旅とエッセイ 胡蝶の夢

横浜在住。世界、50ヵ国以上は行った。最近は、日本の南の島々に興味がある。

暇つぶしの心理テスト

2016年05月18日 21時03分33秒 | エッセイ
暇つぶしの心理テスト

 昔やったよな、こんな遊び。夜になってTVはない、ビデオもPCもトランプもない、スマホは圏外で通じない。例えばキャンプ2日目の夜、国境のボランティア宿舎、インド・ムンバイの救世軍の安宿。地方営業での連泊。経験は無いが刑務所の雑居房。若者が4-5人いて暇を持て余している。そこに女の子がいたらまずは怪談だな。
 ・・・昔ローカル線の、山の中の無人駅で夜、電車を待っていた。季節は晩秋、寒々しい蛍光灯に照らされたホームには人っ子一人いやしない。駅の周囲は木々が茂り、風に吹かれて木の葉が揺れる。弱弱しく虫の音が聞こえる。と、ホームの端にある簡易トイレから人の声らしきものが聞こえてきた。怖る怖る近づくと、しわがれた老婆の声で、「カミをくれ」「カミをくれー」。ゾっとして逃げようとすると、ドアの下の隙間からしわだらけの手がヌっとつき出てきた。どんな姿勢をしているのか、肘近くまで出てきた。背筋に水を浴びたように感じたが、足がすくんで動けない。震える手でやっとポケットからティッシュを取り出し、上から手のひらに落とすようにして渡した。手はティッシュを素早くつかむが直ぐに放し、怒った口調で言う。「その紙じゃあない。・・・・・この髪じゃー!」ここですかさず女の子の髪の毛をギュッと掴む。「ギャー」泣きだした子がいた。
 あれれ、何の話し?あっ心理テストね。まっ適当にこんな奴をやる訳よ。
・・・貴方は炎天下の砂漠にいる。太陽はギラギラと身を焼くが、もう半日以上水を飲んでいない。体が乾ききっていて唾も出なくて舌も動かない。延々と続く砂丘を歩き続けると、砂の中にキラっと光るものを見つける。拾ってみると錆びた大きなカギじゃないか。ここで第一問。貴方はこのカギをどうしますか?投げ捨てる?持っていく?それとも?
貴方は更に歩き続ける。次に目に入ったのは、ガラスのコップだ。半分砂に埋まっている。第二問、ガラスのコップをどうします?
砂漠を歩き続ける貴方はもう限界。頭はもうろうとして足がもつれる。とその時、前方にオアシスが見えた。蜃気楼ではない。小さくともこんこんと湧き出る泉があり、木々が茂り小鳥が鳴いている。やった、水だ、オアシスだ。透き通る冷たい水だ。第三問、さあ貴方どうする?
読者の皆さんも回答を用意してね。まあこのテスト、何度もやったから随分と色々な答えが出てきたな。第一問のカギは、そう突飛な答えは出て来ない。拾うか捨てるか、せいぜい砂を掘って埋める奴がいるくらい。第二問も基本的には拾う人、見捨てる人、いったんは拾うがいらないからと捨てる人。でも中にはガラスを割って破片を手に取り、腹かっさばいて死ぬ、と言った男がいたのには魂消た。世の中は広い。恒久の宇宙は今日も平和だ。
オアシスは色々な回答が出るところだ。ここは詳しく聞いておこう、特に女の子には。頭を泉に突っ込んで飲む。手ですくって飲む。服を着たまま飛び込む。裸になって飛び込む。泳ぎ回る。急に飲んでは体に負担がかかるので、ゆっくりと時間をかけて飲む。持ってきたガラスのコップを洗い、それで水をすくって飲む。さあ回答が出揃った。ここからいかにもったいぶった注釈をつけるかが、出題者の腕の見せ所。
第一問のカギは、人生に対する野心、情熱の象徴だ。物欲・食欲・出世欲、欲望の大きさも示す。
第二問のガラスのコップは家庭生活の象徴。砂に埋めちゃう人はどうなの。ぶち割って腹を切る貴方、結婚はしないように。
第三問のオアシスはずばりセックス。服を着たまま目もくれずに飛び込んじゃった貴方・・・どうしましょう、激しすぎない。

とまあ、やらなかった、こんな遊び。パターンはいくつかあるよね。

ナズナ原遺跡、洗濯物事件の顛末 

2016年05月18日 21時02分36秒 | エッセイ
ナズナ原遺跡、洗濯物事件の顛末   

 学生の時、三夏横浜郊外の弥生~古墳時代の住居跡の発掘をした。ゼネコンが土地開発を始めたら遺跡が出てきてしまい、開発を4年遅らせて遺跡を発掘調査し、その後は土地を更地にして工場だか団地だかを建設、片隅に小さな記念館(発掘資料館)を残した。よくあるパターンだ。慌てて遺跡をぶっ壊して隠ぺいするのに較べれば良心的だ。
 イスタンブールの街などは、工事で掘り起こすとどこもかしこも何層にも積み重なった遺跡が出てくるため、地下鉄などいつ工事に着工出来るか分からないという。バンコクのような低湿地でも、都市人口が増えて郊外に宅地や工業団地の建設ラッシュが起きた際、農地などを掘り起こしたら、随分と遺物が出てきたそうだ。それで大儲けした農民もいたはずだ。
 お台場でもゆりかもめに乗ると、新橋を出て直ぐの海側で発掘作業をやっていた時期があった。赤いレンガが並んでいるのが上から見えたから、幕末~明治にかけても建築物だったんだろう。発掘調査は一年程やっていたが、今では高層建築のビルが建っている。
 話しをナズナ原に戻すよ。元々大学の教授が授業の時作業員を募集し、自分達が応募したのだが3年続けて通ったのは自分だけだった。肉体労働(土方)で、1日4千円は当時としても割のよいバイトではなかった。特に最初の年は、粘土質の関東ローム層の土あげだったから、真夏にこの作業はきつかった。土を乗っけて運ぶ手押しの一輪車のことを、ネコ(根子)と呼ぶのを始めて知った。
 学生と一緒に働いている土方のおっちゃん達は、一万円以上貰っていたらしい。赤土の関東ローム層は、元からある黒土の上に1.5mほど積もっている。これが火山灰だというから驚きだ。富士山とかの噴火だったのか。火山灰の降り積もる日々を過ごした人々は大変な思いをしたことだろう。とはいえ、噴火がない今でも少しずつ堆積しているようだ。
 このねちゃねちゃした赤土を取り除くと、肥沃そうな黒土が出てくる。古代人が住んでいた時代にやっときた。簡単に言えば、その黒土の中の赤い部分を掘っていく訳だ。赤い部分は建物の柱の跡か、もしくは風倒木(ふうとうぼく、台風などで倒れた木。)の根っこだったりする。赤と黒で分かりやすい。柱が規則的に並んでいたらまずは住居だ。だが時代が異なる住居が重なっていたりする。
 さてこの土方の夏はきつかったが楽しかった。夏の終わりにはすっかり土方焼け(腕は半そでの肩まで、手は軍手をしているので白いまま。)で筋力がついた。学生たちもこの年が一番多かった。自分は家が比較的近いから、十分通えたし翌年からはほぼそうしていたのだが、この最初の年は一夏ほとんど飯場に泊った。色々な大学から学生が集まっていて、周りはたんぼか原っぱなので夜は毎晩飲み会で大騒ぎ、女の子もいて楽しかったんだ。
 飯は秋田から来たおばちゃんが一食100円で作ってくれて美味しかった。ここだけの話、家で喰うのと同じか飯場の方がうまかった。よく笑うおばちゃんとは直ぐに仲良くなったが、彼女の方言が強くて何を言っているのか半分位分からなかった。おばちゃん一人で昼は4-50人の飯を作っていたのだからたいしたものだ。女子学生でそちらの手伝いにまわった子もいたのかな、忘れた。話が通じないと、おばちゃんは笑い転げてしゃべりまくる。またそのおしゃべりが分からなくて、おばちゃん笑う。きりがない。
 学生は一週間、二週間いて入れ替わって次の連中が来るが、自分を含めてずっといる古株連中もいる。泊りの学生の人数が多かったから、夏でもあり数台ある洗濯機は廻りっぱなしで、干し紐も洗濯ものでいつも一杯。朝は洗面所とトイレが混み合う。洗面所にも洗濯ものが干してある。2階の窓から斜め下に向かって洗面所が半分見える。洗面所にいる人は斜め上を見上げたりはしないから、見られているとは気付かない。
 ある朝寝ぼけまなこで窓から表を見たら、おっ洗面所に気になる女の子がいるじゃあないか。その子はTシャツ、ジーンズで顔を洗っていた。胸のふくらみに自然と目がいく。思いがけず女の子の無防備な姿を目にして胸が高鳴る。彼女はタオルを持って来なかったのか、どこかに置き忘れたのか、濡れた顔濡れた両手で半分目をつぶってキョロキョロし始めた。うっ可愛い。彼女目が悪そうだ。コンタクトかな。
 困った彼女はエイ、吊り下がっている洗濯もので顔を拭いた。アララ丁寧に顔をゴシゴシこすっているじゃあないか。あっそれは!ヒエー、そ、それはタオルじゃあありまっせん。それは、それは田中のフンドシだー。
 タオル、日本手ぬぐいなら上にひもは付いていないでしょ。あの当時の男子学生は皆フンドシを締めていた。な訳はない。「へー、田中君はフンドシなんだ。」「うん、慣れるとこれがいいんだよ。」一人だけだよ、フンドシは。あー、とんでもない所を見てしまった。心臓がドキドキしたが、幸い自分一人しか見ていない。これを知ったら彼女はショックで来なくなっちゃうかも。田中が知ったら、あいつ絶対喜ぶ。
 俺は今のは見なかったことにして自分の胸の奥に仕舞った。はずなんだけど、どこかで誰かに話したかも。まあ40年も前の話だから、もうすっかり時効だね。