漁港の隅っこに、もう海に浮かぶことのない、役目を終えた船が放棄されている。
その船の中に昔の方位版(羅針盤)があった。
数字も書かれてあるが、数字と一緒に干支が書かれてある。
昔、海を教えてくれたオジィも同じ羅針盤を使っていた。
干支は方位だけでなく月、日、時刻にも使われていた。
時代劇によく出てくる午の刻(昼12時) 草木も眠る丑三つ時(深夜3時頃)など。
沖縄は旧暦で行事ごとが行われるのでカレンダーには旧暦と
干支で日付が書かれてある。
方位の干支は360度を12分割して示されている。
真北を子として右まわりに干支が続く。
映画などで船の方向を決めるときに「面舵いっぱい」「取舵いっぱい」という。
面舵は右で干支では卯の方向つまり東で「卯の舵」が訛って面舵となった。
取舵は干支の酉(270度)で西の方角を示す。
沖縄では家相を見てもらうときに今でもこの昔の方位版が使われる。
家の敷地には12方位それぞれ守っている神様がいると考えられているからだ。
昔の方位版を見たら、昔オジィに釣りにつれて行って
もらったときのことを思い出す。
「オモリが底についたら3尋上げて2尺ほど上げ下げしろ!」
オジィの声が今でも耳に残っている。