開催期間も終わりに近い9月14日に東京都美術館似て鑑賞しました。
1977年に開館したジョルジュ・ポンピドゥー国立文化芸術センター(通称ポンピドゥー・センター)は美術や音楽、ダンス、映画などいろいろな芸術活動を発表する国立の文化総合施設だそうですが、中でも近代美術館はポンピドゥー・センターの中心をなす施設。その11万点に上る所蔵品から20世紀になって表れた美術運動フォービズムからポンピドゥー・センターが開館した1977年までの美術作品を一年につき一点ずつその年を代表するような作品を紹介するというのが今回の展覧会のテーマでした。
それぞれの作品は専門の勉強を経た技術的な作品もあればコンセプトという理論の鎧を纏わせて何気ないモノや作品にに芸術的な意味を持たせたもの、、素人の画家が感性で描いた作品もあり、20世紀の美術の多様性を表していました。その中で印象に残った作品を載せたいと思います。
(今回はパンフレットを購入しましたので、パンフレットから写真を撮った図があり、作品がちょっと歪んで写っています)
また、この展覧会は内装も一ひねりしてました。時代を3つに区切りそれぞれの展示室を赤、青、白のトリコロールカラーで彩っていました。
その内装の模型が公式ページに乗っていましたので拝借して一緒に載せてみます。
最初の部屋(1906-1934年)
オーギュスト・シャボー《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》1908-1909年
ムーラン・ド・ラ・ギャレットといえばルノワール展で大作が展示されてました。ルノワールが描いた時から30年たっても人々の社交の場だったようです。室内には電燈が照らされ、夜の道から見ると輝いてます。「BAL」とネオンで明るく輝いているのもきっとルノワールの時代にはなかったものではないかな。フォービズムの筆致で描いてます。
モーリス・ド・ヴラマンク《川岸》
フォービズムの筆致ながら遠景の家はキューブ型に描かれていてキュビズムの萌芽が見られます
マルセル・デュシャン《自転車の車輪》1913/1964年
絵画作品より一足先に立体作品は時代を進んでいたようです。始めから自分で製作するのではなくすでに作られている製品(レディメイド)を組み合わせてオリジナル作品としたもの。この作品は車輪をくるくる動かせるので、はじめての動く立体作品だったとか。
東洋人の私はお釈迦様が説法するときに回した車輪(法輪)を思い出します。ジャポニズムや東洋美術からの影響も少しはあるのだろうか?
ル・コルビュジエ《静物》1922年
今年コルビュジエ氏の設計した建築作品が一気に17邸も世界遺産に登録されることになりましたが、その中に国立西洋美術館も入ってることで話題になってます。若い頃は画家でもあったそうで、キュビズムをさらに単純化して純粋主義(ピュリズム)の作品を描いてます。
まるでのちに設計する建築のようでもあり、有名なソファーなどを思い起こすシンプルで無駄のない、色もいい感じの作品だと思いました。
アンドレ・ケルテス《ビストロ》1927年
写真作品もいろいろな時代で何点か展示されてました。この作品は先ほど載せた《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》の絵とつながるような気がして載せました。やはり外から電燈で明るい店を見つめてる。そして、道に「CAFE」と逆さに映しだされているのがとてもしゃれている。この店に入りたくなります。
カミーユ・ボンボワ《旅芸人のアスリート》1930年
画家としての専門の勉強をした人ではなく、もとはサーカスの力持ちの芸人さんだった人だそうです。だから絵の中の人物は若かりし頃の自分。無表情の観客の中で顔を真っ赤にして重いバーベルを持ち上げている。がっしりした芸人の体とぽってりとしたバーベルの組み合わせにユーモラスな味わい。そして体を張って生きてきた気概も感じます。
アンリ・ルソーを思い起こす素朴な表情と人々。苦労人だったそうですが作品が評価されたそうです。
ほかにも感性で印象深い作品を描く画家の作品が何点か展示されてました。
オットー・フロイントリッヒ《私の空は赤》1933年
ドイツ出身のユダヤ人の画家。シャルトル大聖堂でしばらく働いた影響もありステンドグラスを思い起こす色面の作品を描いたそうです。そして共産主義にも共鳴してたそうで、赤い色はその思想を表したのではないかと説明に書かれてました。1942年に強制収容所で亡くなります。
次に第2の会場に入ります(1935-1959年)。一つひとつの作品ごとにコーナーが設けられた作りになってます。
アレクサンダー・カルダー《4枚の葉と3枚の花びら》1939年
マルセル・デュシャンが編み出した「モビール」を作品に取り入れて風によって少しずつ形を変化する作品を発表し、しばしばモーターで動かす作品も制作したそうです。この作品は風で動く作品。カルダーのモビールは私たちが普段想像するモビールのイメージを作ったように思います。
動く部分「モビール」と動かない部分「スタビル(ジャン・アルプが編み出したそうです)」を組み合わせた作品。
今回の展示では固定されて動いてなくてちょっと残念でした。作品の保護のためだとは思いますが。
マリー・ローランサン《イル=ド=フランス》1940年
やわらかい色合いの少女たちが描かれた穏やかで平和な作品。でもこの作品を描いた時、ナチス軍がパリを占領したそうです。
その時代背景を知ると、この作品がただ美しく描いただけではないように思えました。
そして1945年は、ポンピドゥー・センターの作品は展示されてません。黒い壁がただあるだけです。
エディット・ピアフが歌う「バラ色の人生」が音量を抑えて流れていました。
私がこのコーナーにたどり着いたとき一人の西洋人の青年が目を閉じて静かに聞き入ってました。そのあと数人やってきてやはりみんな歌が終わるまで静かに聞き入ってました。
エディット・ピアフが歌った動画をリンクします→☆
幸せだった愛の日々を回想している歌と解釈しました。けれどもう一度別の翻訳を見てみると幸せな日々を謳歌している歌詞なので驚きました。
この1945年のために第2展示室は1作品ごとにコーナーを設け独立させたように感じられました。
再生がはじまる。
ジャック・ヴィルクレ《針金ーサン=マロ、ショセ・デ・コルセール》1947年
街で拾った針金をただ組み合わせただけなのに、なぜか組体操をしている人に見えてしまうという、ユーモアを感じる作品。
ニコラ・ド・スタール《コンポジション》1949年
穏やかな色合いや筆あとの残るマチエールが温かみを感じほっこりとして癒される抽象作品。奥様を亡くした悲しみでしばらく打ちひしがれていたけど、少しずつ回復して再婚してお子さんが生まれた年に描かれた作品だそうです。
抽象表現主義絵画が主流の時代だけど、中にはこんな優しい雰囲気の作品もあったのだな、と思いました。
3番目の部屋(1960-1977年)円形の会場で画家の言語録が真ん中のテーブルに書かれています。
クリス・マルケル《ラ・ジュテ》1962年
28分のモノクロ映像作品。写真をつなげて映像にしたと書かれてましたが、一部動画になっている部分もありました。
第3次世界大戦後のパリは放射能で汚染され廃墟となり、わずかに生き残った人は地下組織に捉えられてしまう。一人の男が人体実験を受け過去と未来へ時間を旅するという物語。
第3次世界大戦以前のパリは美しく文化にあふれ、そして優しい笑顔の美しい女性に会い、いつしか愛情が芽生える、それが子供の頃の遠い記憶とつながっていく・・・
3番目の部屋の中で一番印象にのこった作品でした。未来世界のパリの人はまるでウルトラセブンに出てくる宇宙人のようです。ウルトラセブン自体がかなりアートを意識した作りなのだろうな。
アラン・ジャケ《ガビ・デストレ》1965年
わざと絵の具をずらして塗っているので小さな写真にすると見づらくなってます。
挑発的な表情でこちらを見る女性の絵は16世紀フランスのルネッサンスといえるフォンテーヌブロー絵画の名作「ガブリエル・デストレとその姉妹ヴィヤール侯爵夫人」を下地にポップアート作品にしてます。
これがフォンテーヌブロー派の作品
16世紀の作品も結構エロチックですが、20世紀作品もなかなか♪。
ジャン・デュビュッフェ《騒がしい風景》1973年
電話しているときに紙に描いた落書きをもとにした作品。すごいね!みんながけっこうやることだけど、それをこんな美術作品に仕上げてしまうんだから。
その作為のない作品を発表した画家でもあり、「アール・ブリュット」運動を推し進め、精神障害や知的障害を抱えて生きる人の作品を評価して芸術作品としての価値をを提唱した人だそうです。
芸術の可能性を一層拡げた人でもありますね
そしてスーパーリアリズムの作品やパフォーマンス、キネティックアートもあって最後にレンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースが共同で設計したポンピドゥー・センターの模型が展示されてました。確か当時、工事現場のような建物だといわれてましたっけ。いい意味でもそうでなくても、話題になった建築だそうです。
(これは本物の建物の写真です)
副題が「ーピカソ、マチス、デュシャンからクリストまでー」となっていますが、デュシャン以外は今回載せてませんがそれだけ魅力ある作品が多かったです。
高度な技術による作品も、素朴な感性による作品も等しく芸術作品であるという20世紀芸術の多様性と懐の深さを感じて見ていて楽しかったです。
出口にはリサとガスパールと記念写真が撮れるコーナーがありました。
そしてとある駅には「おそ松くん」のキャラクター「イヤミ」がシェーをしながら宣伝したポスターがあったとか。
調べてみたらありました
いいねえ♪おフランスざんす~!