頭は猿、胴は狸、尾は蛇、
手足は虎、声はトラツグミ
空の彼方
奈落の淵から突然に出現
灰の空がピカリと光り
ギロロギロロと唸りが響く
沈み込む不安の色香
それは妖気が孕んでいる
ギャロロ雄叫び
内の奥を疼かせる
淑やかに煙にまく
猛りは揺れ動き
無尽の風が吹いている
あれはなんだとクエスチョン
獣かあの世か
咆哮は多重に木霊する
ついぞの祈りはどこへやら
雫がすぅっと頬を伝う
山鳴り
海鳴り
雷を引き連れ
妖獣 ヌエ
はどめがきかずてんてこまい
君に恋におちたのは何回目だったかな
君はたくさんの恋をして恋愛をして
君からもらう恋の話は
新鮮だけど寂しい
寂しくて心がしおれそうになる
枯れるというより崩れてしまう
恋愛上手の君だから僕の心はわかっている
ねえ僕に水分を与えてよ
それがだめならこの恋に終止符を
むちゃくちゃな遊びは君の体を転げること
落ち着いてなんかいられない
じっとしてなんかいられないから
夢中になって全てを転がっていく
遊び疲れたら少し休んで
またころころぐるぐる回りだすんだ
何回も続いた回転で
自分もぐるぐるふらふらになるけれど
転がることは大切な遊び
複雑な君のことだから
たまに迷って行き止まることもしばしば
でもそこが楽しいのさ
とっておきのスペシャルの遊び
君は知っているのかな
無我夢中の転がりを
君は知っていないかな
僕の転がる美しさを
ああ君の体を転げ回りたい
丸のように膨らんで萎んで
君の中の全て
宇宙のような時の中で
「明るい絵を描くんだろうね」
そう言われた事にためらいと情熱と
はにかんだ笑顔の裏の健やかな嘘
虚無感はこの手で拭い捨て
旅立ちの時は今だと時の声を上げ
炎を燃やし
大陸の隅から隅を股にかける
遥か上空を鳶が飛び
鋭い眼光が心の揺り根を跳ね上げる
勇み足で蹴り上げて
気付かぬうちに何かを踏み付け
知らぬ内にその慟哭が魂を包む
旅立ちの過ち
時は止まることなく流れていき
後戻りなど出来ず
駆られる思考が過去に囚われる
がんじがらめの言葉の羅列
時折聞こえる怪しい悲鳴
つながる恐さが優しさを生み
つながる妄想が悪を呼ぶ
偽りだらけの自身の命、世界観に
美しい花が香りと色彩を捧げる
どこまでも続く空が光と想像を運ぶ
どこまでも続く大地が立つこと
生きることを教える
なでられながら もつれながら
それでも僕は君が好き
しとしとと降り続く雨の線
周りには可憐に咲く春桜
二つの幻想的な色合いと淡い切なさ
散ることの早い淡いピンクに
上を見る人も下を見る人も立ち止まる
現実と夢の間にいるような
憂鬱と好奇心が交錯する
時が止まったままの目と耳の大きさ
子供の時分と大人の時分
二つの世界がシンクロして
ぎこちない物語の人物になっていく
雨の匂いは夢の夢
桜の香りは純白の夢
散っていく一片の花びらは
崩れていった想いになる
気が付けば五歩前に想い人
微笑みの花びらとピンクに染まった頬
儚さのある風景に壊れかけた思いが蘇り
雨は降ることを忘れる
雨上がりの差し込む光と可憐桜
深く想いの傷を光るピンクでまぶし
氷った心を潤し溶かしていく
さらに目も開けられないほどの
眩しい光が一面に広がり
大地にまでも光でいっぱいになる
やがて全てが光になる
光は紫も連れてくる