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「友情」フレッド・ウルマン
懐かしい青春の日々。
1932年、十六歳。
少年の友情にナチスが暗い影を落とす。
美しく高潔な友情に憧れるハンス。
優雅で自信に満ちた、伯爵家の子息コンラディン。
ふたりはお互いを認め合い、影響し合い友情を深めていく。
詩を読み、旅行をし、あらゆる事を語り合う。
時に激しい討論に至るも、真剣そのもので議論する。
相手に対する誠実さ故に、まっすぐにぶつかり合う事が出来る。
朴訥とさえ言えるシンプルに綴られる文章。
過去に対する優しさに満ちていると同時に、
底知れぬ哀しさ、癒されぬ傷が静かに横たわっている。
どのエピソードも重要であり、人物像が鮮やか。
絶望と憤りが有ってさえ、奪う事の出来ない友情の輝き。
色褪せない、忘れる事の出来ない気持ち。
純粋故に、ナチスに未来を見出すコンラディン。
ハンスのお父さんの考えや行動にも、胸を打たれる。
たった数ヶ月の交流が、人生に大きな意味を与える不思議。
一行の重さを実感する、見事な結末。
じんわりと、いつまでも心に残る名作。