一夜明け、昨日に味を占めた2人はまたあの池に行くことにし早めに家を出た。初
日の鉄砲騒動に遭った鴨は、池は危険であることを十分に理解する。動物の危険
予知能力は直接、自分の生命を左右するものだから半端なものではない。それが
今、実証されている。私たちが車の中で待っていると一塊の鴨がゲーゲーと鳴きな
がら飛び立った、すると暫くして別の塊が宍道湖を目指して池から出ていく。ひょっ
として全部出て行くのではないかと心配になる。
この傾向は日増しに強まり解禁から3日もすればこの池で鴨を見ることはなくなり極、
稀に出会いがある程度になってしまう。遊びや餌を食べに来るのは夜だけになり朝
が来る前に安全な宍道湖ということになる。大荒れが続くと予想されると山の静かな
池に行きそれをやり過ごす。
ハンターは昨日の半分くらいになっていた。今日は私が奥に行き鴨を追い出す役目
を勤めることになり抜き足、差し足で前進した。露で湿った落ち葉を踏みながら身体
を屈め奥に向かう。鴨は夜行性でもあり目はよく、気配を感じ取るのは抜群である。
遠くの所からこちらが『いるかなー』とキョ口キョ口していると直ぐに見つかり反対方向
に飛び立ってしまう。
足を進めるとパシャパシャと水音が聞こえてきた。鯉でも跳ねて遊んでいるのかなー
と思う、何か様子が違う。あの先の雑木の陰から覗けば判ると近づく、途端にパシャパ
シャと鴨が水を蹴る音がした。バーンと放つ、続いてバーン、バーンと立て続けに引
金を引く。 暫くしてから土手で待つ人の放った銃声が響く。私の弾は全部命中の大
金星だ。やがて、Yさんが様子を見に来て池に浮かぶ3羽の鴨を見て驚いた。昨日、
初めて銃を持ち獲物に向かったのに、昨日は山鳥を今日は3発で3羽の鴨を射った
のだ。Yさんが驚くよりも私自身の方がよっぽど驚きだ、何が何だか訳の判らないハン
ターがこうも順調すぎる成果をあげるなんて正にビギナーズラック。
鴨猟にはリールと竿を持ち歩くと便利だ。池の中に落ちた鴨を回収するのに泳ぐ訳に
もいかないしボートを用意する訳にもいかない。大きな浮木を用意し、出来る限り大き
めな針を十文字にしてゴンガラに結び付け、それを鴨に向けて魚釣りの遠投の要領
で投げて引掛け回収する。
今日は、1日だけかも知れないビッグスターになった気分だ。
夜は、お狩場焼きに水炊きと食い切れない御馳走に囲まれて美酒に酔い知れた。
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