翌日。
朝の散歩は短めにしておいた。
寒いし、おくち閉じてね、といったって、閉じてくれるわけがないので、ばい菌が入り込むのがちょっと怖かったからだ。
家にもどって、お薬てんこもりの朝ごはん(キドニアふやかし)をあげたら、ちょっと食べて、残し、リビングへ行ってしまった。
ああ、だめか。たぶん、ふやかしているとはいえ、おかゆのようには食べられないからなあ。
しかし薬が乗っかっているので、食べてもらわないといけない。
すばやくゆうべの牛タンおかゆを足して、ほら、とにおいをかがせてみると、
「それなら食べる~」
といいながら、残さず食べた。明日もこの手でいこう。
その日はこんの巣にカイロをいつもより多めに貼り、オイルヒーターをつけっぱなしにしてきた。
仕事で郵便局へ行かないといけない用事ができたので、ついでにマイクロチップの登録料を払い、申請書を郵送。
はー。やっとだなあ。
おじいさんだからもういらないんじゃない?なんかかわいそうだよ、という意見もあったのだが、
老犬だからこそ行方不明になることが多いのをツイッターでよく見かけるし、災害があったらどうするのじゃ。
うちはオートロックだし、セコムやってるし、その心配はほとんどないけど、もし誰かが入って、
その間に出ていくことだってあるかもしれないし、遠出した先で迷子にならないとは言えない。
オレコはパニックになっても、呼べば帰ってくるけども、こんちゃんはお耳が遠いんだから。
それにこのチャンスを逃したら、麻酔をかけることはない(つもり)のだから。
いろいろ賛否あるのは知っているのだけれど、私にとっては私とこんちゃんをつなぐ、
赤い糸のようなものと考えているので、反対のご意見の方はどうぞご容赦ください。
そういえば昨夜、こんちゃんが手術する強いきっかけになった、おとうさんの取引先の方のわんこの話の続きを聞いた。
7歳で、一度も歯磨きをしたことがなくて、結果、全部歯を抜かなくてはいけないことになった。
おまけに緑内障になってしまって、その治療もしていたのだが、歯の手術をしたあとにわかったのが、
眼は緑内障でなく、歯周病(重症)の影響だったそうだ。
つらい話だが、先ごろ、ついに失明してしまったのだという。
その子もその会社の看板犬なので、いつだったかはカレンダーを頂いたこともあって、顔も知っている。
会社にもよく来ていて、子犬のときから、みなさんがかわいがっていたのを知っている。
歯の手術をしなくてはいけなくなったとき、こんちゃんのお世話になった病院のことも調べたそうだ。
結局は通いきれる病院にしたようだったが、こんちゃんよりよほど若いのに、悲しい結果になってしまって、
話を聞きながら、かわいそうでかわいそうで仕方がなかった。
こんちゃんのように、生まれつき、歯が足りなくても、その歯があまりいい状態じゃなくても、
運よく歯周病にはそれほど侵されずに、あとあとつらい抜歯も免れて、
この子は幸運というか、強運に恵まれているのかもしれない、と、感謝した。
心臓病、気管のつぶれ、白内障、腎臓病などなど、いっぱいあるけれど、
お散歩もできるし、においもかげるし、目はまだ見えているし、歯は残ったし、ごはんは食べられる。
本当は15歳くらいかもしれないけれど、今のところ元気だし、ぼけてもいないし、
このまま健やかに、ゆるやかに年を取り、たくさん笑って、思う存分、楽しんでもらえたらなあ、と思った。
こんちゃんはこれからどのくらいそばにいてくれるだろう。
オレコもどのくらい一緒にいられるのか。そう長くはないはずだ。
でもその短い時間を、健康に生きていけそうな準備ができて、ほっとしている。
こんちゃんのこの強運は、きっと、誰かに見守られているに違いない。
前の飼い主さん、あるいはこんちゃんのお母さん。
こんちゃんをいとしいと思ってくれただれかが、きっと守ってくれてるんだねえ。