聞いててね
花の名前を
ひとつずつ
となえていくよ
チューリップから
目をひらく
時代をうつし
今がうつり
ふれていいよ
声を聞かせて
「白の闇」
ジョゼ・サラマーゴ 著
雨沢泰 訳
ある日突然男の目が見えなくなる。
そこから物語は始まる。
黒い闇ではなく、白い闇。
その病はやがて広がっていく。
ひとりふたりやがて多数へ。
広がり始めた病を抑えるため隔離されるのだが。
名前を持たない、けれどある、いる人々の、
そのなかでひとり見えるただ一人の女性を主として、
人としての尊厳を抱えるものとは、こととは。
食べて排泄する、また三大欲求。
罪や共存の精神。
白の闇は何を語り、語るのだろうか。
白は美しい
青は美しい
緑は美しい
黄も橙も紫も黒も美しい
ただ赤だけは憧れる
みんなスキと
キスをしたけれど
それは犬の遠吠えに似ていた
気がした