KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

2016GWその2・丹沢継続遡行

2016年05月03日 | 沢登り

日程:2016年5月2日(月)~3日(祝)朝発一泊二日
行程:大倉-水無川本谷-塔ノ岳-オバケ沢(下降)-四町四反ノ沢-丹沢山-大滝沢(下降)-原小屋沢-蛭ヶ岳-檜洞丸-西丹沢
天候:一日目、二日目(午後
行動:単独・ビバーク
参考:「丹沢の谷110ルート」1995年・山と渓谷社

 
 もう二十年以上も前からいつかやろうと温めてきた計画。
 先日の上越・奥利根縦走が消化不良のまま敗退してしまったので、ちょうどいい機会だ。
 
 地図で確認してもらえばわかるが、今回のプランは表丹沢の大倉を起点に沢と尾根を繋いで西丹沢へ抜けるもの。
 昔の人は穂高の継続登攀を「パチンコ」と呼んだが、これは云わば丹沢の「パチンコ」遡行である。
 
 本日は連休狭間の平日だが、それでも渋沢駅前の登山者の姿は多い。大倉行きのバス停も一台では乗り切らないほど長蛇の列だ。
 しかし、沢屋らしきメットを持ったのは自分一人。今は沢登りも完全なマニアックな部類なのだろうか。
 それにしてもみんな綺麗でオシャレな恰好をしているな。
(大倉尾根を登るのにスポルティバのトランゴ・キューブなど
要らんだろ。オレにくれ!)

  
 朝から長蛇の列の渋沢バス停(左)と登山口の大倉(右)
 
 以下、ステージに分けてまとめてみた。
 
1st Stage 水無川本谷遡行
・大倉から戸沢林道へ入るのは自分一人。久しぶりに歩く林道は随分凸凹が無くなり、普通の2WD車で十分走れそうだ。
・林道途中の小屋にはヒル除けの塩が無料提供されていた。ありがたいことです。
・入渓するまでのアプローチとして1時間と読んでいたが30分ぐらいオーバー。途中の小屋を過ぎてから水無本谷F1までが意外とかかる。
・F1はいつものように左から。鎖は使わず、水をどっぷり浴びない程度のラインを。擦り減ったフェルトの感触を確認しつつ登る。
・F4は右壁に残置のハーケンとスリングがある。それほど高さはないが、少し立っているので足を滑らさないようA0で突破。
・F5は少々高さがあり、右側に太い鎖が設置されている。今回ロープは無しだが軽量ハーネスは持ってきたので安全のため、ヴィア・フェラータ方式で登る。
・ここでハタと気付いたがF2~F4間でハーネスに着けていたプロトレックを落としてしまった。
 ヤフオクで8,OOO円で買った中古で、もう傷だらけだし、
年数的にも減価償却済みだからそれほど未練は無いけれど・・・ちょっと悲しい。
・書策新道を横切り、ゴーロを進みF6のCS滝。ここは適当に巻く。
・F8(20m)はけっこう立っている。岩もどれほどしっかりしているかわからないので当然巻く。でもタケシ師匠なら登りそう。
・巻き道は右手に上がり、再びガレルンゼを跨いで戻るようにトラロープがFIXされている。整備する遭対協の皆さんも大変だろう。
・詰めを誤り、F9へ行く前に一本手前の枝沢に入ってしまう。このため表尾根に出るまでが少々長く苦労する。
・塔ノ岳へは自分が設定した関門時刻の正午を少しオーバー。200人ほどがいる山頂で一息付くつもりもなく、行動食も取らずに次のステージへ。

   F1(10m)とF4(7m)

   F5(13m)

  

  
 小振りの桜のような?梅のような?花があちこちで満開(左)。賑わう塔ノ岳山頂(右)
 
2nd Stage オバケ沢下降
・塔ノ岳から丹沢山方面へ少し進んだ最初の鞍部から適当に右手の斜面を降りる。
・斜面はそこそこ急でザレているが、小尾根に鹿道が続いていてこれを伝ってしばらく下っていく。
・やがて下降不能の涸滝にぶつかる。自分が下っていたのはオバケ沢の右俣のようで、ここからトラバースして下りやすい左俣へ移動。
・さらにしばらく下っていくとクライムダウンが厳しそうな滝、そしてゴルジュに下降を遮られる。
 オバケ沢は2008年10月に自分でも一度下降しているのだが、そんなに強烈な印象が無かった。
 しかし今回、左岸の急な斜面を大高巻きで下ったが、けっこう悪い!
 周辺は植林エリアで林業の人たちも入っているようだが、崩れやすい斜面を一歩滑ったら大滑落といったヒリヒリと緊張する下降が続く。
・下降は2時間と踏んでいたが、予想以上に長く3時間以上かかってしまう。・・・疲れた。
 
  
 オバケ沢は最初は歩きにくいゴーロが続く(左)。クライムダウンできない滝は大高巻きでやり過ごす(右)

  
 下部にはナメ滝もあり(左)。ようやく出合の林道終点に合流(右)
 
3rd Stage 四町四反ノ沢遡行
・四町四反ノ沢はキュウハ沢の枝沢的存在。キュウハは以前登っているので今回はまだ登っていないこちらをチョイス。オバケ沢出合とキュウハ沢出合はすぐ隣りだ。
・4つの堰堤を越し、まずはキュウハのゴルジュ帯を進む。泥の詰まったフェルトがメチャクチャ滑り、苦戦しながらも慎重に越えていく。
・ゴルジュの最後は左から大きく巻く。すると左手から入ってくる四町四反ノ沢に合流。
・トポにある最初の二俣はよくわからないまま通過。
・トポでは「きれいなナメが続く」とか「かつてはすばらしいゴルジュがあった」などと書かれているが、そのような趣は今は無い。
 曇っているせいもあるが、倒木も多く、割と平凡な様相。まぁ、このトポも既に20年以上も前のもので、その間何度も台風が通過しているわけだからしかたないか。
・トポにある二つの手前にもう一つ左手に大きなCSの涸沢あり。
・上部のナメもあまり大したものではない。全体的には明るく登りやすい沢だが、トポにある「ナメが美しい、とっておきの沢」というのは2016年現在、やや大袈裟。

  
 キュウハ沢最初のミニゴルジュ(左)。四町四反ノ沢F1?(右)

  
 F4・二段10m?(左)と上部のナメ滝(右)
 
 結局、時間が押して残業になってしまい、ヘッデンを付けて丹沢山を通過。
 丹沢は稜線上はテント、キャンプ禁止なので、適当な所でマットとシュラフだけでビバーク。
 本当は丹沢山の「みやま山荘」に泊まるつもりだったのだが、今回は事前に電話を入れた時点で満員で断わられてしまった。
 植生も痛めていないし、ゴミも火も不始末はしていないのでビバークは許してもらおう。

  二日目。ブナと日の出。
 
4th Stage 大滝沢下降
・下降点は丹沢山から蛭ヶ岳寄りに少し下りた早戸川乗越という名の最低鞍部から。いくつか下降点があるが、昨日のオバケ沢より緩やかで下りやすい。
・しばらくは平凡なゴーロ。傾斜も比較的緩く、不安定なザレも無く、快適に下っていける。ここを下降ルートとして選んだのは正解。
・やがて全体の2/3くらい下った辺りで「早戸の大滝」に遭遇。まずは上の落口から観察してみる。高度感が半端ない。
 トポでは落差50mとあるが、実際には下にも三段くらい前衛の小滝があるので、上から見ると100mぐらいの高度差を感じる。
・右岸にFIXされたトラロープを伝って下降していく。途中「タキツボ新道」と書かれた方へ下り、下の鑑滝ポイントへ。
 遠巻きだが、それでも凄い迫力だ!水勢も豪快で中間部は深くえぐれて洞窟状になって水しぶきが渦を巻いている。
 かつてはここを登った記録があったというから驚きだ。西沢本棚を登る人はいても、今ここを登ろうとする人はまずいないだろう。
・大滝を過ぎ、下流域はテープがあったり、徒渉ポイントにはケルンが積んであったりして、明るければわかりやすい。
 そのまま下って早戸川本流が合流する雷平に到着。

  
  大滝沢は下降しやすい穏やかな渓相(左)。早戸大滝の落口に立ってみる。(右)

  
  大滝の右岸にはトラロ-プで巻き道が整備されている(左)。樹間越しに見る早戸大滝(右)

 
 
5th Stage 原小屋沢遡行
・二年ほど前に行っているので、記憶は比較的新鮮。前回は出だしからなるべく積極的に水流の中を攻めたが、巨岩越えが多くまともに取り合っていたらとても時間がかかる。
 時間短縮のため最初の「雷滝」まで右岸、左岸の踏み跡を繋いで飛ばしていく。要所要所にテープ有り。
・「雷滝」到着。水量豊富で相変わらず見事だ。左から大きく巻き、しばらくナメと小滝を進んでいく。
・やがて顕著な二俣。前回は騙されて右手のカサギ沢へしばらく進んでしまったが、さすがに今回は騙されない。
 トポでは原小屋沢はまっすぐ描かれているが、実際は次の「バケモノ滝」は沢が直角に右に曲がってすぐの所にある。流れを図にするとちょうどアルファベットの「F」の字のようになっている。
・バケモノ滝は前回同様、左の斜面から高巻く。
・続くF5三段は前回の記録では「登れそう」などと書いたが今回改めて見ると、とても突っ込む気になれず無理。
 やはり5月始めと8月では水量も多少違うのか。すぐさま巻き決定。
・F5の巻きは右側の斜面から。トポでは最後15mの懸垂下降で沢床に降りるとあるが、今回ロープは持ってきていない。
 前回何とかしたんだからとクライムダウンで下りるが、崩れやすい斜面を頼り無い木の根を伝ってジリジリと下っていくのはけっこう神経を使った。
 以前はどうしたんだろうと後で確認してみたら左側から巻いたようだ。今日見たところ、とても巻けそうになかったが・・・うーん不思議だ。
・その後、手軽に登れるナメ滝がいくつか続く。快適!
・そしてクライマックス「ガータゴヤの滝」。前回はど真ん中のラインを一人で直登したが・・・今回は絶対無理!
 水量の違いとか荷物の重さなどもあるが、よくあそこ登れたなと我ながら呆れてしまった。
・ガータゴヤは左から巻く。トポには「ルンゼ」とあるが、どちらかというと草付スラブ。古くて太い鎖がしつらえてある。
・最後の滝も細い鎖が左側にセットされているので、それを伝ってトラバース。その後はヒタヒタした穏やか細流がけっこうしつこく続く。
・トポでは水涸れをそのまま真っ直ぐ突き上げると稜線にぶつかるように書いてあるが、実際には水が涸れてから沢筋は左手の稜線とほぼ並行して続いている。
 帰路を蛭ヶ岳方面に採るなら左手斜面が20mほど上に見えたらさっさと上がってしまった方が楽。運が良ければ登山者の姿も発見できるはず。

  
 
原小屋沢F2「雷滝」15m(左)とF4「バケモノ滝」10m(右)

  
 F5三段20m(左)と左岸巻き道の下降路(トポで懸垂15mとなっている部分)

  F7「ガータゴヤの滝」30m

  
 ガータゴヤの滝を巻くには左側の草付スラブから(左)。その上に最後の「鎖のある滝」(右)

 
6st Stage 蛭ヶ岳-檜洞丸-西丹沢
・いよいよ最終ラウンド。昨日からの疲れもあり、ラストがとてもキツかった。
・昨日、時計を失くしてしまったので、蛭ヶ岳山頂にいた親子連れに聞くと西丹沢最終バスまで残り時間4時間50分。地図のコースタイムも同時間!
 もう少し若い時なら余裕だが、今の状態でははたしてどうか。期せずして最後はタイムトライアルとなる。(泣)
・左膝に爆弾を抱えている状態だが、下りはストックを使いながらも小走りでこなす。
 これで時間に貯金ができた筈だが、午後から吹き始めた強風でたちまち残りの体力を奪われ、ヘロヘロになって歩き続ける。
・最後のピーク、檜洞丸は疲れ切った老体にはまるで巨大な壁のように立ち塞がり、思わず気持ちが負けそうになった。
・檜洞丸を過ぎツツジ新道はひたすら下りだが、ゴーラ沢出合に降りてから西丹沢のバス停までの距離が意地悪く長い!
・ここまで来たら足などまたどうなってもいいぐらいの覚悟で飛ばす。ヘッデンも点けず沢靴のままゴール!時間は終バス5分前だった。
 
 「燃えた・・・燃え尽きたよ、おっつゃん。」・・・気持ちとしてはまさにそんな感じだ。

  

  
 
 こうして長年の宿題は終わった。両日とも行動時間はそれぞれ12時間オーバー。
 できるならもっと若い元気な時にトライすれば良かった。それぐらいハードだった。

 今回は表丹沢から西丹沢まで沢を5本、主要ピークを4つ繋ぐルートとしたが、丹沢は尾根と沢がコンパクトにまとまっているので、他にもいろいろ面白いラインが描けるだろう。
 物好きな人はぜひチャレンジしてほしい。(もちろん自己責任でお願いしますよ。)


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (juqcho)
2016-05-10 00:31:21
とても真似できん...。お疲れ様でした。
返信する
Unknown (現場監督)
2016-05-11 06:24:35
一応予定どおりの行程でしたが、思ったより時間がかかりました。もう歳ですね。(>_<)
ただ完全ではないものの今回のでようやく膝痛の呪縛から解放された感じがします。

数えてみたら今回の沢でちょうど丹沢は50本目でした。(延べでは70本ぐらいかな)






返信する
Unknown (Unknown)
2016-06-17 20:53:51
現場監督さんこんばんは。
膝が本調子ではないのにも関わらず、一人でもこのようなハードなことができてしまうという事に現場監督さんのすごさを感じました。現場監督さん恐るべしです。
参りました。(笑)
返信する
Unknown (現場監督)
2016-07-02 08:53:26
コメントありがとうございます。
今回の計画は以前からやろうと思っていたものでしたが、終わってみるとそれほど達成感はなかったですね。
今の自分には体力的にはハードでしたが、通い慣れた丹沢であまり新鮮味がなかったからかもしれません。
そのうち落ち着いたら、東北の方のゆるやかな沢をのんびりといくつか繋ぐ沢旅がしたいです。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。