はステップエアロビクス、シャドーボクシング、ジョギング)を組み合わせ、
一つの運動を30秒ずつ行って次に移るというトレーニングを計5分3セット、1週間に3日以上行いましょう!・・というものであったようです。
 
 
なお、超音波による骨評価法では、機器によって算出される指数が違うことがありますが、今回の測定では
超音波伝搬速度(speed of sound: SOS):骨量が多い骨では高くなる
超音波減衰係数(broadband ultrasound attenuation: BUA):骨密度の高い骨で大きくなる
そして、SOSとBUAから算出されるstiffnes index(QUS-SI) 
・・の値を用いています。
 
 
その結果、
運動をした群(22名)では、
体脂肪率、BMI には変化なし(残念!?)。
BUAはちょっとだけ上昇(2ヶ月後:p = 0.033、3ヶ月後:p = 0.036)。SOSは2ヶ月後には有意差はないが、3ヶ月後の測定でやや上昇(p = 0.018)。QUS-SIには変化なし。
筋肉量はわずかに増加しており、SOS値と相関(p = 0.004)。体脂肪率はBUAと逆相関 (p = 0.043)? (体脂肪率は開始前27.3±4.70、 2ヶ月後27.4±4.75、3ヶ月後27.9±4.86ですから微妙か)
 
 
一方、運動をしなかった群(19名)では、
体重・BMIは変化なし。
体脂肪率・・開始前28.1±4.65、 2ヶ月後29.0±4.30、3ヶ月後29.1±4.61。うーんちょっと増えてますかね。で、筋肉量はわずかに減少。
しかしながら、stiffness index(SI)はわずかに上昇 (2ヶ月後:p = 0.002、3ヶ月後:p=0.002)。体脂肪率がSI と相関していたとのことです(p = 0.009)。ただしSOS,BUAには有意差なし。
 
 
ということで、
・女子大学生において、自宅でのサーキットトレーニングは、骨量と筋肉量を少し増加させ、体脂肪率を改善した
・今回の結果では、運動をした群でもしていなかった群でも、超音波法の骨量の指数は上昇していたが、その上昇の理由はそれぞれの群で異なっていた(運動しなかった群では、体脂肪率の増加が骨量増加に関係していた)
 
 
という考察になっています。
 
 
比較的少人数で短期間ではあり、さらに検討を加えることが必要であるとは思いますが、自宅でのトレーニングを続けることができれば、女子大生にありがちな骨量減少(特に、ダイエットをしている学生さん)を、少しでもくいとめることができるかもしれませんね。
 
 
・・と書いたところで思ったのですが、サーキットトレーニングの1サイクルごとに推しの映像を見るとか、そういう女子大生仕様のトレーニングにしたら盛り上がるかな?? どうでしょう学生の皆さん?
 
 

“若いママと飲酒”

2019-04-23 | 医学・医療・健康

女性のアルコール問題がご専門の、国立病院機構久里浜医療センター精神科 岩原先生から、取材を受けたという記事を教えていただいた。

育児中に公園で…若いママの“公然飲酒”が目立ち始めたワケ

タイトルはやや大げさにも思うが(別に大勢のママが公園で飲んだくれてるわけではない…ですよね?)、確かに「女子飲み」というのはよく聞く。

ママ友と飲むこともあるだろうし、場合によっては保護者会でちょっと乾杯することもあるだろう。

子育て中であっても、酒に浸って子どもに構わないというなら虐待かもしれないが、息抜きだってしたいだろうし。

とは言え、飲酒をするということは、心身になんらかの負担をかけることでもある。

最近、「ちょっとならお酒は健康に良い」という考え方を否定する報告があって議論を呼んでいるし、特に女性はアルコール代謝がやや弱いということを意識していないと、健康を損ねることもありうる。

以下、先の記事から抜粋すると:

「飲酒は月経周期を乱し、生殖能力に悪影響を与えることが分かっています」(岩原氏)というから、授乳期を過ぎていても次の子が欲しい時はやめたほうがベターだ。

また、女性は男性に比べてアルコールの代謝能力が低く、大量飲酒による肝疾患やアルコール依存症の進行も早い。酒量が増えると乳がんのリスクも高まるとか。」(引用終わり)

別の記事も紹介しておくと:

 お酒を飲むと「癌」や「認知症」のリスクが上がる? 英国で驚きの研究結果 (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

 
お酒の飲み方には、その人の生き方が現れる、ような気がする。その「生き方」には、健康状態も含まれている。
皆様、女性も男性もその他の方々も、心とカラダにこたえない飲み方で、酒を飲む時間を楽しみましょう。
 
岩原先生、ありがとうございました。

長期の運動習慣は関節リウマチの発症を予防する?

2019-04-12 | 医学・医療・健康
女性における長期間の身体活動と、関節リウマチとの関連を見た前向き研究です。運動習慣はリウマチを予防するのか?ということで、抄録をかいつまんで紹介。 

Liu X et al.
Long-term physical activity and subsequent risk for rheumatoid arthritis among women: A prospective cohort study.
Arthritis Rheumatol. 2019 Mar 28. doi: 10.1002/art.40899. [Epub ahead of print]

アメリカの有名な女性のコホートであるNurses' Health Study II (1989-2015)を用い、身体活動について質問票で調査するとともに、関節リウマチの発症の有無について被験者の自己申告と病歴・臨床データから調査し、運動とリウマチとの関連を検討したというものです。

この関連を調べるにあたっては、初期のリウマチになってからでは運動量が落ちてしまって結果が偏る可能性があるため、リウマチの診断前2〜8年間(つまり、まだリウマチによる運動制限がない頃)において、どのくらい運動(recreational physical activity)していたかを検討しました。

検討の結果、

113,366人の女性の調査で、 2,428,573 人年(人数x年)の追跡期間の間に、506人がリウマチを発症していました。

そこでリウマチに関連しそうな、喫煙、食事の質、それに18歳時のBMI(body mass index)などの交絡因子を調整してみると、

運動した時間(cumulative average total hours of recreational physical activity)が多いほど関節リウマチのリスクが低かった(例えば1週間に7時間以上運動した人は、HR (CI): 0.67(0.47,0.98) ・・なので約3割のリスク減少)、ということが判明しました。

ううむ。

いやまだ原文を読んでいないんですが、どんな運動をしていたのか(どの筋肉や関節にどのような負荷をかけていたのかとか、結果、筋肉量や体組成はどうなっていたのかなど)興味深いです。(そのうちeスポーツもスポーツに含めないといけないか?)

ただ、別に運動不足だからリウマチになるとか、アスリートだから免疫疾患にならないとか、そういうことでもないのですよね。

さらなる検討は続きます。


「大気汚染と自己免疫疾患」

2019-04-10 | 医学・医療・健康
Annals of the Rheumatic Diseasesに掲載予定の記事一覧から。
台湾から、大気汚染と全身性自己免疫疾患との関連についてのletterが出るようです。

Kuo-Tung Tang et al.
Relationship between exposure to air pollutants and development of systemic autoimmune rheumatic diseases: a nationwide population-based case–control study

大気汚染暴露と全身性自己免疫疾患との関連についての症例対照研究ということで、自己免疫疾患(SLE、関節リウマチ、強皮症、自己免疫性筋炎)の患者さんと、これらの疾患のない対照群について、住んでいる場所における長期間の大気汚染との関連を検討したものです。

大気汚染については、二酸化硫黄(SO2)、二酸化窒素(NO2)、オゾン(O3)、一酸化炭素(CO)、 PM10の各濃度、およびこれらの濃度から算出されるPollutant Standards Index (PSI)を用いて、台湾各地368地区における年間の平均的な汚染度を推定しています。

その結果、
SLEについて、二酸化窒素(NO2)暴露レベルとSLE発症との間に正の相関 (OR 1.46, 10 ppb増加ごとに95% CI 1.03〜2.08)、また一酸化炭素(CO)レベルとは負の相関 (OR 0.29, 95% CIは1 ppm増加ごとに0.12〜0.70)が見られました。多変量解析でも同様の結果が得られ、長期間の二酸化窒素(NO2)への暴露が炎症反応を起こす一方、一酸化炭素はなんらかの内因的な抗炎症作用を示すのであろうと推測されています。

(ただ、figureを見るとCOに関しては、他の疾患ではあまりはっきりした傾向がないように思えるのでちょっとどうかな・・・と(個人の感想です))

一方、二酸化硫黄SO2への平均暴露レベルは、リウマチと筋炎の患者さんで対照に比べ有意に低く、その他の疾患でも有意でないものの低い傾向であったということです。 ・・が、こちらについても「その他の疾患」のデータは結構ばらけているようで、まだまだ今後の検討が必要に思います。

ちなみに、PM2.5についての検討も結果には出ていますが、特に有意な所見は見られていません。

うーんどうなのか。

ということで、結果としては今回、SLEについて、大気汚染と発症との間に関連が示されたということです。とは言え個人的には、リウマチについても何らかの(ぱっと見てすぐに明らかになるものではないかもしれませんが)病態との関連があってもおかしくないと思っていますし、少なくとも、皆様、気管支や肺の健康に気をつけていただきたいです。

さらなる検討が(まだまだ)必要ですね。


【動物実験】エクオールは関節炎を抑制する

2019-04-01 | 医学・医療・健康
たまたま見つけた論文。
Lin IC et al
Equol suppresses inflammatory response and bone erosion due to rheumatoid arthritis in mice.
J Nutr Biochem. 2016 Jun;32:101-6. doi: 10.1016/j.jnutbio.2016.02.012. Epub 2016 Mar 21.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27142742
イソフラボンの一種、ダイゼインが腸内細菌で代謝されることによってできる「エクオール」は、これまでに骨粗鬆症の予防や抗酸化作用などを示すことが報告されており、細胞実験のレベルでは炎症により生ずるTNFを低下させるという報告もありますが、関節リウマチへの効果は不明です。
今回、九州大学のグループから、コラーゲン関節炎モデルマウスを用いて、エクオールの関節炎に対する効果をみたという論文があったので見てみました。
コラーゲン投与による関節炎マウス(ヒトの関節リウマチのモデルマウス)と、対照群のマウスを用いて、それぞれにエクオール溶液または対照(溶媒のみ;DMSO)を1日1回投与(day 26-60)、関節炎スコアと骨密度を測定し、炎症性サイトカインや骨代謝に関わる遺伝子の発現をPCR法によって解析したというものです。
その結果、
エクオール投与マウスでは、対照マウスと比べて、コラーゲン投与によって起こる関節炎の発症が遅く(関節炎症状発症まで、対照マウスでは37.2日、エクオール投与マウスでは46.5日)、また関節炎の重症度(関節炎スコア)も軽度でした。
骨密度について:対照マウスは関節炎を起こしていないマウスと比べて骨密度が低下していたのに対し、エクオールを投与したマウスでは関節炎のないマウスと同程度以上の骨密度が保たれていたということです。
また、今回の関節炎モデルでは、血清中の炎症性サイトカインは検出されなかったとのことですが、病変部でのIL-6の発現はエクオール投与マウスでやや低下していました。そのほか、炎症や骨・軟骨破壊に関わる遺伝子についても解析されていました。
あくまでも今回は特殊なモデルを用いた動物実験であり、使用されている「エクオール」はヒトに対して販売されているものとは違う試薬ですので、これをもって「エクオールを飲むとリウマチに効く!」というものではありません。ですが、イソフラボンによる骨代謝調節と、リウマチ病態への関与の可能性については、今後も興味を持って見ていきたいと思います。