電気通信の源流 東北大学 18.光通信と西澤の発明
光通信には電気信号を光に変換するレーザダイオード、光を伝達する光ファイバー、受信した光から元の電気信号を取り出すフォトダイオードの三者が必要である。西澤はこれらのすべてを研究の対象にした。このときに「独創」「独自」「闘う」のキーワードが、研究を進める根本的な哲学であった。これらはKS鋼の本多、指向性アンテナの八木、無装荷ケーブルの松前から受け繋いだものである。
昭和32年4月、西澤は半導体メーザー(誘導放出によるマイクロ波増幅)の日本特許を出願し、昭和35年に公告された。通信用のレーザー(誘導放出による光増幅)はメーザーから進歩したものである。レーザーの米特許は紆余曲折の後、コロンビア大学グールドが所有することとなったが、その発明の元になる研究ノートの日付は昭和32年11月である。もし西澤が米国に特許の出願をするか、学会誌に執筆していれば、レーザーの特許料を手中にできたかもしれないのであった。
また、西澤は昭和39年に集束性(GI)光ファイバーの特許を出願した。このとき、西澤は弁理士を使わず自分で書類を書き上げたため、書類不備として却下の扱いを受けた。出願公告が出ると異議申し立てが出たりして、特許庁との係争が続き、期限切れとなってしまった。
また昭和40年、香港の物理学者チャールズ・カオはガラスの不純物濃度を下げることにより光の損失を20㏈/㎞まで低減でき、通信に利用できる旨の論文を発表した。米コーニング社は昭和45年に同じ損失の光ファイバーの製造に成功をした。光ファイバーを発明した功績によりカオは平成21年のノーベル物理学賞を受賞した。その当時、西澤もノーベル賞候補として期待されていたが、惜しくも逸した。特許係争などで海外論文誌へ投稿していなかったことが残念である。
平成14年、米電気電子学会(IEEE)は西澤の名を冠した「ニシザワメダル」を設立し、電子デバイスとその材料科学の分野で顕著な貢献をした個人・団体を顕彰している。
<17.半導体研究所
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