☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『闇のあとの光』(2012)

2014年06月01日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『闇のあとの光』(2012)

【作品概要】
監督:カルロス・レイガダス
出演:アドルフォ・ヒメネス・カストロ、ナタリア・アセベド

2012年/メキシコ=フランス=ドイツ=オランダ/カラー/115分/原題:Post Tenebras Lux
配給=フルモテルモ、コピアポア・フィルム 
「悪魔」なのか、それとも「神」なのか? メキシコのとある村。フアンは愛らしいふたりの子供と美しい妻ナタリアとともに何不自由ない恵まれた日々を送っていた。ところがある夜、赤く発光する“それ”が彼の家を訪問したときから、なにげない平和な日常が歪みはじめる。(ユーロスペースHPより)

【感想レビュー】@theater
あぁ、久しぶりに劇場で観た映画が、この作品で幸せです
全身で浸っております。
とにかく大地のエネルギーを感じる映画でした。

冒頭の夕暮れシーンの異様な空気、無垢な子ども、生き物の生々しさ。
音の入り方も素晴らしいです!

赤く発光する“それ”を見てしまう幼い影。
それは、きっと幼き日の私たち自身ではないだろうか。宿題のように何かを置き、そしてまた持って出ていく“それ”。災いの種なのか、幸せの種なのか…。

私は観ながら、幼き日の色々な感覚を思い出していて、それはとっても幸せな心地でした。
例えば、外界の音がもっと篭って聴こえていたのだけど、それを映画で体感出来た事。
“自己”の認識が曖昧な幼い頃は、自分と外界の境界も曖昧で、限りなく一つに感じていたのだった…。

風や土の匂いも、空や水の色も、生き物や自分の声も、曖昧模糊としている。しかし、ところどころ、びっくりするほど生々しいリアルな記憶の断片があったりする…そんな感覚をこの映画は呼び起こす。

大人達のシーンのやり取りは、妙にリアルだ。その対比とその段階のグラデーションがたまらなかった。

そして、断片的な数々のエピソードの連なりは、積み重なるごとに作品の色を明瞭に感じさせる。
ラストに思わずテンションが上がった!
雄弁に語りかけてくるのに、決して押し付けがましくない。毒々しく抉られるわけではないのに、確実に心に残り、そこに在り続けるような映画だった