その日、直行直帰だったお父さんが先に帰っていて、オレコはお父さんと一緒に散歩に出かけた。
ものの5分で帰ってきてしまったそうなんだけど、来週の退院後のことを考えて、
今週やれることはやってしまおうと、仕事をつめて、つめて、深夜に帰ってきたので、とても助かった。
こんちゃんが突然いなくなり、ひとりで留守番するようになって、オレコは甘えん坊になった。
座ると、ぴっとりとくっつく。
たって仕事をしている間は、私が見えるところにいて、じっと見つめている。
いつもはあんなにこんちゃんに冷たいくせに、こんちゃんをもてはやすと、
こんちゃんなんていなければいいのに、って顔してるくせに、いないとなると、さみしいのかなあ。
にんげん語で事情は説明しているけれど、オレコはまだよくわからないのかもしれない。
ふっと、先々のことを考えて、こんちゃんの面会に連れて行くことを考えた。
今回は突発的な入院だけれど、これから先、こんちゃんが病院のお世話になる機会が増えるかもしれない。
そんなとき、おかあさんとこんちゃんはどこにいるのか、こんちゃんだけいないときはどうなってるのか、
オレコがわかっているほうが、いい気がした。週末の面会に連れて行こうかな。
あとで家族会議しよう。
3日目の朝もどきどきしながら目をさまし、枕元のスマホを確認して、
留守電マークも何もついていないのを確認するとやっと「ほっ」として起きる。
急いで朝のルーチンワークを済ませ、オレコと散歩にでかけ、
戻ってきて足を洗ってごはんを食べさせ、仕事へ向かう。
っと、その前に面会。
この日は病院が午後からメンテナンスのため休診。
道がとっても混んでいて、車が進まない。
面会時間が危うい。
なぜだかいつもの倍時間がかかり、やっと病院近くについた。
右折の車はわたしを含め4台。
赤信号+矢印が出て、前の2台がすっと進んだのでほっとしていたら、
直前のくるまが交差点の右折コーナーで止まったまま動かない。
数秒で信号が変わる。え?この人なにしてんの?
なんだかのろのろした車だから危険だなと思って、私は手前の停止線にいたんだけど、
この直前の人が前2台についてすっといってくれれば、余裕で右折できるタイミングだった。
な・の・に。何してんだ、おい。
テレビだかナビだかを見てる。気付いてない。
事故になってしまう。じりじり。
車が変わってから初めてクラクションを鳴らした。
控えめに1回。
運転席でナビなのかテレビなのかの画面をかがみこんでみていた誰かが、
飛び上がるようなしぐさを見せて、やっとまがったと思ったら、青になった。
そして右折したのんびりカーは右折してすぐのファミレスに車を止めた。
むーん。くぬやろ。
こんちゃんと会えなかったら恨みまーすー恨みまーすーあんたのことー・・・死ぬまーでー
・・・は恨まないけどもさ、もしこんちゃんに何かあって、あのとき会えなかったのは・・・てことになったら、
ほんとーに、ほんとーに、恨むからな、と、心の中で地団駄踏んで、順番が来てやっと右折できた。
混んでると駐車場もとめられないんだけど、今日は大丈夫で、なんとかエントリー。
でも私がルールを間違えていて、本当は30分前に予約しないといけなかったのだった。
午後メンテナンス休診で大変な忙しさだったと思うのだけど、とってもきれいな看護婦さんのご好意で、こんちゃんとは会えたのだった。
こんちゃんを待っている間、大きな黒ラブくんがどたんばたんぎゃうぎゃういいながら、退院していった。飼い主ご夫妻嬉しそう。ごめんなさい、騒々しくて、とにこやかに去っていく。良かったなあ。いいなあ。
ああ、しかしこんな具合だと、こんちゃんはさぞかしテンパってるだろうな、だいじょうぶかなー、と心配になった。
とにかく、ほかの子(騒々しい子は特に)が苦手なので。いやじゃいやじゃって、余計に具合悪くなってないかなあ。
面会室は別の人が使っていたので、廊下での再見。
やっぱり「だせだせ」と暴れて、写真がとれない。でもこれはいい傾向かも。
看護婦さんの話では、味のしない療養食は「いやじゃ」というのだけどささみはよく食べる。
おしっこは朝夕2回してくれて、うんこは出てないです、とのこと。
食べてないから心配はいらないですよ、と付け加えてくれた。
そうかー。
あとは数値だけだね。
頑張ったけど昨日みたいないい写真はとれなくて、明日も来るからね、といって、10分くらいで退散。
はやく家に連れて帰りたい。
元気さえあればなんでもできるな、ほんとアントニオのいう通りだ。
足早に病院をあとにし、明日は30分前どころかお手隙の時間帯に来ますのでね、のでね、と息巻いて会社に向かった。