ジャンヌ・ダルク 不可思議な少女
映画『ロビン・フッド』を見ていて不思議に思った。イングランドのリチャード獅子心王が、十字軍遠征からの帰り道にフランスの城を次々に攻め落とす。最後の城攻めで流れ矢に当たり、戦死というより事故死するんだ。同じキリスト教徒だろうに、十字軍の帰りに何故フランスを攻める?でもそれはリチャード(リシャール)がフランス人でフランスに領土を持ち、ついでにイングランドを保有していたからだったんだ。
ロビン・フッドと対決するリチャードの弟、ジョン(ジャン)王もイングランドに常住していたどころか、数えるほどしか行っていない。おいおい、シェイクスピアも映画もウソつきじゃん。最も戯曲(小説)は歴史書じゃあない。事実を書いてもつまらないし、大衆に受けない上に反逆罪になりかねない。
フランスの救世主、オルレアンの開放を成し遂げた聖女ジャンヌ・ダルクが出現する頃が、やっとナショナリズムが台頭してきてフランス国、フランス人という意識が芽生え始めた時期だった。一方のイングランドではもう少し早い。フランス王、シャルル五世の巧みな政策によって、一時イングランド王(ランカスター公)はフランスの領土の大半を失い、イングランドの経営に専念する。そしてその間にケルト人の国々、ウェールズやスコットランドを屈服させた。そしてヘンリー(アンリ)五世になると、血はフランス人でもフランス語があまりしゃべれなくなる。こうなるとイギリス国王だ。
ジャンヌの言う「フランスを救え!」は時代を少々先取りし過ぎている。そもそもジャンヌの生まれたロレーヌ地方、アルザス・ロレーヌは近代史上でもフランス領になったり、ドイツ領になったりした所だ。ヒットラーもヨーロッパ侵攻に際し真っ先に狙った。そして当時はロレーヌ公家が支配している全くの外国だった。ジャンヌの村は何度もイングラン王軍の襲撃を受けていたから、アンチ・イングランドの感情を持っても不思議ではないが、イングランド軍よりもむしろフランス王軍の脅威の方が大きかった。
崖っぷちまで追い込まれていたオルレアンの街とシャルル六世は、ジャンヌの登場によって救われた。しかしそれ以降のジャンヌ・ダルクは振るわない。二年後に戦場で捕えられ、宗教裁判にかけられ異端犯罪人としてルーアンで火刑が執行された。その後ジャンヌ・ダルクは瞬く間に忘れ去られ、生まれ故郷のドムレミ村と解放されたオルレアンだけで語り継がれた。これを発掘して大々的に広報したのはナポレオン・ボナパルトだ。フランス万歳!自らも実はイタリア人(コルシカ生れ)のナポレオンは、この英雄伝説にあやかった。この辺りナポちゃんも憎いね。戦争上手だけじゃあ無かったんだ。
ジャンヌがいきなりフランス軍の指揮を任されるのはかなり不自然だが、この半分いっちゃった娘の出現をシャルル側が演出した形跡がある。もしそうだとすると、黒幕はやり手の女丈夫、シャルルの義母のヨランド・ダラゴンらしい。ジャンヌはシャルルと会う前に彼女と会っている。
またジャンヌはどうも火刑を免れたふしがある。替え玉としてどこぞの女の死体を燃やし、ジャンヌは地方の修道院でバアさんになるまで穏やかに暮らした、というかなり確証のある証拠が出てきた。しかし第一次世界大戦時にその記録は抹消された。フランスの英雄は火あぶりになっていてもらわないと困る。血で血を購え、憎悪を掻き立て、敵を倒してくれなけりゃあ指導者は困るのだ。
これからもフランスに危機が訪れる度に、フランスを救え!救世主ジャンヌは不死鳥の如く蘇るに違いない。
映画『ロビン・フッド』を見ていて不思議に思った。イングランドのリチャード獅子心王が、十字軍遠征からの帰り道にフランスの城を次々に攻め落とす。最後の城攻めで流れ矢に当たり、戦死というより事故死するんだ。同じキリスト教徒だろうに、十字軍の帰りに何故フランスを攻める?でもそれはリチャード(リシャール)がフランス人でフランスに領土を持ち、ついでにイングランドを保有していたからだったんだ。
ロビン・フッドと対決するリチャードの弟、ジョン(ジャン)王もイングランドに常住していたどころか、数えるほどしか行っていない。おいおい、シェイクスピアも映画もウソつきじゃん。最も戯曲(小説)は歴史書じゃあない。事実を書いてもつまらないし、大衆に受けない上に反逆罪になりかねない。
フランスの救世主、オルレアンの開放を成し遂げた聖女ジャンヌ・ダルクが出現する頃が、やっとナショナリズムが台頭してきてフランス国、フランス人という意識が芽生え始めた時期だった。一方のイングランドではもう少し早い。フランス王、シャルル五世の巧みな政策によって、一時イングランド王(ランカスター公)はフランスの領土の大半を失い、イングランドの経営に専念する。そしてその間にケルト人の国々、ウェールズやスコットランドを屈服させた。そしてヘンリー(アンリ)五世になると、血はフランス人でもフランス語があまりしゃべれなくなる。こうなるとイギリス国王だ。
ジャンヌの言う「フランスを救え!」は時代を少々先取りし過ぎている。そもそもジャンヌの生まれたロレーヌ地方、アルザス・ロレーヌは近代史上でもフランス領になったり、ドイツ領になったりした所だ。ヒットラーもヨーロッパ侵攻に際し真っ先に狙った。そして当時はロレーヌ公家が支配している全くの外国だった。ジャンヌの村は何度もイングラン王軍の襲撃を受けていたから、アンチ・イングランドの感情を持っても不思議ではないが、イングランド軍よりもむしろフランス王軍の脅威の方が大きかった。
崖っぷちまで追い込まれていたオルレアンの街とシャルル六世は、ジャンヌの登場によって救われた。しかしそれ以降のジャンヌ・ダルクは振るわない。二年後に戦場で捕えられ、宗教裁判にかけられ異端犯罪人としてルーアンで火刑が執行された。その後ジャンヌ・ダルクは瞬く間に忘れ去られ、生まれ故郷のドムレミ村と解放されたオルレアンだけで語り継がれた。これを発掘して大々的に広報したのはナポレオン・ボナパルトだ。フランス万歳!自らも実はイタリア人(コルシカ生れ)のナポレオンは、この英雄伝説にあやかった。この辺りナポちゃんも憎いね。戦争上手だけじゃあ無かったんだ。
ジャンヌがいきなりフランス軍の指揮を任されるのはかなり不自然だが、この半分いっちゃった娘の出現をシャルル側が演出した形跡がある。もしそうだとすると、黒幕はやり手の女丈夫、シャルルの義母のヨランド・ダラゴンらしい。ジャンヌはシャルルと会う前に彼女と会っている。
またジャンヌはどうも火刑を免れたふしがある。替え玉としてどこぞの女の死体を燃やし、ジャンヌは地方の修道院でバアさんになるまで穏やかに暮らした、というかなり確証のある証拠が出てきた。しかし第一次世界大戦時にその記録は抹消された。フランスの英雄は火あぶりになっていてもらわないと困る。血で血を購え、憎悪を掻き立て、敵を倒してくれなけりゃあ指導者は困るのだ。
これからもフランスに危機が訪れる度に、フランスを救え!救世主ジャンヌは不死鳥の如く蘇るに違いない。