新国立劇場バレエ団、吉田都芸術監督による、ピーター・ライト版の重厚な「白鳥の湖」。
さすがライトである。
御伽噺のような白鳥のストーリーを、
若き王子が逃避を求める非現実世界と現実との遭遇、
それによる悲劇的結末、
という重いストーリーを底流としつつ、
垣間見える王室の生活の華やかさ、森の神秘、白鳥の群舞、艶やかな衣装などによって、
極めて美しく、また現代の我々が感情移入できる物語に仕立てている。
それを表現するダンサーの皆様の表現力たるや。木村さんはオデットの悲しさとオディールの凄みとを一瞬で演じ分け、渡邊さんは若き王室後継者の一途な未熟さに高貴を纏う、まさに王子だ。
群舞もぴたりと揃って、そこに、魔法にかけられた白鳥の群れが確かにいるよう。
ライト版は悲劇で終わるので切ないのだが、また観たい。
久しぶりに、演目のためもあるのかほぼ満席だったと思う。やはり舞台に向かって直接拍手できるのは嬉しい。まだ「ブラボー!」とは発声できないが、皆スタンディング・オベーションをしていた。
座席メモ
新国立劇場オペラハウス1階19列、通路近く。
舞台全体が見渡せるが、やはり衣装や表情、舞台装置を良く見るためにはオペラグラスが必要。
今回は、前の座席に人が来なかったため正面の見易さについては評価せず。