角灯と砂時計 

その手に持つのは、角灯(ランタン)か、砂時計か。
第9番アルカナ「隠者」の、その俗世を生きる知恵を、私にも。

#184 『帰ってきたヒトラー』・・・それは「運命」それとも「神意」?

2017-01-22 06:48:33 | ぶらり図書館、映画館
(『帰ってきたヒトラー』DVD)



ドイツで小説が発売されて以降、
日本でも相当話題になっていたので、ご存じの方も多いでしょう。


『帰ってきたヒトラー』予告編(ロングバージョン)



ヒトラーの姿をした男が突如街に現れたら?
「不謹慎なコスプレ男?」顔が似ていれば、「モノマネ芸人?」。

リストラされたテレビマンに発掘され、復帰の足がかりにテレビ出演させられた男は、
長い沈黙の後、とんでもない演説を繰り出し、視聴者のドギモを抜く。

自信に満ちた演説は、かつてのヒトラーを模した完成度の高い芸と認識され、
過激な毒演は、ユーモラスで真理をついていると話題になり、
大衆の心を掴み始める・・・


*映画『帰ってきたヒトラー』公式サイト
http://gaga.ne.jp/hitlerisback/


という何とも思い切った映画です。

ただベストセラー小説を映像化しただけ、
というのではなく、

「現実にヒトラーを解き放した」セミドキュメントシーンが、
真に笑えるし、と同時に笑ってて良いのかと考え込ませるところで、

こういう手法、好きなんです。


監督のデヴィッド・ヴェントさんは、

ヒトラーを常にモンスターとして描くと、
民衆が負うべき責任を軽んじることになる。

そもそもユダヤ人の迫害を可能にしたのはドイツ国民だ。
自ら進んでヒトラーに投票する民衆がいなければ、
彼が政権を握ることはなかったはずだ。

私たちは映画の力を借りて、
ユーモラスな方法で、ヒトラーに身の程を思い知らせてやることができる。

ヒトラーを一人の人間として描くことで、
ナチスを台頭させた原因を映し出すことができるんだ。


と説明してます。

なるほど。

このロードムービー風のパートは、
ホントに面白いと思いますよ。いろんな意味で。


ところで、
初めてのテレビ出演で、ヒトラーは語りかけます。


私の前に人が立っておる
手に板を持っており 私に読めというのだ
小話が書かれている 外国人の揶揄だ

彼らを笑って何になる
ネズミの駆除は 道化ではなく駆除係が行う

ホテルのテレビは この薄さだ
人類による奇跡の発明である

だがその中身は?
低俗な番組ばかりだ

苦しい時代は娯楽が要る
1944年がそうだ 名作映画もできた

今 それほど悪いのか?
ここまで低能な番組を垂れ流すとは!


この国は何だ?

子供の貧困 老人の貧困 失業 過去最低の出生率
無理もない 
誰がこの国で子供を産む?

我々は
奈落へまっしぐら
だが その奈落を我々は知らない

テレビは奈落を映さず
料理番組しかながさない




うーん、
確かにヒトラーなら言いそう。

というか、
ちょっと気の利いた(!)政治家なら、
現実に言ってそうな内容でもありますね。



ただ、

第二次大戦前夜と雰囲気が似ていると言われる今日、
ヒトラーもどきが現れる危険は増したのかもしれないけれど、

情報環境が全く違う現在、
ヒトラーもどきが長続きすることもないだろう、

と、私自身は楽観してます。


映画冒頭、

「運命(Schicksal)」
「神意(Vorsehung)」

といった言葉を繰り出したヒトラーですが、


終盤、

彼を「発掘」したファビアン・サヴァツキというテレビ局員に、
「怪物め」
と詰め寄られた時のセリフです。

私が?

なら怪物を選んだ者を責めるんだな
選んだ者たちは普通の人間だ

優れた人物を選んで
国の運命を託したのさ

どうする?
選挙を禁止するか?




この続きは、是非、ご自分で。

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

映画は映画館で! という素晴らしい方へ。

『帰ってきたヒトラー』
(本当の映画館ではないけれど)
とよはしまちなかスロータウン映画祭で上映されます。

1月28日(土)11:00〜
1月29日(日)15:55〜

*とよはしまちなかスロータウン映画祭上映スケジュール
http://www.slowtown.info/2016/lineup.php



・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

コチラも、
運命とか神意とか、考えてしまう映画でした。

映画『我が闘争』予告編



タブーを破るのは勇気が要るけれど、
それが蛮勇で終わらないだけの時代背景もあるよな、
とも思います。


(産経新聞1/18大阪6版)


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