目の中のリンゴ

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「風にそよぐ墓標」 門田隆将

2010年10月21日 | 読書
先日WOWOWでドラマ化されていた
光市母子殺人事件がテーマの
「なぜ君は絶望と闘えたのか」の著者
門田さんの、日航機墜落事故の本。

「風にそよぐ墓標 父と息子の日航機墜落事故」
(門田隆将 集英社)

今年の8月12日で25年目を迎えた、
日航機墜落事故。
前にも書いたけれど、私はこの事故を
他人事と思えないでいる。
まさにこの日のこの時間頃、
新幹線で東京から大阪に帰ってきたから。
一歩間違えばこの飛行機に
乗っていたかもしれないから。

「クライマーズ・ハイ」が映画化されたりもしたけれど、
今年のその日のニュースでも、遺族は高齢化し、
事故が忘れ去られていくことが危惧される、
ということが言われていた。
同時に、その当時幼い子供であった遺族が成人し、
亡くなった親と同じ年齢になっていたりする。

この本では、”父と息子の日航機墜落事故”と
サブタイトルがつけられているように、
遺族の中でも、今まで多くを語ることがなかった
男性たち=息子たちにスポットをあてている。

事故の知らせに我を失った母親に代わって
父親の遺体確認に出向いた高校生。
母親を事故で失い、その後さまざまな
苦しみを抱えた父親を失った少年。
マスコミ関係者であったために、父親を探して
いち早く現場に登った男性の絶望。
遺書を遺した父親の息子たち。
最後の機内の様子を写した写真を残した父親の息子。
遺族でありながら、犠牲者の遺体確認に
尽力した歯科医兄弟・・・

突然の事故で大事な人を失ってしまったという
尋常じゃないショックの中、
五体満足なご遺体を見つけ出すことが
困難な遺体確認の残酷さ。
そんな、想像を絶する体験を
どうやって乗り越えたのか・・・

語りつくせない、また、当人でなければ
わからないことなのかもしれないけれど、
この本に登場した人たちは
亡くなった方々の心を引き継ぐべく、
新しい人生を歩み出し、幸せを掴んでいる。

自分が、亡くなった父親と同じ年齢になり、
同じように子供を持った時、
父親の大きさを知り、どれほど無念だったか
思い知っただろう。

ここにこうして、胸を張って語れる人たちのように
絶望から立ち上がれた人ばかりではないだろう。
それほどに、悲惨な事故だったと思う。
でも、この本を読んだ後、
家族があるって素晴らしい、と思えた。

機内のパニックの中、遺書と自分の身元を
証明するものをなんとか遺そうとした
お父さんの冷静さと愛情の深さに感動し、
このつらい遺体確認の経験を
後の大事故(阪神淡路大震災や福知山線脱線事故)に
生かした歯科医の方の仕事ぶりに感動した。

そして、僅かな体の一部からでも
大事な人を見つけることのできる家族の執念。
当時にも思ったけど、私のことを家族は
ちゃんと見つけてくれるだろうか???
体のすみずみの小さな特徴を覚えていてくれるだろうか??
朝出かけた時の服装を覚えていてくれるだろうか???
・・・そして私はその逆のことをできるだろうか???

毎日の一瞬一瞬が決して後に戻れない、
大事な時なのだとしみじみと思った。

改めて、520名の方々のご冥福を心からお祈りします。
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