1月7日にサントリー美術館へ行ってきました。
この展覧会は平等院鳳凰堂の改修事業がひと段落し、落慶式を前にして東京にて鳳凰堂内の壁上方に掲げられている雲中供養菩薩像14躯と阿弥陀如来像の光背に掲げられて如来を礼賛する飛天像6躯を展示してます。
飛天とは浄土の世界で空を飛び、花びらを散らし、歌ったり、楽器を演奏したり、舞ながら如来を讃える天人。
キリスト教の天使と通じる存在ではないかと思ってます。以前天使に興味があると書いたことがあります。だからもちろん飛天にもとても惹かれるものを感じ、歳の初めにこの展覧会を見るのを楽しみにしてました。
まずは遠く西アジアから始まります。
仏伝浮彫「マーラの誘惑、降魔成道、初転法輪」ガンダーラ2~3世紀
足を跳ね上げ空を飛んでいる飛天が花を摘み、花びらを飛ばす散華をしようとしてます。
仏像は本来姿を形に表さないとされていたのを、初めて形にして表現したガンダーラ美術。大好きなんです。ギリシャ・ローマ神話の神様の彫刻からの影響を受けた彫りの深い美しいガンダーラ仏像は少しずつ形を変えながらも徐々に東に伝わり、ついには日本の仏像の姿となる。ユーラシア大陸を渡りさらに海を越えた壮大な文化の旅路を思いはせます。
舎利容器(複製)クチャ7~8世紀
ちょっと見づらいけど食パンみたいな形の舎利容器の側面に小さな金色の飛天の飾りがついてます。
上方からゆっくり降下してるのか、浮遊しているのか、上半身より足の方が高く衣をひらひら風に揺らしてます。中に奉納した仏舎利を礼賛しながら宙を舞っている意匠が素敵です。
中国、朝鮮の鏡に彫られたり小さな鋳造の飛天像は可愛らしく、お経の挿絵にも小さく軽やかに飛天が描かれていました
そして日本
仏三尊塼仏(川原寺裏山遺跡出土)7世紀
塼仏(せんぶつ)は型に粘土を押し込み焼いたもの。それをいくつも作って壁に飾ったそうです。
ここにも左右に帯状の天衣(てんね)がひらひらして軽やかに舞い降りる飛天~~
飛天像(法隆寺金堂内陣より模写)7~8世紀
二人の飛天が仲良く並んで飛んでいる。赤と緑の天衣が風の流れと浮遊感を感じさせます。
薬師寺東塔水煙(模造)天平2年730年
塔の屋根の上のてっぺんに飾る水煙に6人の飛天が。空高く飾られているのはとてもピッタリ♪
次も浄土においてやはり空を舞う住人
上半身が人間でお腹から下が鳥の姿の迦陵頻伽(かりょうびんが)
牛皮華鬘 11世紀
金銅迦陵頻伽文華鬘(岩手 中尊寺金色堂)12世紀
華鬘(けまん)とはお堂の中を荘厳する仏具。元は花輪でお堂を飾っていたのが始まり。
牛皮華鬘は色も鮮やかに残っていてお堂を華やかに荘厳していた様子がうかがえます。迦陵頻伽のお姿が艶やか。
金銅の華鬘は昔は金色で、あのまばゆい中尊寺金色堂の堂内で一緒に輝いていた様子を想像しました。こちらの迦陵頻伽は小鳥みたいに見えて可愛らしい。
そして手仕事の精緻さが素晴らしい。
そして頭が二つで体が一つの共命鳥(ぐみょうちょう)の紹介がありました。この展覧会で展示されていた共命鳥は日本で作られたものではなく、同じように空を舞う浄土の住人の参考として展示されたのかと思います。小さな立体で二つの頭が人間でした。そして、説明書きには特に書いてなかったけれど、一つは男性でもう一つは女性の頭に見えました。とても印象深く心に残ったのですが公式ホームページに画像が載っていなく、東京国立博物館所蔵と書いてあったので探したらありました。
共命鳥 ヨートカン 5世紀
ヨートカンは中国・新疆ウイグル自治区ヨートカン村にある遺跡です。
迦陵頻伽も共命鳥もどちらも美しい声で仏の教えを歌するのだそうです。
飛天は雲を伴って表現されることが多いのですが、雲に乗って浮遊する姿も多く表現されます。飛天とは違う存在ですが雲に乗って演奏したり、歌ったり、舞う菩薩も現れます。
阿弥陀二十五菩薩来迎図 鎌倉時代 13~14世紀
往生した人を自ら雲に乗って浄土からお出迎えする阿弥陀如来と取り囲み歌舞音曲で祝福する菩薩。空には飛天も嬉しそうに舞っています。
そして平等院鳳凰堂の世界へ
修理する前のお堂の中ですが、参考に載せておきます。
見えにくいですが阿弥陀如来の金色の光背に如来を取り囲むように飛天が12躯います。そのうちの6躯をすぐそばで見ることが出来ました。
阿弥陀如来坐像光背飛天 京都平等院 天喜元年1053年
いつもは離れたところからしか見れない飛天を、じっくり鑑賞できるのはお堂を閉め改修した今回が最初でおそらく最後であろうと言われてます。
その飛天の姿は優美で優しく品のいい顔立ちで、小ぶりな雲に乗りながら手ぶりや歌で如来を讃えていました。
お堂で光背に掲げられているときは、如来様はじめ様々の見事な造形に気を取られてじっくり鑑賞はしてなかったです。
あらためて、1躯1躯に向き合ってみると、それぞれが美しく工房の仏師たちが心を込めて、そして祈りを込めて作り上げたのだと実感します。
展示室には上方に飛天の摸刻が掲げられ、下から見上げた様子を見ることができました。
そしてお堂の長押と天井の間に掲げられ、極楽浄土の空間をそのまま再現してくれている雲中供養菩薩は52躯のうち14躯を間近でみることができました。
雲中供養菩薩像 京都平等院 天喜元年1053年
菩薩を載せている雲の前方は小さな渦を巻いていて、後方は風に吹かれているように細長くなびいています。雲によってはスピードをあげて飛んでるようにも見えました。それに乗って様々な楽器を奏でたり、歌を歌ってたり、音楽に合わせて踊っていたり、念仏をとなえていました。飛天も雲中供養菩薩も仏師定朝一門の工房で作ったので、少しずつつくりや表情が違うと説明に書いてありました。でもどれも優しい丸顔の品の良い顔立ちなのは共通してます。
そして、当時の楽器はどんなものかどんな風に演奏してたのかが見れておもしろいです。琴を弾いている菩薩は口を開けて歌っているように見えました。他の菩薩像は大概口はつぐんでいたのですが。当時、琴で弾き語りをしていたのかも♪。
元は彩色されていたそうで、再現した菩薩様も展示されていました。優しい色合いです。着物の模様がとても細かく美しかったです。
そして、とても楽しみにしていた結縁をしました。
雲中供養菩薩像の摸刻像を触れることが出来ました。この像は改修後のお堂の中で掲げられます。
結縁をするとき、みんなまず手を合わせて拝んでからそっと触れて、そしてまた手を合わせてました。勿論わたしもそうしました。11月からこの展覧会が始まったのですが、その間にどんなにたくさんの来場者が願いを込めて結縁をしたのだろう。もともとなのか、それともみんなが触れた為なのか、体は飴色になっていました。
平安時代に作られた像は千年近く、人々の思いを受け止め続けていたのでしょうね。
鳳凰堂の中はとても豪華なつくりで、仏の天蓋は花の形をしているうえにさらに方形の天蓋を二重につけていて、螺鈿細工がほどこされてるそうで、その再現した一部が展示されてます。
柱絵には瑠璃色地と緑色地に鮮やかに宝相華や鳳凰や花に乗った天人が描かれていたのも再現して展示してました。
扉絵には往生者を来迎する絵が描いてあるそうですが、模写した絵をみると、後の時代の人が書いたのかいろいろな字が書かれて背景の宇治から見える山並みがわかるのがやっとでした。
それから如来坐像と光背の後ろの壁(仏後壁)にも左上端に絵がありました。きっと最初は壁全面に絵があったと思います。写真で展示されてましたが、それは美しい浄土の世界の絵でした。
その空にはごく小さいのですがとても可愛らしい飛天が手に花を抱え、散華しながら飛んでました。
あたりには散らした蓮の花びらが舞っています。その模写が展示されてました。丸いほっぺたが可愛らしい♪
想像すると、浄土の世界には美しい宮殿に蓮池があり、空には飛天が歌ったり踊ったり演奏したり、花びらを散華していて、花びらは絶えず宙に舞っている。そして迦陵頻伽と共命鳥が美しい声で歌っている。
蓮の上に阿弥陀如来。供養菩薩も雲に乗って歌舞音曲しているという夢のような世界ですね。
追記
何年か前に平等院にお参りに行った時、鳳翔館のミュージアムショップで購入した品を載せます
雲中供養菩薩52体がすべて入っているトランプ。ジョーカーは鳳凰像でした。
パッケージとトランプの裏側の模様はお堂の柱の宝相華の文様をあしらったものです
その柱に描かれた宝相華の模様を持ったトンボ玉のネックレス
そして瑠璃色のガラス製の線香立て
ネックレスはいろいろな思い出を持ってます。
線香立ては時々玄関で使っています♪
今回の展覧会で購入したもの
雲中供養菩薩のシルエットが描かれたエコバッグと柱の宝相華と鳳凰と天人の模様の絵葉書です
絵葉書の絵柄はこうです
関連記事をリンクします→☆
はい!年明け早々素敵な展覧会に行けました♪
天上世界の住人もいろいろ知ることができ、またじっくりと鑑賞でき、結縁もすることができ今年は春から縁起がいいです☆
ところで雲中供養菩薩ですが、現在お堂に掲げられているのは摸刻なんです。本物は平等院の境内の中、鳳凰堂のすぐそばにある「鳳翔館」にて展示されていて、間近で見れますよ。飛天はちょっとわからないのですが。
実は平等院の宇治川をはさんで対岸に私の祖父母の家があり、小さいころから馴染んだお寺でした。川べりの土手からみる鳳凰堂もまた美しいです。
もう祖父母も家を守ってた伯父も阿弥陀様のもとに行きました。法事の時に子供たちを連れて平等院にも寄り、グッズを買いました。
遠い存在になった平等院ですが、こうやって飛天と供養菩薩が東京に来てくれて、結縁をできる機会があったのはとても嬉しい出来事でした\(^o^)/
聴こえてくる音楽はどんなだったのだろう。私はつい西洋の音楽にして想像してしまいます。
迦陵頻伽と共命鳥の歌声も澄んで美しいものでしょう♪これもなぜか西洋音楽で想像してしまうのです。日本の音楽ももう少し知っておきたいです♪
今年はきっと良いことがあるでしょう!
飛天の舞と蓮の花びらの散華、風鐸(ふうたく)が織りなす古の調べ。横笛に琵琶もあいまって、心がすーっと軽くなる、素晴らしい音楽だったと想像します。