先のブログで今回の新幹線の台車亀裂問題の原因につき川崎重工やJR西日本が公表した内容に対し、
<日本の製造業の問題点>
・品質保証はだれのためか。 (次工程、最終顧客のため)
安全安心の確保は誰がするのか (責任転嫁と人任せ)
・根本原因の究明は
今回の亀裂が、単に削った事だけか。
と言う視点でメモを残したが、もう一点大きな疑問が残っていた。
今回の『重大インシデント』という事を受けて、JR全体での安全確保のための情報共有、水平展開がなされたかという事である。
『新幹線は安全』という神話だけで、どんな問題があったのか。さらにJR内部でこの事故と同じような事例があったのかも報告されていない。
新聞各社などの報道では、川崎重工、JR西日本からだけの開示報告を基にしているが、新幹線はJR東海へも繋がっており、今回の事故も名古屋駅での発覚であり、これらを受けてJR全体としてこの事実をどう捉えたかと言う点は、取材がなされなかったのか、コメントすら報道がなされていない。
事故発生直後の報道で、JR東海側から『N700』は西日本が主体で・・なんて言う無責任な発言も出ていたが、今や全国を走る新幹線全体の技術が大丈夫なのかと言う点が疑問として残っていた。
JR東のさらに高速で走る車両などは本当に大丈夫なのだろうか。製造メーカーはどこなのか。いまだ十分には公表がなされていない。
この原因として、鉄道車両、特に新幹線は、秘密の部分が多く、海外へも売り込みがかけれる貴重な技術であることは間違いないが、安全と言う点では最先端を突き詰める必要があり、技術の共有が不可欠なのではと考える。
先の亀裂の写真や、川崎重工側からの説明でも、まだ事故原因がオブラートに包まれた感があり、原因究明のためには、もっと正確な技術情報を開示すべきではないかと思われる。
JR東海が黙っているのも、N700Aへ飛び火しないようにしているのかとも疑りたくなる。
今の国会ではないが、『大丈夫』なら大丈夫と点検結果を講評してほしい。
話はもとへ戻すが、JR社内、特にJR西日本での安全での社内展開について不審な所がある。
JR西日本のホームページを開けるとトップページに下記の様な画面が現れ、『安心・安全』への取り組みと『信頼』の回復が謳われている。
このページから安全の取り組み、事故発生状況を見ていくと、
『インシデント』の項で、2016年に今回と同じように台車で亀裂が発生するインシデントが報告されている。(JRの説明⇒インシデントとは、鉄道運転事故が発生するおそれがあると認められる事態のこと)
このインシデントに対し、『再発防止策を徹底することにより、事故防止に努めています。』との今後の取り組みが記載されている。
<インシデント内容>
発生日 2016年4月11日
発生箇所 東海道線吹田総合車両所構内
種別 車両障害
状況詳細
検修係員は、定期検査の磁粉探傷検査を実施中、
台車枠の主電動機受けと横バリの溶接部に
約120mmの亀裂を認めた。
再発防止策
・同一構造の台車枠を使用する車両の一斉点検
・溶接補修実施後、表面き裂がないことおよび
十分な溶け込みの確保を確認
この事故を受けて全社へ情報が水平展開され、再点検の指示がなされたと思うが、この結果が明確に記載されていない。
もしこの時、このインシデントでの着目ポイントとして、新幹線の台車枠へも展開し、徹底的に点検し、少しでも亀裂が見つかっていれば、今回の問題も起こらなかったかもしれない。
これが冒頭に記載した安全の共有、水平展開であり、問題点を見つける『ネタ』になったかと思う。頭の隅にこの事故事例が残っていれば、点検者は適切な判断で、すぐに車両を止めたであろう。
さらには、この新幹線で無い車両の台車が、なぜ亀裂を起こしたかの原因究明がどうなったかも疑問である。
ここ数日の経済誌のオンライン版には今回の事故を受けて色々と指摘がなされている。
過去製造に係わった立場から見ると、過去の事例を学び、知見をたくさん持ち、寸時に思い起こせる事が重要であり、このためには『安全マインド』を高める必要があるかと思われるが、これが欠けてきている気もしている。
この懐をたくさん有していれば、『危険は危険』と見抜く目が養われるが、今回の川崎重工や、当事者であるJRもこの意識改革には程遠いような気がする。
昔の鉄道マンが言っていた『列車は転覆させてはならない』。このための線路の保守点検や車両点検。さらには運行での指示の徹底など、今一度鉄道マンとして考えてほしい。
このためにも、今一度、情報の水平展開、共有を行い『安全運行』を担保してほしい。
あわせて、先のブログで報道についても少し触れたが、今PRESIDENTの記事でも、報道がもっと『安全確保』をアピールすべきと書かれており、国やJRへ忖度する事が無い様にしてほしい。
1000人もの犠牲者を出さないため、真の安全を考えるのであれば、新幹線『一斉点検で
3日間運転休止』なども必要なのかもしれない。
インシデントは重大事故の予兆であり、軽微なものを無視すると、いずれ大きな事故へつながる。この時『想定外でした』との言い訳にはならないと思う。
<<記事のメモ>>
東洋経済オンライン(2018/3/5)
『「のぞみ」台車亀裂、2つの原因は"人災"だった 製造、運行管理、得意の「現場力」でミス続発』
★事故原因の究明と共に意思疎通の不十分さについて言及している
『コミュニケーションギャップは至る所に生じる。川重の台車製造ミスにしても、班長の独断が直接の原因かもしれないが、それをチェックする仕組みがまったくなかったのは問題だ。意思疎通をおろそかにするとどんな事態が起きるか。家庭や職場でも同様のことは起こりうる。決してひとごとでは済まされない。』
PRESIDENT Online 新聞各紙を読み比べる
『新幹線台車亀裂と日航機事故にある共通点「現場判断」で設計が無視された』
政治・社会 (2018.3.7)
★記事抜粋
『事故は想定外のところで起きる。
運行しながら台車を交換していくやり方で本当に大丈夫なのか。』
鋼材の厚さが基準未満の川崎重工業製の台車
⇒、JR西、東海で合わせて約150台
運行中、何かの拍子で亀裂が生じ、それが一気に大きな亀裂になる
危険性はないのだろうか。
乗車率100%だと、車両の型にもよるが、乗客数は軽く1000人を超える。
1000人以上の死者が出る大惨事が起きる危険性がある。
新聞各紙の社説も台車の削りすぎの問題を一斉に取り上げた。
しかしどの社説も追及が甘い。
問題の台車を装備したままの車両を運行している
『日航機事故にある共通点「現場判断」で設計が無視』
日航ジャンボ機事故の原因は、修理ミスだった。
なぜ指示通りに作業が行われなかったのか
修理を担当した米ボーイング社の修理チームは、損傷した圧力隔壁の下半分を交換した際、指示書通りの修理をしないで2枚に切った継ぎ板を使った。
ボ社は修理ミスを認めている。しかしなぜ強度が弱まるような修理を行ったのか。これについてボ社は一切、説明していない。
1987年に公表された運輸省(当時)事故調査委員会の報告書は、事故原因を「ボ社の不適切な修理ミスに起因する」としているものの、その修理ミスがなぜ、起きたかには触れていない。
今回の新幹線の台車枠は、前述したように設計を無視して現場の判断で勝手に削られた。現場がマニュアル通りに作業しなかった。ここが日航ジャンボ機墜落事故と共通している。
この共通点にも全国紙の社説は一行も触れていない。
かつて10年以上にわたって社説を書いてきた1人の新聞記者としてとても残念だ。
だが、新幹線の台車枠の削り過ぎの問題については、どうしてあそこまで現場が勝手に判断したかを徹底的に追及することはできる。
現在、国の運輸安全委員会が新幹線初の重大インシデントとし、調査を進めている。その調査の先には、川崎重工業という大会社の組織的問題が見えてくるはずだ。
<日本の製造業の問題点>
・品質保証はだれのためか。 (次工程、最終顧客のため)
安全安心の確保は誰がするのか (責任転嫁と人任せ)
・根本原因の究明は
今回の亀裂が、単に削った事だけか。
と言う視点でメモを残したが、もう一点大きな疑問が残っていた。
今回の『重大インシデント』という事を受けて、JR全体での安全確保のための情報共有、水平展開がなされたかという事である。
『新幹線は安全』という神話だけで、どんな問題があったのか。さらにJR内部でこの事故と同じような事例があったのかも報告されていない。
新聞各社などの報道では、川崎重工、JR西日本からだけの開示報告を基にしているが、新幹線はJR東海へも繋がっており、今回の事故も名古屋駅での発覚であり、これらを受けてJR全体としてこの事実をどう捉えたかと言う点は、取材がなされなかったのか、コメントすら報道がなされていない。
事故発生直後の報道で、JR東海側から『N700』は西日本が主体で・・なんて言う無責任な発言も出ていたが、今や全国を走る新幹線全体の技術が大丈夫なのかと言う点が疑問として残っていた。
JR東のさらに高速で走る車両などは本当に大丈夫なのだろうか。製造メーカーはどこなのか。いまだ十分には公表がなされていない。
この原因として、鉄道車両、特に新幹線は、秘密の部分が多く、海外へも売り込みがかけれる貴重な技術であることは間違いないが、安全と言う点では最先端を突き詰める必要があり、技術の共有が不可欠なのではと考える。
先の亀裂の写真や、川崎重工側からの説明でも、まだ事故原因がオブラートに包まれた感があり、原因究明のためには、もっと正確な技術情報を開示すべきではないかと思われる。
JR東海が黙っているのも、N700Aへ飛び火しないようにしているのかとも疑りたくなる。
今の国会ではないが、『大丈夫』なら大丈夫と点検結果を講評してほしい。
話はもとへ戻すが、JR社内、特にJR西日本での安全での社内展開について不審な所がある。
JR西日本のホームページを開けるとトップページに下記の様な画面が現れ、『安心・安全』への取り組みと『信頼』の回復が謳われている。
このページから安全の取り組み、事故発生状況を見ていくと、
『インシデント』の項で、2016年に今回と同じように台車で亀裂が発生するインシデントが報告されている。(JRの説明⇒インシデントとは、鉄道運転事故が発生するおそれがあると認められる事態のこと)
このインシデントに対し、『再発防止策を徹底することにより、事故防止に努めています。』との今後の取り組みが記載されている。
<インシデント内容>
発生日 2016年4月11日
発生箇所 東海道線吹田総合車両所構内
種別 車両障害
状況詳細
検修係員は、定期検査の磁粉探傷検査を実施中、
台車枠の主電動機受けと横バリの溶接部に
約120mmの亀裂を認めた。
再発防止策
・同一構造の台車枠を使用する車両の一斉点検
・溶接補修実施後、表面き裂がないことおよび
十分な溶け込みの確保を確認
この事故を受けて全社へ情報が水平展開され、再点検の指示がなされたと思うが、この結果が明確に記載されていない。
もしこの時、このインシデントでの着目ポイントとして、新幹線の台車枠へも展開し、徹底的に点検し、少しでも亀裂が見つかっていれば、今回の問題も起こらなかったかもしれない。
これが冒頭に記載した安全の共有、水平展開であり、問題点を見つける『ネタ』になったかと思う。頭の隅にこの事故事例が残っていれば、点検者は適切な判断で、すぐに車両を止めたであろう。
さらには、この新幹線で無い車両の台車が、なぜ亀裂を起こしたかの原因究明がどうなったかも疑問である。
ここ数日の経済誌のオンライン版には今回の事故を受けて色々と指摘がなされている。
過去製造に係わった立場から見ると、過去の事例を学び、知見をたくさん持ち、寸時に思い起こせる事が重要であり、このためには『安全マインド』を高める必要があるかと思われるが、これが欠けてきている気もしている。
この懐をたくさん有していれば、『危険は危険』と見抜く目が養われるが、今回の川崎重工や、当事者であるJRもこの意識改革には程遠いような気がする。
昔の鉄道マンが言っていた『列車は転覆させてはならない』。このための線路の保守点検や車両点検。さらには運行での指示の徹底など、今一度鉄道マンとして考えてほしい。
このためにも、今一度、情報の水平展開、共有を行い『安全運行』を担保してほしい。
あわせて、先のブログで報道についても少し触れたが、今PRESIDENTの記事でも、報道がもっと『安全確保』をアピールすべきと書かれており、国やJRへ忖度する事が無い様にしてほしい。
1000人もの犠牲者を出さないため、真の安全を考えるのであれば、新幹線『一斉点検で
3日間運転休止』なども必要なのかもしれない。
インシデントは重大事故の予兆であり、軽微なものを無視すると、いずれ大きな事故へつながる。この時『想定外でした』との言い訳にはならないと思う。
<<記事のメモ>>
東洋経済オンライン(2018/3/5)
『「のぞみ」台車亀裂、2つの原因は"人災"だった 製造、運行管理、得意の「現場力」でミス続発』
★事故原因の究明と共に意思疎通の不十分さについて言及している
『コミュニケーションギャップは至る所に生じる。川重の台車製造ミスにしても、班長の独断が直接の原因かもしれないが、それをチェックする仕組みがまったくなかったのは問題だ。意思疎通をおろそかにするとどんな事態が起きるか。家庭や職場でも同様のことは起こりうる。決してひとごとでは済まされない。』
PRESIDENT Online 新聞各紙を読み比べる
『新幹線台車亀裂と日航機事故にある共通点「現場判断」で設計が無視された』
政治・社会 (2018.3.7)
★記事抜粋
『事故は想定外のところで起きる。
運行しながら台車を交換していくやり方で本当に大丈夫なのか。』
鋼材の厚さが基準未満の川崎重工業製の台車
⇒、JR西、東海で合わせて約150台
運行中、何かの拍子で亀裂が生じ、それが一気に大きな亀裂になる
危険性はないのだろうか。
乗車率100%だと、車両の型にもよるが、乗客数は軽く1000人を超える。
1000人以上の死者が出る大惨事が起きる危険性がある。
新聞各紙の社説も台車の削りすぎの問題を一斉に取り上げた。
しかしどの社説も追及が甘い。
問題の台車を装備したままの車両を運行している
『日航機事故にある共通点「現場判断」で設計が無視』
日航ジャンボ機事故の原因は、修理ミスだった。
なぜ指示通りに作業が行われなかったのか
修理を担当した米ボーイング社の修理チームは、損傷した圧力隔壁の下半分を交換した際、指示書通りの修理をしないで2枚に切った継ぎ板を使った。
ボ社は修理ミスを認めている。しかしなぜ強度が弱まるような修理を行ったのか。これについてボ社は一切、説明していない。
1987年に公表された運輸省(当時)事故調査委員会の報告書は、事故原因を「ボ社の不適切な修理ミスに起因する」としているものの、その修理ミスがなぜ、起きたかには触れていない。
今回の新幹線の台車枠は、前述したように設計を無視して現場の判断で勝手に削られた。現場がマニュアル通りに作業しなかった。ここが日航ジャンボ機墜落事故と共通している。
この共通点にも全国紙の社説は一行も触れていない。
かつて10年以上にわたって社説を書いてきた1人の新聞記者としてとても残念だ。
だが、新幹線の台車枠の削り過ぎの問題については、どうしてあそこまで現場が勝手に判断したかを徹底的に追及することはできる。
現在、国の運輸安全委員会が新幹線初の重大インシデントとし、調査を進めている。その調査の先には、川崎重工業という大会社の組織的問題が見えてくるはずだ。