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佐々木の三郎盛綱は藤戸の合戦で得た児島に入り「訴訟のある者は申し出よ」と触れた。それを聞きつけた女が申し出た。海に沈められた我が子を返せと。
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女は盛綱が騙した漁師の母親だった。
盛綱は母親に詫びる。
死んでしまったものを今更戻すことは出来ない。
懇ろに弔うからと母親をなだめ家に帰す。
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読経の声に引かれ漁師の亡霊が現れ、盛綱に襲いかかろうとするが…。
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法の力で失せていく。
児島とは備前の国(岡山県)今の瀬戸大橋の付け根にある。
今は陸続きだが、昔は海を隔てた島だったらしい。
そこに浅瀬があると聞きつけた盛綱は漁師を騙して教えてもらうが、外のものにも教えられては困ると漁師を殺してしまい海に沈めてしまう。
平家の軍勢には船があるが源氏方には船がない。そこで仲間の兵が止めるのを聞かず馬で駆けていった。それを見た源氏の兵が盛綱に続けと一斉に馬を蹴った。まさか、源氏が攻めとくると思わなかった平家が慌てて逃げだした。
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カンと言うは謡の一番高い音である。私は始めカンとは裏声だと思っていた。ところがそうではなかった。謡でもそんな声が出せるのだ。
千尋(ちひろ)とは尋の千倍で海が非常に深いということだという。
尋(ひろ)とは両手を一杯広げた長さだと辞書に載っている。馬で渡れる海にそんなところがあるのだろうか。