角灯と砂時計 

その手に持つのは、角灯(ランタン)か、砂時計か。
第9番アルカナ「隠者」の、その俗世を生きる知恵を、私にも。

#242 エイプリルフールなので・・・『架空論文投稿計画』あるいは『週刊金曜日』

2018-04-01 06:12:29 | ぶらり図書館、映画館
『架空論文投稿計画』松崎有理(光文社)



「あらゆる意味ででっちあげられた数章」という副題が付いてます。
4月1日、エイプリルフールに相応しく、松崎有理さん『架空論文投稿計画』(光文社)が今日のお題。


巻頭には、こんな注意書きがありました。

●いまを去ること数年前、学術論文投稿不正にかんするあんな大事件が起こるまえのお話です。
 いわば、近未来ならぬ近過去 SF。

●本稿の内容は徹頭徹尾フィクションです。
 いかにほんとうっぽく書いてあろうとも、まずは疑ってかかることが肝要です。



ふふ、のっけからフザケてますよね。
何でこの本を読む気になったのか、さっぱり思い出せないのだけれども、とにかくツボでした。


こちらは、著者ご本人によるレビュー。


 本書の主人公は研究者心理を研究しています。研究不正の実情を探るため、わざと虚偽の論文を書いて学術雑誌に投稿してみる実験を計画しました。本書ではその顛末を小説として縦組で表現しつつ、主人公が投稿した嘘論文十一本ぜんぶを横組で挿入しています。

 論文部分はいかにもほんものの論文らしく細部までリアルにつくりこみ、かつ笑えるエンタメとなるよう工夫しました。
 小説部分はスリリングなサスペンス。主人公の行く手をはばむ謎の組織・論文警察やその黒幕、論文の代筆を高額で請け負う業者、敵か味方かわからない黒衣の超美人ハーフ研究者など、ふつうに研究しているだけならまず遭遇しないであろう濃ゆいキャラたちがこれでもかと登場します。

 読者のみなさまには楽しみながら研究業界の雰囲気にひたっていただけるよう、業界専門用語にくわしい脚註をつけました。この註も架空論文も筆者が全力を傾注してつくっていますので、言及された書籍をあたったり、論文内にほどこされたしかけを探したりすれば、するめを噛むように長く味わえることでしょう。


*bookbang:するめのような本をめざしました――『架空論文投稿計画』著者新刊エッセイ 松崎有理
https://www.bookbang.jp/review/article/540515



研究職界隈の悲哀を織り込みつつ、まさか、いや、でもありそう、いやいやまさか、という疾走感あふれる展開。遅読のワタクシにしては珍しく本文1日で読了。脚注や論文については斜め読みにも関わらず笑えたんだけれども、その辺りを再読・精読すれば、さらにジンワリ笑えるであろう、まさに「するめのような」小説(+論文)だと思います。


こちら収録論文一覧。こういうのを楽しめる人となら、ワタクシ解り合えると思います。


収録「架空論文」一覧 

 『島弧西部古都市において特異的にみられる奇習“繰り返し「ぶぶ漬けいかがどす」ゲーム”は戦略的行動か? ——解析およびその意義の検証』
 
 『経済学者は猫よりも合理的なのか? ——“反据え膳行動”を通して判明したもっとも合理的な生物とは』
 
 『“借りた本に線を引くひと” とはどんなひとか——書きこみされた図書館蔵書における網羅的研究からこころみた人物プロファイリング』

 『図書館所蔵の推理小説に“ 犯人こいつ He'd done it!” と書きこむひとはどんなひとか——書きこみされた図書館蔵書における網羅的研究からこころみた人物プロファイリング・II』
 
 『おやじギャグの社会行動学的意義・その数理解析』

 『比較生物学から導かれる無毛と長寿との関係——はげは長生き?』

 『「ねえ、太った?」は存在証明機会——代数的構造抽出による容姿からかい行動対応策の検討』

 『経験則「あらゆる機械は修理を依頼した直後になおる」現象の検証——機械故障にかんする大規模調査』

 『プラス思考はほんとうにプラスか——恋愛成功率におけるプラス思考とマイナス思考の効果の比較』

 『「目標は紙に書くと実現する」はほんとうか——大規模長期縦断研究による検証』

 『「あくびはうつる」を応用する——あくび伝染反応時間による初対面好感度の類推』


*光文社:架空論文投稿計画 あらゆる意味ででっちあげられた数章
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334911898


本では、この論文部分だけ薄グレー地にして横組みにしてあります。そのうえで、謝辞とか引用文献一覧とか、徹頭徹尾「論文スタイル」に作り込んでありましてですね、これはもう、著者ご自身目一杯楽しんだんだろうな、というのが伝わってきます。その辺りは上手く説明できないので、是非実物を手にとって確かめていただきたいところです。



さて本の末尾「あとがきにかえて―この本ができるまでの舞台裏を少々」には、この本が、あれよあれよという感じで出版に至った、その経緯が書かれていました。関係者の言葉(大意)だけご紹介します。


月刊電子文芸雑誌『アレ!』からの執筆依頼:「小松左京先生の追悼企画をやりますので短編を書いてください」(大意)

『アレ!』担当編集者:「すごくいいじゃないですか、この路線でいきましょう」(大意)
『アレ!』担当編集者:「架空論文を連載しませんか」(大意)
『アレ!』担当編集者:「ええ、権利関係は問題ありません。『アレ!』が初出であることを明記してくだされば」(大意)

光文社の担当編集者:「よろしいです。出してみましょうか」(大意)
光文社の担当編集者:「メイキングというか、論文ができるまでのストーリーをあいだに入れたらどうでしょう」(大意)


『架空論文投稿計画』・・・2017年10月20日が初版発行ですが、ワタクシ的に、その後増刷があったのかどうか非常に気になります。その理由は、本を読むと分かりますよ。

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

ところで、

馴染みの書店ではニューズウィーク日本版の隣が定位置の『週間金曜日』、こちら3月30日号の目次です。



*週刊金曜日:3月30日号
http://www.kinyobi.co.jp/tokushu/002530.php

石牟礼道子さんの追悼特集は、ま、良いとして、あの(!)証人喚問を受けて、コレです。 

佐川宣寿前国税庁長官がみせた"ぼろ" 本誌取材班
安倍首相の疑惑隠蔽と逃げ切りを絶対に許さない 福島みずほ
公文書偽造と行使は騒乱首謀者並みの犯罪 田岡俊次
籠池氏接見で野党の追及強まる 横田 一+本誌取材班
安倍昭恵さんが証人喚問に応じれば救国の決断 山口敏夫



さらに、ついでと言っちゃ何ですが、

赤池誠章参院議員と池田佳隆衆院議員は恥を知れ 前川喜平前次官の授業に介入した自民党議員 横田 一


いやはや、相変わらずの確信犯ぶりですが・・・

「関係筋の話」によると、どこまで言えば「デタラメだ!」というツッコミが入るのか、実は『週刊金曜日』編集者一同徒党を組んで、壮大な「架空論文投稿計画」実行中なんだそうです。
(↑もちろん、エイプリルフール。いっそソレだったら、逆に希望が持てるかもしれません)


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