まず7月1日に第1展示場と翠玉白菜を7月9日に第2展示場とまた第1展示場を鑑賞しました。
この展覧会に出品される総数は九州会場の展覧会限定も含め231点。東京会場では2期に分かれ、7点ほどの入れ替えがありますので私が鑑賞した作品数は178点になります。
かなりの作品数、そしてどれも見応えのある逸品、いえ神品なのでどこから書いていいか迷い、とても総ての分野の作品に触れることができませんが、自分なりに感じた作品について書いてゆきたいと思います。
< 書 >
今回の展覧会ではかなりの数の書が出品されてます。書というものへの中国人のこだわり、愛情の深さは大変なもののようです。
私は書の見方を知らないのですが、漢字には不思議な魔力があるのは感じます。残念ながらパッと漢字の羅列をみて意味が分かるわけではないのですが、以前
中国語の繁体字の文章を辞書をお供に一つ一つ漢字をしらべながらゆっくりと読んでみたら、紙上の漢字の羅列の向こう側に鮮やかな世界が現れた感覚に驚いたことがあります。漢字は表意文字なので一つ一つが意味をギュッと凝縮している。例えるなら星雲のなかの惑星や光星。一つ一つが完結した世界を持っている。書の達人が著した書、特に楷書や行書は字が独立して並んでいて文字としてのバランスが美しいと思いました。
「楷書牡丹詩帖頁」 徽宗筆 北宋時代・12世紀
「行書黄州寒食詩巻」 蘇軾筆 北宋時代・11~12世紀
「草書花気詩帖貢」黄庭堅筆 北宋時代・11世紀
こうやってみると、字がだんだん大きくなったり斜めになってしまっても構わないのだろうか、美しい字であればいいのかな・・・
印象に残っているのは書く人の息使いを感じるこの文章です
「朱批奏摺(�罨浙総督覚羅満保)」清時代 18世紀
台湾から塩干ししたマンゴーを献上された康照帝がもう送らなくていいと書いた断りの奏摺。
最後に康照帝自ら赤字で走り書きしているのですが、万年中国語初心者の私でも前半が読めて嬉しくなりました♪
”朕就是這様漢子 就是這様素性 就是這様皇帝・・・”
朕はまさにそんな漢だ まさにそんな性格だ まさにそんな皇帝だ
はっきり言う人となりと多少せっかちな様子も感じられました。
< 山水画 >
山水画は最初は鮮やかな色が塗られていたそうです。「青緑山水」といい、日本に伝わり「大和絵」の源流となったそうです。
その後墨だけで山水を描く「水墨山水」へとって変わります。展示されている作品を見ると10世紀に代替わりしたようにみうけられました。
「青緑山水」では墨の線は主に輪郭線を作る役目だったのに対し、「水墨山水」は多様に変化する墨の表現が主流になり、そこに作者の力量と精神性が直接披露できる良さがあったようです。
日本にも鎌倉時代に水墨山水の絵画が伝わりました。が、伝わったのは柔らかい表現の江南絵画で、厳しい自然を描いた華北絵画は伝わらず、絵も見る機会がなかったそうです。
雲横秀嶺図軸(うんおうしゅうれいずじく) 高克恭(こうこくきょう)筆 元時代・14世紀
高克恭は色目人、つまりアラブもしくはヨーロッパ系民族の人だったそうです。華北絵画に見られる高い山(皇帝を著す)と木々(臣下を著す)を描きながら筆法は江南絵画の柔らかさがあり、元時代に南北の文化の融合があったそうです。
< 絵画 >
とても細かく描いたもの、趣深い文人画などいろいろありましたが、この作品を載せます
「具区林図軸」王蒙筆 元時代14世紀
文人画で傑作といわれている作品。暗い洞窟を下りてゆくと静かで落ち着いた桃源郷のような世界があった、という話を絵にしたもの。
戦乱で世も人も疲れ切っていた時代の願いを込めた作品。
家の中では、文人たちが心穏やかに読書し、家族も平和に暮らしてます。
ひっそりと穏やかに暮らしたい気持ちが伝わってきました。
< 刺繍 >
布の折り目に合わせて細い刺繍糸をぬいこんでいくかなり細密な刺繍法で細緻で絵画のようです。風景や仏様、おめでたい図柄がありました。
「刺繍九羊啓泰図軸」元時代 13~14世紀
折り目に入れた刺繍「戳紗繍(たくしゃぬい)」を下地にさらに立体的な刺繍を施して厚みと立体感があるかなり凝った刺繍。
< 漆器 >
漆工芸のなかでも、朱漆を何層も塗り重ねて分厚くして、乾燥させたのち彫刻する堆朱(ついしゅ)の名品がたくさんありました。
「花卉堆朱長頸瓶(かきついしゅちょうけいへい)」明時代15世紀
漆器はたいがいお盆か箱類を見かけますが、これは花瓶なのが珍しいなと思いました。
私が堆朱の存在を知ったのはつい数年前、2年半ほど茶道を習いに行っていた頃、先生はいろんな器を使って教えていただいたのですが、ある時御抹茶を入れる棗が朱くて全面に彫刻が施されたもので、これは堆朱ですよと教えてくださったのです。
茶道も作法も全くわからない器の名前も知らない不作法ものでしたが、堆朱の器になにか惹かれるものがありました。
今思うと、とても貴重な経験をさせていただき、東洋美術への興味や理解に大きな足がかりをいただいたと感謝してます。
そんな思い出深い堆朱の名品にしばしうっとり魅入りました。
< 青銅器 >
古代中国の青銅器をコレクションすることは皇帝が古代から正当な君主として認められているという説得力を持つことだったそうです。
古く青錆色でごつごつして重厚な感じがします。
「散氏盤」 西周時代 前9~前8世紀
重厚な感じがする器。平たい内側に国と国との戦争を平和に解決した経緯が古代漢字で刻まれてます。
この散氏盤を所蔵することが選ばれた正統な君主である証になったそうです。まさに「君主の器」
「子�冀鐘(しそしょう) 」春秋時代・前7~前6世紀
古代の打楽器で大小の鐘を並べて吊るしてハンマーでたたいて音楽を奏でる「編鍾」という楽器の一つの鐘を、清時代の乾隆帝が紫檀の木をまるでお寺の鐘つき堂のように作らせて吊るして飾ったもの。たまには鳴らして楽しんでたかしら♪
この編鍾の形を見ると、いつも日本の銅鐸を思い起こします。きっと銅鐸のご先祖ではないかな。
一番のお気に入りはお酒を注ぐ急須みたいな「犠尊(ぎそん)」。動物の形(一見するとコビトカバみたいにみえる)が可愛らしい。
この酒器は中国ドラマ「大漢風」でも登場人物が普段使いしてました。でも本当は儀式用の特別なものだったらしいです。
上にあるのは 戦国時代 前4~前3世紀
下にあるのは 元~明時代 13~14世紀 古代の犠尊を真似して作った倣古銅器
どちらもとても大切にされていたのでしょう。とくに戦国時代の犠尊の保存状態の良さに驚きます。
背中にお酒を入れる蓋があり、口から注ぎます。下の倣古銅器には注ぎ口に穴がないそうです。
こうやって見ると古代の方がスッキリして美しい!
< 磁器 >
気になった磁器を載せます
一見してごく普通にありそうな感じの小さな茶碗
「豆彩唐子図杯」景徳鎮窯 明時代 15世紀
中国茶を飲むのにちょうどいいサイズです。五人の子供が遊んでいて藍色、赤色、緑色が絶妙に豆彩された茶碗は闘彩とも言われたそう。
「藍地描金粉彩游魚文回転瓶」景徳鎮窯 清・乾隆年間18世紀
この青い壺は二重構造になっていて外側の壺のなかに可愛い顔した魚の絵のついた一回り小さい壺があります。この壺は上の首を回すと
中に入っている魚の絵の壺をグルグルと回して外側の壺の窓から見える絵を変えられるそうです。
深みのある瑠璃色の壺には金でヨーロッパ風な模様が描かれてます。中の壺の可愛い魚は金魚なのかな?目が可愛いくて昔よく見かけたアルミのおもちゃに描かれた金魚を思い出しました。
< 青磁 >
いろんな種類の磁器が展示されてましたが、特に惹きつけられたのは青磁です。
「青磁槌形瓶」 中国・汝窯 北宋時代・11~12世紀
「青磁輪花碗」 中国・汝窯 北宋時代・11~12世紀
控えめな色合いの青が綺麗。中国の工芸品は大概とても凝っていてこれでもかと細工をしているけれど、青磁は形もシンプルで模様もつけない。それでいて独特の清涼な存在感があります。
とくに美しいとされたのは「雨過天晴」。雨上がりのまだ少し白んでる空のような白く濁った青だそうです。見るだけで気持ちが穏やかになれる。
花形のお椀は世界でもこれ1点だそうです。かなり貴重な神品。
< 多宝格 >
「紫檀多宝格」清時代 乾隆年間 18世紀
乾隆帝のお好みのミニチュア宝箱セット。からくりみたいに開く紫檀の箱から書や絵画や玉や磁器などあらゆる分野の名品のミニチュア(でも本物)が効率よく収まってます。金でシンプルに留め金を施した指輪のルビーがいちご味の飴みたい。小さいので小指用かな?
こんなかわいい宝箱を時々開けて中のものを取り出し手に取って楽しんでいたのでしょうね~♪
この紫檀多宝格の宝箱の構造を真似て展示場の一部がその宝箱に入って展示を見る構造に作られていました。・・・じつは壁の説明書きを読んで気づいた展示方法でしたが。
外国の大切な宝物、美術品を借り受けることは非常に神経をすり減らすことだと想像します。でもこのように展示に遊び心をプラスする時は心わくわくしてたのでは。
< 玉 >
中国人は玉石が好き!それも翡翠。
やはりたくさん展示されてました
古代の玉で一番印象的なのは
「玉珮(ぎょくはい)」新石器時代(紅山文化)紀元前4500~紀元前3000年
エジプト文明もこのころはどこまで発展していたのかなと思うぐらいはるか昔の玉。
一部破損してるけど爪の尖りや玉の艶はそのままで、こ~んな太古の宝を代々の王朝や王様は大事に大事に扱って保存していたのだなぁと感心します。
古代の文様って不思議に渦巻き模様や枝分かれした曲線模様が多いです。ヨーロッパのケルト模様もしかり。
より複雑な形や模様にすることが最先端の技術でもあったのかしら。
そういう原始的な入り組んだ模様にとても惹かれます。
こちらは軟玉と書かれてました。翡翠に近いネフライドかな。
ぐっと時代は近づいて近代の玉
「人と熊」 清時代18~19世紀
こちらも軟玉と書かれていました。こちらも翡翠に近いネフライドですね。これは白と黒が隣り合わせた一つの石なんだそうです。その色合いを生かしてこんな可愛らしい置物を作るんですね
「古稀天子之宝」「八徴耄念之宝」玉璽 清時代・1780・1790
これも軟玉。 乾隆帝が70歳と80歳の時に作られた玉璽(ぎょくじ)。皇帝の印はさすがの存在感。
「翠玉印盒」 清時代18~19世紀
こちらは硬玉(翡翠)と書いてます。ミャンマーから良質の翡翠ジュダイトを取り寄せて作ったもの。みずみずしい緑が鮮やかで美しい。
「翠玉白菜」 清時代・18~19世紀
こちらも硬玉(翡翠)緑の葉の上に大きいキリギリスと小さくてちょっと色の薄いイナゴが乗っかってます。
このおめでたい美しい白菜の彫刻を多くの人が長い時間並んで見に行きました。私は夜に行くと比較的短時間並ぶだけで見られるとツイッター情報を読んで、家族の晩御飯や家事を早めに終わらせて夕方に出発して夜にこの白菜を見に生きました。でもじっと見るわけにはいかないのであっという間に見終わってしまいました。あとはロープを張った2列目に入ればじっくり観察できるのですが、やはり人だかりで人と人との間から見てました。ちょっとはなれているので細かいところをもっとじっくり見たかったなあという心残りはありますが、でも実際に見れたのだから幸運でした。
葉が鮮やかで葉脈もリアルで水を含んでいるような新鮮な野菜そのものの瑞々しさを感じました。幸福感のある置物でした。
まだまだ絵画、漆、細工物、献上品など見るべき、そして展覧会の目玉の展示品がありました。
全体的に言うと、明から清時代までの逸品が主に展示されていました。
唯一展示されていた女流画家の作品もありました。
日本を信頼して出品された台北国立故宮博物院の方々に感謝☆
おかげで日本にいながら中国の美を堪能できました(*^_^*)
追記
「具区林図軸」「花卉堆朱長頸瓶」「子�冀鐘」「豆彩唐子図杯」「青磁輪花碗」「紫檀多宝格」「玉珮」を追加して載せました。(8月18日)
白菜はもう帰ったそうだけど、見れてよかったですね。
あれ、まだだったかな?^^;
そして、ミニチュアセット!(≧▽≦)
チョウかわゆくて、アタシも遊びたくなりました(笑)
Pちゃん(自分かw)、こんなに持ってたんですね~。
アタシは、1個も手に入れられず、残念だったのですが、こーして遊べるなら持ってて正解ですね(爆)
ほめていただきありがとうございます(^^♪
でもねでもね
ホントはまだ書きたいこと、紹介したい作品があるのに、うまくまとめられなくて載せれなかったものがあり、それが心残りです(:_;)。
・・・・もしかしたら忘れたころ後からこっそりつけたすかも
キューピーちゃんかわいいですよね。これ、またどこかの映画の宣伝でキャラクターピーを作ってくれないかしらと思います。
私としては項羽と劉邦のピーちゃんシリーズがほしいな~
項羽ピーに劉邦ピー、范増ピー(キューピーなのにじいじ)、張良ピー、蕭何ピー、韓信ピー、あ、樊かいピーはレックリの張飛ピーの使いまわしでOK。
それでドラマを再現するのです。
蕭何ピー「劉ぴーさま、韓ピーは国士無双ピーです!」
えへへ(^_-)-☆
雨の中頑張って4時間並んで見られたのですか。
白菜をとうとう見れた幸せがこみあげますね!(^^)!
私は足がちょっと悪くて、長時間並ぶのができないので諦めようと思ってたのですが、ツイッターの美術館情報で7時過ぎに並ぶと10分~20分で見られるということを知り、それなら私も大丈夫と思い参上しました。
やはり見れて嬉しかったです♪
乾隆帝は派手な装飾のものより、古代からの意匠を取り入れた品を愛したと書かれてましたね。長い時間を経ても生き残った意匠に皇帝なりの敬意を持ってられたのかも。たしかにセンスがよくてステキでした(#^.^#)
思いますが向かって左側から極近で見ると、真ん中の人物の目だけが白く
光って見えておぉ~と思います。刺繍が眼飛ばしてきた
美術館に行って人間ウォッチングすると楽しいですたまに
ハンパじゃない人が居ましてガラスケースの裏に回り込み、その角度から
見るのくぁ?!と思いつつ私も真似を…。
そういえば「刺繍九羊啓泰図軸」の真ん中に刺繍されている人、黒目が小さめですよね。なんかどこから見ても目が合ってしまう(@_@)。
絹の刺繍糸だから向きが変わるとキラキラ光るので、白目に囲まれた黒い小さな目はけっこう迫力ありますね。
確かに眼飛ばされている気分
ガラスケースの裏に回り込み見る人・・・・ぎくぅ(*'ω'*)み、見られたかな。
も、勿論見れる範囲内でまわりこんで見てます
時々面白い人いますよね、玉器の展示の真ん前で見てた熟年おっさんは自分の後ろから誰かが見れないように、後ろをチラチラ見ながら作品リストを頭の横になるようにもちながら見てました