犬がおるので。

老犬から子犬まで。犬の面倒をみる暮らし。

こんちゃんの恋、3。

2015年06月18日 | おせわがかり日誌


それまではあっちこっち散歩のコースを自由に決めていた。

こんちゃんが恋に落ちてからは、別。

さんぽは毎回、黒柴の彼女の家の前を通ることになった。



これについては後日くわしく書くけれど、

こんちゃんが大嫌いな雨の日も、

「黒柴ちゃんに会いに行こうよ」

といって散歩をうながすと歩き出す。

そのくらい、黒柴ちゃんが好きなんだそうだ。



家の前につくと、

黒柴ちゃんのいそうなところを必死で探す。

雨が降っていたり、日差しがあると、奥の小屋にいることが多い。

彼女の姿が見えないと、こんちゃんは、あれ?あれ?と、必死で探す。

こんちゃんの目の届くところにいるときは、うれしくてうれしくて、

もぞもぞしてしまう。



はじめのころ、彼女は興味がなかったようだった。

来てもしらんぷりをしたり、うるさそうにしていた。

こんちゃんをみて、下がってしまうこともあった。

オレコと一緒に行くと、オレコと遊びたがったし、

あー、この恋は実らないなあ、と誰もが思っていた。



けさこんちゃんは
おおあめずぶぬれ
あのこんさがして
おとなりのいえも
おむかいのいえも
みつからないので
かなしくてくうん
おてがみかいたら
といわれてすぐに
むかいにしたため
いぬもおなじだね
ひとどおなじだね
ねこもおなじだね



かわいいにゃおんが
なぐさめてくれたのじゃ
きょうはいちども
あえんかったのう
さびしいのう



おはよう
おはよう
あれ?
あの
おはようなのじゃ



かのじょはおきあがり
こんちゃんのかおみて
あんただけか~
とまたねたよ
こんちゃんがっくし
おれこいなくて
かのじょがっくし (おれことかのじょ幼なじみ)



みつめあうふたり
柵のむこうのねこ会議
参加したかったのか
ほえたりくんくんないたり
ねこの気を引いているところに
こんちゃん通りかかる
「わしか~~わしの出番か~~」
舞い上がった老犬に
「おまえじゃない」
いい放つ黒い彼女
そういうみつめあい



いきもかえりもあのこがいない!
と嘆いています
ぶれているわけではありません
衝撃を表現した芸術写真です




そしたらである。

ある夜それは突然に、なぜかわからないけど、起こった。

こんちゃんが鼻を寄せると、黒柴ちゃんが、しっぽをふって立ち上がり、

近くまできて、お鼻チュ~をしてくれたのである。

その場にはオレコもいたが、オレコと間違った様子はなかった。

オレコを連れていた、お父さんに、吠えた。

ふだん犬にほえられることのない人なのだが。



こんちゃんは、夢見心地だったろう。

家まで小走りに帰り、横顔はえへえへと笑っていた。

そしてその晩は寝言が多かった。



それからより親密になっているかというと、

実はそうでもなくて、彼女の機嫌がいいときと、

そうでないときでは、こんちゃんへの態度は全然違う。



でも、一度目に家の前を通ったときにいなくて、

帰り道、二度目に通った時には、なんだか待っているような、

そんな様子でこちらを見ていて、近づいていくと立ち上がり、

ゆっくりまわって、挨拶をしているようでもある。

こんちゃんもそれを見てうれしそうにしている。




ついこないだまで、

「ごめんね、今度オレコ連れてくるね」

といったことに対してしっぽを振ってくれていたのだが、

今ではこんちゃんが表れて、近づくと、そうなる。



うちにきたときは老犬で、余命いくばくもないかと思って、

そんな子がまさか半年後に恋に落ちるなんて思いもしなかった。

恋をすると免疫が活性化するとかいうけど、益々若くなるつもりなんだろうな。



めでたいめでたい。



あんまり写真を撮ったり、動画をとったりして、

おうちの人に不審がられ、それがためにふたりが会えなくなったり、

こんちゃんの恋が悲しい結末になってはいやなので、

これからは写真はとらないつもり。

だけどふたりの恋のおはなしは時々しようと思う。