本土では「春一番」と呼んでいる。
この風が吹き始める頃、二十四節気の
「雨水(うすい)」になる。
雨水とは、沖縄では雪は降らないが本土では、
降る雪が雨へと変わり、氷が解け出すころのこと。
昔からこの季節は農耕の準備を始める目安とされてきた。
海に出る漁師が恐れる風が吹くのもこの時期からで、
南風から突風の北風が吹く。
気候は南風が吹くとグングン上昇して暖かい。
三寒四温を繰り返して「うりずむ」季節になっていくが、
その前に梅雨の前の梅雨と言われる雨が降る。
これがやっかいな雨で、船を走らせていると回りが
まったく見えなくなる。
一瞬にして景色が消えるのは、あまり気持ちのいいもの
ではない。昔と違って航海計器が発達して、常に
自船位置と進行中の方向を教えてくれる。
レーダーを備えていないので、進行方向に障害物が
あってもギリギリまでわからない。
知らず知らず前を睨むようにして走らせることになる。
きっと怖い顔をしているだろう。
安全のため、船を停めて、雨が通り過ぎるのを待つのも
いいが、一日のスケジュールに追われているので、
前を注意しながら船を走らせる。
もう一つは、航海計器のついていない船や、雨に慣れて
いない船にアテにされる。
おそらく、「この船の後ろについていけばいいだろう。」
と思われていることがある。
「このあいだは、ありがとうございました。」とか
「今日は、ありがとうございました。」と帰ってから
電話があったりするので、
間違えられないというプレッシャーもある。
無事に港の入り口が見えたときは、ホッとする。
前が見えない雨に見舞われても、平気で船を走らせている
ように思われているけれど、港の入り口が見えたときは
やはりホッとするものだ。
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