今度の発表会に向け目下特訓中。中々セリフが覚えられない私は風呂の中まで持ち込んで練習。(仕舞いの地謡は謡本を舞台に持ち込めない)
仕舞い「巻絹」はシテのセリフが多い。
仕舞いを舞う人は、このシテのセリフを謡わなければならない。
仕舞いを舞うのは私ではなく女の人である。
普通は先頭の1行だけ謡へばいいのだが、今度はシテのセルフが多いので
謡を習った事の無い彼女にとっては大変な負担。
謡曲には上、中、下と普通はこの3種類の音をこなさなければいけない。
高音と低音だけなら誰でもこなせるのだが、中音が中に入ると声を出すのが非常に難しい。
西洋音楽ではドレミファソラシの7つの音を出せるのにどうして謡曲ではそんなに苦労しなければいけないのだろう。
中の音を出すにはコツがあるのだ。
先生はいう。「貴女はそれ以上高い声が出ないのかいね。」
声が出ないのではなく中の音が上手く出せないから、高い声が出ないのである。
しかし、少し声を低くするとわりと上手くいく。
その為、私たち地を謡う男性陣は声を彼女に合わせて低く抑えなければならない。
ところがシテのセリフがなくなった中盤のところから先生が声を高くしろという。
これがまた大変。今まで低く謡っていたのに急に高くしろといわれてもそんなに簡単にはいかない。
謡曲は難しいのである。
女の人は高い声と言うイメージが強いが実は普段使っている声はそんなに高くないらしい。
しかしよく考えると遠くの人と話す時はわりと高い声を出しているものである。
なぜか。それはお腹に力を入れて大きな声を出すからである。
謡はお腹に力を入れてうたいなさいと先生によく言われるが、そんな簡単に出来る物ではない。
ではどうして遠くの人と話す時はお腹に力が出せるのだろうか、不思議ですね。
彼女の場合は紅一点というやつで廻りが殿方ばかりなので恥ずかしくて声が出ないのだろう。
遥を習うときは男性も同じだが恥ずかしがらずに開き直ってならわなければ声は絶対に出ない。
おへその下を丹田というそうだが、ここに力を込めて声を出すと大きな声が出るそうだ。
声が小さいと音の周波数帯が狭くなり聞いていても弱々しく聞こえ出せる音の種類も限られてくる。どんなに上手に謡っているつもりでも下手くそに聞こえる。
それにつけお腹に力を入れて声を出すと大きな声が出て周波数帯が広くなり、低い声から高い声まで出て少々下手くそでも上手く聞こえるから不思議だ。
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