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ちまちま中間手続34

2024-12-22 21:29:27 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続34

拒絶理由 進歩性
 引用文献1に記載の発明において、周壁2の形状を本願発明の実施例のような形状とすることは、水槽の意匠性等を考慮して当業者が適宜なし得る設計的事項である。

意見書
 引用文献1の水槽施設では、水槽本体に対して外方に突出して付属水槽が付設されており、この点で引用文献1の水槽施設は「水槽本体(1)の側壁(2)の下部に開口(5)が形成され、開口(5)の内側に槽内部と開口(5)を連通する連通路(6)が下向きに設けられた」本願発明の水槽とは異なっている。 
 観賞用水槽において、引用文献1の水槽施設のように水槽前面に突状物がある場合、この突状物は、子供や身障者等の通行、水槽への手の挿入時に障害となる。また、受皿が突出していることにより受皿が破損し易い構造になっており、受皿が破損した場合、水槽内の水が外部へ流出することになり、水槽が大型であれば、大事故にもつながりかねない。本願発明では、水槽の外側に突出する構造を有していないので、引用文献1の水槽施設で起こり得る問題点および危険が生じることがない。 
 引用文献1の水槽施設には、本願発明の「循環管(8)」が設けられていない。本願発明および引用文献1の水槽は共に気密水槽である。水槽内で生物が生息するためには溶存酸素が必要であると共に、水槽水の浄化を行うことが必要であり、通常の気密水槽では、循環または掛け流しによって水槽水の入れ替えを行っている。本願発明および引用文献1の水槽では、吸引装置により水槽本体内を減圧しているので、溶存酸素が存在しにくくなっており、通常の気密水槽の場合よりも本願発明および引用文献1の水槽のほうが水槽内の水の入れ替えを行う必要性がより強いにも拘わらず、引用文献1の水槽では本願発明のような「循環管(8)」が設けられておらず、引用文献1の水槽は、魚等の生物を生存させることができないか、または、生存させ得る生物種が限定されるものである。 
 また、本願発明のように、循環管(8)により「水槽本体(1)内の水を連通路(6)からオーバーフロー水として抜き出し濾過後に水槽本体(1)の上部へ戻す」ようにしたことは当業者が適宜なし得るような簡単なことではない。その理由を以下に説明する。 
 通常、気密水槽内の水を入れ替える場合、汚染物が水槽下部に沈降することを考慮すれば、水槽の下部に廃水管等を設けてここから水槽内の水を抜き出し、その後、ろ過等の必 要な処理を行った後、水槽上部に戻す循環経路を形成するのが最も適切である。 
 しかしながら、水槽内の水は水槽内の水量に応じて水圧が異なり、すなわち、水槽の下部にいくほど水圧が高くなる。したがって、水槽の下部において水を抜き出す場合には、水圧に抗する圧力を水槽側に負荷しながらこの圧力を適宜制御しながら水を抜き出す、排出される水圧に耐え得る強度のろ過装置等を用意する等の必要がある。また、その反面、処理後の水を水槽に戻す場合には、水槽上部にまで汲み上げる必要がありそのために大きなエネルギーを要していた。このような困難な問題は、水槽の規模が大型になるほどまた水槽内の水量の変動が大きいほど大きくなる。 
 これに対して、本願発明では、水槽上部から吸引装置で水槽を減圧することによって、水槽の下部の開口(5)と水槽内部とを連通する連通路(6)に水面を形成するようにし、連通路(6)のオーバーフロー水を循環管(8)に抜き出すようにしたものであるため、水槽下部の大きな水圧についての問題を生じることがなく、また、減圧状態になっている水槽上部に処理後の水を戻すものであるので、水槽上部に水を汲み上げるためのエネルギーを必要としないか、または、そのようなエネルギーを軽減することができるものである。 
 このような効果は、本願発明のような構成を有していない引用文献1の水槽に基づいて想到することはできない。 
 したがって、本願発明は、引用文献1の記載から容易に発明をすることができたものではないので、本願発明は、進歩性を有する。

特許査定

「本願発明の実施例のような形状」、「水槽の意匠性等を考慮して当業者が適宜なし得る」等、かなり変則的な拒絶理由だな、と思いながら対処した。その分、いつもより余裕があったことも事実。

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