「モリッシーの心の平和」 日本語訳 Part3
◆加工処理されたドラム音、スパイダーズ・フロム・マーズの演奏するようなリフ、
フラメンコ調ギター、ラップの要素…「ニール・キャシディー・ドロップス・デッド」は
聴いていて楽しいですが、同様にレコーディングも楽しかったのでしょうか?
うーん、バンドのメンバーは、君がスパイダーズ・フロム・マーズのことを引き合いに出した
なんて聞いたら笑うだろうな。彼らの影響なんて、まったく受けてないからね。
それに、ドラマーのマシューは並外れて多才なんで、ドラムの音の加工なんてしない。
彼は器用に、あらゆるポジションを試してドラムのペダルを操り、考えられる限りの音を出し
んだ。グスタヴォのフラメンコのギター、あれは、まさしく息もつけないような出来栄えだった。
ああ、確かにそうだね、どんな段階においてもすべて、このレコーディングは楽しかった。
◆アルバムタイトル曲は、民主的過程に関する絶望感たっぷりですね。
あれこそあなたの感じていることでしょうか?
私自身の経験から言えば、英国は民主的にはなれない。なぜなら、政治の
上部構造が自選式になってる。そこには自分たちを「王室」として知らしめようと決めてる
連中がいるだろう。英国民の45パーセントが王政を指示しているが、55パーセントは
不支持なんだ。英国女王は世界で一番金持ちな女だ。それなのに、毎年英国の
労働者たちから2億ポンドもの金をもぎとって我が物にしている。彼女の存在は単に、
国民の制圧を象徴しているだけだ。彼女の働きは、それがなんであれ、無意味なもの
になり下がっている。私は気にもとめてないし、私の知り合いも誰も気にしていない。
国家の長を我々が選べない国なんて、民主的にはなれない。なれっこないだろう?
45パーセントの王室支持者さえも、その大部分の人々は、王室は政治家の
管理下におかれることがふさわしいと主張している。我々国民に好かれようという
努力も何もできやしない、それに口を開けば失言ばかりしている王室の連中。
奴らへの愛ゆえにそう主張しているんじゃないんだよね。
◆「君が投票するたび、この成り行きを指示してる」という歌詞は力強く
響き渡っていますね。でも何か、他の言い方も考えたのですか?
その歌詞しかそこにふさわしくないね。人々は皆、誰も好きじゃない首相の考えてる
ことに本当にうんざりしてるからね。『華麗なる貴族』(英国の小説家イーヴリン・ウォー
の小説『ブライズヘッド再訪』がテレビ映画化されたもの)の1シーンみたいな首相の
クエスチョンタイム(党首討論)しかり、英国の政治は、ここまで納得できない状態に
なったことは、これまでにないよ。
それに、絶え間なく保守党から労働党に、労働党から保守党に政権交代したりしている
のも無意味だね。なぜなら、人々は相変わらず憤って、陰鬱にふさぎこんでいる状態の
ままじゃないか。現在の投票システムにおいては、物事が良くなっていくような兆しさえ
見えない。それにこんな世の中になっても、実際にはほんの少数の人間しか、わざわざ
投票に出かけて行かないんだよ。こんな状態だったら、私だって難なく首相になれる
くらいだ。こんなに馬鹿げた感じじゃなければ、なってみたらおもしろかったろうね。
◆あなたは長いこと、動物虐待反対という主張を明らかにしてきています。
一番新しい音楽による意志表明は、「ブル・ファイター・ダイズ」と「アイム・ノット・ア・マン」
でしょうか。PETAやグリーンピースの動物愛護問題に対する活動の進捗については
どう考えていますか?
政府は、動物を金儲けの見地からしか見ていないんだ。我が国には、アン王女みたいな、
馬を食べたりアナグマをガス中毒死させて毛皮をとることを提唱しているような連中もいるしね。
なんであの女は自分で毒ガスをくらわないんだろうね?そうすれば英国の田舎にもう少し
スペースができるのにね。
PETAやシー・シェパードみたいな団体は特に、この地球を変えてくれて、救ってくれている団体だよ。
彼らの活動に反対するアホどももあまりに多いけどね。それに食肉処理場で働きたいという
人々をたくさん生んでいるこの社会には失望しているよ。どうしたらそんな考えになるんだろうね?
もちろん、動物保護論者には大英帝国3等勲爵士も、大英帝国4等勲士もいやしない。
それなのにブライアン・フェリーやPJハーヴェイみたいに、キツネ狩りをしたがる奴らはたくさん
いるんだからね。動物への残虐行為は、本当に死ぬほどいやだ。このことについての主張を、
やめるつもりは絶対にないね。
◆あなたの動物愛護活動を続けていくためには、何が必要でしょうか?
そうだな、もし、アン王女様がジェイミー・オリヴァー(英国の人気シェフ)を
ガス室送りにして下さったら、大変助かるのですが?
ジェイミー・オリヴァー。あいつは、マクドナルドよりたくさんの動物を殺している。
(つづく)