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ロバート・ハインデル展

2015-08-09 18:07:40 | 一期一絵
8月5日に西武池袋店のアートフォーラムにて鑑賞しました。
本当は横浜のそごう美術館にて、7月4日(土)より7月26日(日)まで開催されていた『没後10年 ロバート・ハインデル展-光と闇の中の踊り子たち-』を見たかったのですが、見に行くチャンスを逃して、残念に思っていたところ、池袋西武のアートフォーラムで鑑賞できるチャンスがあると知り、見に行きました。
行ってみたら、展覧会ではなくギャラリーでした。展示されている作品数は多い訳ではないけれど落ち着いた雰囲気の会場で、「ここは展覧会ではなく画廊なんですね」なんてとぼけた事を言ってるいかにも作品を買いそうもない私に係員の女性の方はとても親切に作品の説明をしてくださり、とても参考になりました。
その画廊でそごう美術館での展覧会パンフレットも売ってたので購入しました。画廊ではこのパンフレットに載っていた作品や載っていない作品もありました。
画家や画家の奥様監修のシルクスクリーンによる複製画も含めて5日に鑑賞した作品を何点か載せたいと思います。
また作品リストが無いので、制作年やタイトルを覚えてない作品があります。


ロバート・ハインデル(1938年 - 2005年)はアメリカ、オハイオ州出身の画家で始めはイラストレーターとして活躍していたそうです。イラストレーター時代の作品も絵画的です。


「素描 エリザベート・シュヴァルツコップ」1981年木炭
複製で鑑賞。往年の名ソプラノ歌手を、多分ブロマイド写真などを参考に描いたのだろうな。注文した企業が参考にする写真を指定したのかも。

マリア・カラスの素描作品はイラストレーションらしいお洒落な雰囲気でした。

「素描 マリア・カラス」1981年木炭
複製画で鑑賞。
描き残しを作って余韻を残し、見る者が想像力を働かせる効果を持つ描きかたはバレエ作品で大いに発揮されます。



バレエに魅了されるきっかけとなったのは意外と早く、1962年デトロイトのデザイン事務所でチケットをもらって、気の進まないながらも奥様のローズさんに「なんでも経験してみるものよ」と促され一緒に鑑賞したのが
マーゴ・フォンテーンとルドルフ・ヌレエフの「Lost Paradise(失楽園)」


こちらは、やはりマーゴ・フォンテーンとルドルフ・ヌレエフがパフォーマンスする「ロミオとジュリエット」。
「最初に見たバレエが最高のバレエだった」と画廊の係員さんが言われてました。ハインデル氏はたちまちバレエに魅了され、イラストレーターの仕事をつづけながら画家への転身を考え、1979年に描いたバレエ団のポスターがイラストレーターとしての年間最優秀作品賞になった後、画家へと転身しました。

画廊の中で直筆作品が何点かありました。
まずはイラストレーター時代の作品

「Caring・・・白鳥の家族」1975年油絵
こってりと絵の具を載せて、いつもはわざと描き残しをする画風の画家にしては珍しくきっちり描き切ってる作品。白鳥の親子の様子が微笑ましい。水の波紋が見事。


そしてバレエを描いた美術作品

「パ ド ドゥ ウィズ フロアーマークス」1984年油絵
この作品には説明が横にありました。
"2人で踊るという意味の「Pas de deux(パ ド ドゥ)」。一見優雅に見える男女のダンス風景だが、女性ダンサーのひらいた背中から、首から、胸にかけての椎骨と肋骨が浮かび上がり、鍛え上げられた身体をまざまざと見せつける。幼少期からバレエに専心しているトップダンサーたちのこの肉体に、ハインデルは強く惹きつけられた。
「鋼のような背中、何かにとりつけられたように見える集中力。私が伝えたいのはこのダンサーの特別な資質です。」”


「アーサー リハーサル1」2003年油絵


「フロム アーサー AR26」2002年油絵

あともう1点油絵作品がありましたが画像が見つかりませんでした。
「アーサー」をタイトルに入れた2点は展覧会のパンフレットを手持ちのカメラで写しました。


そのほかの作品はシルクスクリーンによる複製画ですが、ハインデル本人が監修したもの(ハインデル氏のサインが入っている)、亡くなった後、奥様のローズさんが監修したもの(薔薇の刻印が入っている)で色合いや作品の美しさは本物を十分に想像できる良質の作品群でした。
以下複製で鑑賞した作品をいくつか載せます








「カーマイン オン ダンサー」





「The Thread」


「Monte Carlo class」


「Reaching」

ハインデル氏は舞台よりも練習風景のバレエダンサーたちを描いてます。完成形を描かず、完成へと向かう途上を描くのに、画風がとても合っている。
きっちり隅々まで描くと時間が止まったような雰囲気を持つ。同じくアメリカの画家アンドリュー・ワイエスの作品はまさにそうで、静かな美しさがしみじみと心に入ります。
一方筆の線も生々しくまるで描いている途中のような絵は常に動いているようなこれから完成へと向けてパワーを発しているような感覚を受ける。完成させるのは見ている私たちの想像力にかかっている。見ている私たちによって、またはコンディションによっていかようにも完成形が変わる流動性を持つ。そこが面白い。
いずれも顔をあまりはっきり描かないのにもかかわらず絵を見ると誰が踊っていると関係者や詳しい人はわかるのだそうです。動きの特徴を的確に描写しているし、踊る人の心情が透けて見えてくる。


そして色の美しさに惹きつけられました。本物の色というより踊り手から発した雰囲気を感じた色で表現している。形は厳密にきちんとリスペクトするダンサーを描写していて、そのかわり色彩で自由に飛翔しているように感じました。
色の発するパワーがバレエダンサーのストイックなオーラと相まって輝きを放って見る私達の心をつかむ。

その色合いと言い「パ ド ドゥ ウィズ フロアーマークス」にみられる色の構成や塗り方、不思議な線がなんだかイギリスの画家フランシス・ベーコンを想起したのですが、実際とても心酔されてたそうです。
パンフレットを見るとまるでベーコン作品のような描きかたの作品もありました。


バレエ「ガーデンズ」の舞台背景を依頼されてデザインした作品の習作

「ブルーローズ」1988年
ガーデン(花園)といえば奥様の名前はローズさん。・・・という訳で薔薇をデザインしたと画廊の係員が言われてました。

他にミュージカル「キャッツ」を描いた作品、日本の能や歌舞伎を描いた作品があります。画廊ではキャッツの作品が展示されてました。
お能や歌舞伎は体の線が見えない衣装を着こむし、特にお能は能面もかぶるのですが、それでも描写された人物が特定できるそうです。
・・・でも、個人的にはやはりバレエの作品の方が好きです。多分、キャッツもお能も歌舞伎も肉体より役のキャラクターが強くなるからダンサーそのもの美しさが弱められてしまうからだと思うのです・・・。
だからむしろパンフレットに乗っていた能面そのもの、そして「オペラ座の怪人」の仮面そのものを描いた作品の方が面白かったです。

最後に日本のダンサーを描いた作品

「ポートレート オブ ケイ」
ロイヤルバレエ団にいたころはいつも自信満々な風情の熊川哲也氏がKバレエカンパニーを起こして演出家として考えを巡らせうつむいた姿を時に見せている。熊川氏の二面性を捉えた作品なのだそうです




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