小日向白朗学会 HP準備室BLOG

小日向白朗氏の功績が、未だ歴史上隠されている”真の事実”を広く知ってもらう為の小日向白朗学会公式HP開設準備室 情報など

自由民主党稲田朋美氏が北方領土問題を語る

2023-07-13 | 小日向白朗学会 情報
 2023年7月09日、FNNプライムオンラインに次のような記事が載っていた。『自民稲田氏「二島返還の方針は正しかった」』[i]である。
この中なかで稲田氏は、非常に重要な問題を話している。
『……
私は防衛大臣のとき、本当にもうロシアがもうアメリカに対して不信感いっぱいで、そのときイージスアショアを置くということについても、ミサイル防衛で、ロシアは「自分のところにミサイルが飛んでくる」ということを言う。もうすごい不信感があって、ロシアは(北方領土を)絶対にこれは返さないなって思った。ただ、安倍元首相とプーチン氏との関係で、もし二島返還が実現し、平和条約が締結されたら、やっぱり対中国、対北朝鮮という意味においても、非常に国益に合致するということで、安倍元首相は頑張られたが、やっぱりロシアはそんな戦争で取ったものを返さないと。不法なものだが。
……』
まともに聞いたら安倍晋三と稲田朋美そして日本政府の努力に頭が下がるおもいに至るであろう。大した役者である。

 このころプーチンと日本政府が如何なる交渉を進めようとしていたのかを纏めた『ポスト・プーチンのロシアの展望』[ii]とする報告書がある。尚、この報告書をまとめたのは、防衛三文書を決定するまえに開催された有識者会議座長である佐々江賢一郎が理事長であった公益財団法人日本国際問題研究所である。そのなかでプーチンは、ロシアが日本と北方領土問題を交渉するさいに日本側が抱える問題点について鋭く指摘している。
『……
1.日本テレビとの会見(2016 年 12 月)
日本には(日米)同盟上の義務がある。しかし日本はどこまで自由で、どのくらいまで踏み出す用意があるのかを見極めなければならない。
2.東京における記者会見での発言(2016 年 12 月)
ウラジオストクとその北には大規模な海軍基地があり、太平洋への出口である。日米の特別な関係と日米安保条約の枠内における条約上の義務を考慮すれば、この点について何が起こるかわからない。
3.サンクトペテルブルグにおけるマスコミ代表者との会見(2017 年 6 月)
アラスカや韓国など、アジア太平洋地域で米国のミサイル防衛(MD)システム が強化されており、ロシアにとっての安全保障上の脅威である。
・我々は脅威を除去せねばならず、島(北方領土)はそのために好適な位置にある
・返還後の北方領土には米軍基地が設置される可能性が排除できない。これは日米間の合意の帰結であり、公開されていないが、我々はその内容を全て知っている。
4.モスクワにおけるマスコミ代表者との会見(2018 年 12 月)
・沖縄では米軍基地移設に対する反対運動が広がっているが、その声が日本の政策に反映されていない
・この問題について、日本にどこまで主権があるのかわからない
・日露が平和条約を締結した後に何が起こるかわからない。これに対する答えなくして具体的な解決策を取ることはできない
・米国の MD システムは戦略核戦力の一部であり、防衛的な性格であると理解することはできない。
……』
 プーチンが日本と北方領土問題を交渉する際の懸念は、日本が主権を放棄して日米安保条約を締結していて、アメリカが求めるミサイル防衛網の基地を北方領土に建設するために返還交渉をしているのではないかと考えていたのだ。プーチンが指摘している「日本には主権がない」ということと「北方四島にミサイル防衛網を建設する」ため返還交渉を進めていたことは国会議事録でも確認することができる事実である。つまりプーチンが抱いていた懸念は全て正しいのだ。
 アメリカが北方領土にミサイル防衛網を建設していたということは、にわかには信じられない話で陰謀論に聞こえるかもしれないが「昭和29(1954)年12月03日参議院「電気通信委員会」[iii]国会議事録に記載がある事実なのだ。こおときアメリカのミサイル防衛網建設で生まれた特殊利権が日本テレビ開設なのである。
 そのことをプーチンは懸念していたのだ。そのうえでプーチンは正直に自国の安全保障上の問題を述べるとともに、日本に主権がないことから返還した北方領土にアメリカ軍を配備しなという約束ができないことを熟知していたのだ。その返還交渉の相手である安倍晋三はといえば、アメリカに日本の自衛隊を売渡した歴代内閣総理大臣の一人であって、日米安保を破棄する心算もないことから、そもそも交渉の成立はあり得なかったのである。それにもかかわらずプーチンは誠実に交渉テーブルについて誠実に対応していたのだ。稲田氏が言わんとする悪徳暴君プーチンのイメージとは作話でしかすぎない。
つまりプーチンと安倍晋三の北方領土返還交渉とは、アメリカが日本とロシアによる北方領土問題を利用して返還後の北方領土にロシアに対するミサイル防衛網の完成を狙ったが、プーチンにその真意を見透かされ、折角の安倍晋三による懇願外交も水泡にきすことになったというものであった。安倍晋三は、プーチンに、アメリカが北方四島にアメリカ軍基地を設置してミサイル防衛網を完成させるためであることを指摘され「ぐうの音」も出なかっただけなのだ。
安倍晋三の返還交渉が失敗したことを受けて、動き出したのがアメリカに主権を売渡したことで享受してきた防衛利権と外交利権を死守しようとする自由民主党中枢及び防衛と外交官僚であった。
 彼らが打ち出した次の手段は、北方領土問題でプーチンに懇願し泣きつくソフトな方針を捨てて、ロシアを仮想敵国とするハードな方針に変更すことであった。その第一歩が防衛三文書の根拠となった「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」を形式的に開催して防衛力強化という利権拡大方針を日本の安全保障政策とすることであった。
そのため同有識者会議の座長が元外務官僚佐々江賢一郎なのだ。佐々江は、『ポスト・プーチンのロシアの展望』で、日本の北方領土返還交渉の本質は、アメリカの要請で北方領土にアメリカ軍基地を設置しミサイル防衛網を完成することと、ロシアを北方領土方面から威嚇する前進基地を建設することが、プーチンに見透かされて大失敗であったことを熟知していた。
 そして生れたのが「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」であり、その提言で出来上がったのが、あの新しい安全保障戦略である「ロシアを仮想敵国とする」防衛三文書なのだ。それも、お粗末にもNATOとイギリス王立防衛安全保障研究所(RUSI)の支援を受けて作成した防衛三文書であったことから、ロシアによるウクライナ侵攻が中国による台湾進攻を惹起するという単なる相関関係である事象をあたかも因果関係のように大々的に喧伝し、まんまと莫大な防衛利権を手に入れてしまった。本来ならば中国による台湾進攻が日本の安全保障に影響を及ぼさないよう最大限の外交努力を傾けるのが外務省であるが、それとは反対に率先して武力拡大に奔走するという間抜けな仕事ぶりなのである。つまり佐々江を代表とする宗主国アメリカの現地テクノクラートが行おうとしていたことは、危機を演出し日本の憲法を改正して自衛隊を海外派兵できるようにすることである。それに合わせて莫大な軍事予算を恒久的に獲得することだったのである。つまり彼らにとって、膨大な軍事予算を獲得するための動機は何でもよかったのである。
 北方領土問題が解決しなかった根本原因は、自由民主党が日本の国権を秘密裏にアメリカに売り渡したことにある。日米安保条約と行政協定(日米地位協定)がある限りアメリカは何時如何なるときにでも日本領土内にアメリカ軍基地を設営する権利を有しているのだ。プーチンと温泉につかって話あっても解決する話ではないのだ。
 稲田朋美氏は、安倍晋三の北方領土返還交渉がプーチンに真意を見透かされ大失敗であったことを自らかが追認したことに他ならない、語るに落ちたのである。稲田氏を含む自由民主党々員は、北方領土問題が解決しない理由として、自分達の党がアメリカに日本の主権を売渡したことが原因であるとは間違っても認めることはできないのだ。
尚、北方四島問題に付いては、小日向白朗学会HP準備室BLOG「令和4年日本国国防方針」批判(第六回) -国防権のない日本の危険な外交と国防-」(クリックでジャンプ)に詳しく報告済みである。参照願いたい。

P.S.  
2023年7月11日、日本経済新聞に『国民・玉木代表「政策の一致なく、候補者調整しない」』とする記事が掲載された。その中で国民民主党玉木雄一郎代表はつぎの様に語った。
『……
……11日の記者会見で、次期衆院選での共産党を含めた野党間の候補者調整を改めて否定した。「政策の一致がないのに候補者調整することは今までもないし、これからもない」と述べた。
玉木氏は「自民党の数を1議席でも減らすために、政策を全部置いて一つにまとめることは国家、国益のためにならない」と強調した。
……』
 此の党首は、自由民主党が日本の主権を70有余年の長きにわたりアメリカに売渡してきた政党で、その政策はアメリカの意向によるものであったということをご存じないようだ。不勉強の党首である。政策が一致しないため、主権回復する政治運動には応じないというのだ。民主党党首は、国権の回復と政策、どちらが重要なのか理解できないらしい。つまりこの党首は、自由民主党と同様にアメリカに日本の主権を売渡す政策を継続したいと公言しているのだ。同党首は、日本のような主権のない国家の方が、居心地が良いといっているのだ。アメリカが自衛隊を私兵として世界各地の戦場に派遣するため憲法を改正して、アメリカのエゴで始まる戦争に黙々と且つ勇敢に戦うことが日本の国威発揚だと言っているのだ。
 おそらく同政党は早晩、消滅する。なぜなら自由民主党と同様に売国政党であるからである。宗主国アメリカは、来年の大統領選挙で日本の国家主権を掌握し続けてきたCIAは組織存続の危機に陥ることになるはずである。その時、CIA資金で国家主権を譲渡するために結党した自由民主党は存続の危機に陥ることになる。
 ついでなので、この際、国民民主党と立憲民主党の支持母体である「日本労働組合総連合会」(通称:連合)について一言付言しておく。自由民主党がCIA資金でできたことは既に述べたとおりであるが、じつは連合のルーツをたどると設立母体である旧民主社会党がCIAの影響下にあったということが重要である。CIAは、自由民主党を設立するとともに、旧社会党が再び統一し自由民主党政権を脅かす存在とならないように、社会党右派に7万5000ドルの資金を注入して民主社会党を設立させるという絶妙の野党分断工作を行ってきた。連合が、労働者のことよりも、自由民主党に擦り寄り、自民党の棄民政策に賛成するのは、このようなルーツがあるからである。つまりCIAによる野党分断政策が現代においても有効に機能しているのだ。要するに、連合がやっている政党支援とは、国民民主党と立憲民主党が共闘して自由民主党を脅かす存在とならないように分断しておくことが目的なのだ。努々、連合委員長の言うことを信じてはいけない。
以上(近藤雄三)
                            

[i] https://toyokeizai.net/articles/-/685599

[ii] 小泉悠「軍事面から見た日露平和条約交渉」『ポスト・プーチンのロシアの展望』日本国際問題研究所(2019年 3月)。

[iii] 『第20回国会 参議院 電気通信委員会 第2号 昭和29年12月3日』。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 自由民主党の命脈 | トップ | 維新正観(蜷川新著)にみる薩... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

小日向白朗学会 情報」カテゴリの最新記事