新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

黄金風景

2012年09月18日 | 読書
 勉強がわるくないのだ。勉強の自負がわるいのだ。

 とある掲示板の不毛な争いを眺めつつ、太宰の言葉を思いだした。「勉強して、勉強して、勉強しろ」といったレーニンは、太宰いわく「含羞の人」だったそうだ。含羞どころか、恥も外聞もない。

 太宰はあの人たちよりも、はるかに左翼文献を深く読みこんでいる。本人もいうように唯物史観は血肉化さえされていたのではないだろうか。「文学者として近衛内閣に要望す」(『新潮』1940・9)というアンケートでは、ただ一言「唯物史観の徹底検討」と答えた反時代精神と気骨の持ち主でもある。

 少年時代にいじめ抜いたドジっ子メイドと再会する『黄金風景』は、主人と奴隷ならぬマスターとメイドの弁証法というべきか。この作品の結語には、「君と世界との戦いでは世界に支援せよ」というカフカと同じまなざしを感じる。

 「負けた。これは、いいことだ。そうなければ、いけないのだ。かれらの勝利は、また私のあすの出発にも、光を与える。」(『黄金風景』)


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