駄菓子屋通いより少し前、もう少し小さい頃だと思う。私は母の買い物によくついて行った。毎日「お使いカゴ」を抱え、主婦が買い物に出るのが午後の３時頃。小さな商店はにわかに活気付く。
「きゅうり、ちょうだい」「あいよー、持ってきなー」
母がお金を差し出すと、八百屋の天井から所々、ゴムで吊り下げられた竹の籠をぐいーんと引っ張って、受け取った金を入れる。じゃらじゃらっとかき回しておつりを手渡すと、籠はボヨヨーンとまた元の位置で揺れた。おばちゃんの紺色の大きな前掛けの前で、きゅうりは新聞紙にくるくるっと包まれ、お使いカゴに投げ込まれる。
「奥さん、大根のいいのが入ってるよ。」「今日はいいわ。」「あいよ、また来てねー。」「お嬢ちゃんいくつ？」照れてる暇はない。トントンと流れるようにおばちゃんの口から飛び出してくる。やっと、年を言おうと顔をあげたら、「あ、奥さんいらっしゃーい。今日は何にする？」大声が行き交う元気な店だった。
家からは川の土手を少し歩く。片側は崖がそそり立つ土手の道。隙間だらけで所どころに木の節穴が小さく開いた橋を渡る。20cmくらいの粗末な縁があるだけで、欄干もないような古い板の橋。穴から下を覗き見れば、いつも川藻が揺れていた。
橋を渡り、細い急坂を登って角を曲がると小さな写真館。もう少し行くと和菓子屋、薬屋、魚屋、八百屋、肉屋と並んでいた。店屋の他は古い住宅街だったから、静かな細い路地で歩きやすい。私はきっと弾むように歩いていただろう。
環七沿いの小さな町。おそらくこの大きな道路に分断されたであろう小さな町だったから、あっという間に町は掻き消えた。八百屋が店を閉めたのはそれから５～６年もしないうちだったのではないだろうか。しばらく空き家だったが、気付くとセブンイレブンに変わっていた。
長年賑わった界隈の最後の時代を私は見ていたのかもしれない。
◆ ◆ ◆
Lilac-garden 駄菓子屋世代のストーリー より２回目 （写真はみろく公園のクリスマスローズ）
またも名言！とっても嬉しいお言葉で、ありがとうございました。
ボヨヨーンのカゴ、覚えてますか？懐かしいですよね。
ふと気付くと今日の記事、全部子ども目線。自分でもそれがおかしいです。
大人でいたら、それには注目できなかったかもしれませんね。
あ！張り合うわけじゃあないけど、ハムありましたよ！
何故かキャベツにハムが１枚という晩ご飯とか、もちろん魚肉ソーセージがほとんどでしたけどね。張り合っても仕方ない。。（笑）
魚肉ソーセージね、今でも使いますよ。ベビーハム！キャベツと炒めるとおいしいんです。ああ、我が家の経済状態バレバレかもだ。
kiriさん、ありがとう。クリスマスローズ…下を向いてる私にちょうどいいかなあと思ったの。エヘ。。
この子、一人ぼっちで咲いていてね、我ながらまた…お気に入り№です。
あは。「またかよ！」と怒られそうね。。。
来ていただけて大変感激です。ありがとうございます。
もうすっかり隠れ「風景倉庫」さんファンでしたから
もちろん、みろく公園に行かれた事も知っていましたよ。
木蓮がまだ早かったとかでしたね。私が行った時、木蓮は遅かったです。
アカペラのクリスマスソングご存知でしたか？
おー。。この曲集はドラマチックでズシンと来ていいですよねー。
何故かクリスマスにしか聴く気は起きませんけど。。
キャンドルの灯りで…goavalonさんももう一度です！
私は写真で勝負できなくて、あれこれ手を加えているものが多いです。
レコード並べて見た目勝負とか。。
早くドドーンと（もう載せてますが）胸張って載せてみたいものです。
私の青春時代・・・あれこれ出しているのでバレバレですね。
レコードの趣味は旦那さんのものもかなりありますよ。私も知らない。（笑）
ちなみにgoavalonさんは今のところまったくの謎です。
レコード特集に目がいくあたり、、、結構近い世代でしょうか。
嬉しくてあれこれ書いてしまいました。お越しくださってどうもありがとうございました。
こちらこそまたよろしくお願いします。
私もまったく思い出さなかった事がすらすらと出てきて
あら？これじゃ長すぎる・・・削らなくちゃと思うのだから、すごーく不思議な気がしました。
radaさんはもう少し後の時代よね。でも、今よりは昔。
その頃はどうなっていたのか知りたいなあと思いますよ。
「お使いかご」ねえ。こればっかしはうちの母の口ぐせかもしれないなあ。
電話してみたらやっぱり「お使いかご」って言ったもの。
変なとこ勝手に変えるLilacママさんです。
カゴ…昔のように持って歩けば省エネにもいい事だらけのようだけど、
想像してみるとすごく不便よね。人間て戻るのは難しい事ですね。
poccoriさんも、同じ空を見て、同じ匂いの中で育ったんですね。
＞いない人ばかり・・・
私の記憶でも、父はもういない人。やはりいなくなった人も多く、そうやってこれからも通り過ぎていくのでしょうけど、
思い出の中ではいつも元気に笑っています。それは……温かく居心地のよいものですよね。
はは。「万円」は必ずつけますね。
私、関西にはコメディアンとやくざしかいないと…つい思ってしまいます。あはは。
ちなみに関東では「おっさん」ではなく「おじさん」もしくは「おじちゃん」でしたが。。。
飴一つ買うのにすっとこんな温かい言葉をかけてもらいましたね。
「どうもありがとうございました」という、商店の儀礼的な言葉がなくとも、成り立っていたのかもしれないですね。
ふと気付くと今日の私の話の中にも「ありがとう」はないです。
忘れているのか、子どもの心にはそれが残らなかったのか、よくわかりませんが、
それで皆が満足していたのかもしれませんね。不思議です。
何せ内気なもんで。。って冗談みたいだけど、結構下向いて照れちゃう子どもでしたね。
大阪などでは、今も駄菓子屋さんを見かけるでしょう？
yuuさんも市場で元気にお買い物をして
さて、晩ご飯は○○にするぞ～と張り切っていた頃でしょうか。
市場の閑散とした様子は、暗くて物悲しいものですね。
旅行に出てコンビニがないので困る時があります。
懐かしんで思い出してるけど、今もそういう町に住んでいらっしゃる方もいらっしゃるのでしょう。
いい時代だったとは思いますが、今となってはその暮らしを不便に感じるかもしれません。
甘すぎない文章ですか？意識してはいませんでしたが、感想が嬉しいです。
これで良かったのだと少し安心しました。
マロニエのこみち…。さんがきっかけを与えてくださって、
書いてみようと思ったら、すっかり忘れていた記憶が少しずつ見えてきました。
自分でも意外です。書こうと思って良かったと思います。
どんどん・・・は無理そうですよ。
マロニエのこみち・・・。さんはどこからそんなに湧いてくるんでしょう。
今さらながら、それは大変な事なのだなあと感心しています。
こちらこそ、いつもありがとうございます。
あんなふうに家族が寄り添い、質素に、でも楽しく過ごした時代でしたね。
旦那さんは紺屋幸兵衛さんより二つ上。私は紺屋幸兵衛さんより二つ下。
同世代ですね！誰もがお察しだと思うので、もうばらしました！
買い物かごは編みこみでしたね。赤だったかなあ。お財布は赤のがま口でした。
ああ、落花生でしたよね。「おい、落花生はないのか？」父の言葉が蘇りました。
父はもういませんので、紺屋幸兵衛さんのお話からこの一言を思い出せて嬉しかったです。
何だか現代よりは声が飛び交っていたような気がしませんか。
スーパーは無言でいても、まったく事足りる。
きゅうり１本買うにも声が必要だったのですからね。
便利になっても、少し寂しくなったのかでしょうか。
でもそれは、あの「膝小僧」を思い返したり、「ネタ切れなどあるわけない」とのお言葉だったりなのですよ。
皆さんとの日々の記事やおしゃべりが私に大きなきっかけを与えてくれます。
しかし、、学もなく世間も非常に狭い私ですから・・・そんなに続かないのではと不安です。。。
頑張ってみます。
リズミカルな話しに幼い頃の記憶がよみがえります。ボヨヨ～ンのかご、市場の活気そのまんまです。細かい記憶は、皆無です。・・・
ただ、お肉やさんの四角い魚肉ソーセ～ジだけがはっきりと・・・ハムは、全く記憶がないのよね。（我が家の経済状態でした。）もう一度、食べて見たい味です。
旅行の時、何十年かぶりに前に昔住んでいた所を通ったので、よく行ったお菓子屋（計り売りしてくれた）さんはと、車の窓から捜しましたが全くわかりませんでした。小高い丘や畑がなくなり町になっていて全く昔の面影は、ありませんでした。
たった一本のクリスマスロ～ズ？葉っぱもないのね。でも茶色のバックとで、話しの雰囲気が出てていいよね。
そして、気になったのが、みろく公園のクリスマスローズ。実は、先日我輩もみろく公園へ行ってました。そしてクリスマスローズも撮りました。でも、あまり出来がよくないのでブログへＵＰの予定は、ないですが・・・
記事とは、関係ないですが、色々拝見しているとレコード特集に驚き。
アカペラのクリスマスソング！
わぉ～このＣＤを我輩も持ってます。
イイですよね。キャンドルの灯りでクリスマスケーキをこのＣＤ聞きながら食べると一味違ってきます。
（もう何年もしてないですが・・・）
その他、懐かしいアルバムのジャケットの写真で懐かしい時代にタイムスリップしてしまいました。
（知らないのも多いですが・・・）
Lilacさんが、過ごした青春時代もなんとなく分かる気がしましたよ。
楽しませて頂きありがとうございます。
また、たまにお邪魔させて頂きたいと思いますので、よろしく。
こうゆう、小さい頃の感性が今を形成するんでしょうね。
だから、私の文章はハチャメチャ・・＾＾；
お使いカゴって言ってた？私は買い物かご。今買い物かごって聞くと、ネットショッピングのカゴ？って思っちゃうところがなんとも、だけど・・(^^;)
でも、子どものときはカゴを持って買い物行ってたな～。私がじゃなくて、母やばーちゃんがなんだけど。。その当時は集合レジじゃなかったのかな？ひとつひとつお店で買ってたのかな？・・・忘れてるし・・・
エコ的にもカゴ復活なるか？かさばるからムリか・・(^^;)
なつかしいですね、、、、私の思い出に登場するのは、今はもういない人ばかり、、、だからなおさらでしょうか。
「おお。権左右衛門さんとこのボンか」
「30万円！」
「うん」
「ボン金持ちやな」
「ありがとう」
「きいつけて帰りや」
こんな会話を毎日のようにしていたと思います。
古い町ですので、みなさん屋号で呼ぶので
私は権左右衛門でした。実際に権左右衛門さんは知りませんが。
また、必ず「万円」はつきましたね。やはり関西人！でもそれにいちいちリアクションしないのも関西人か。30円渡してました。この店は万屋さんでしたが、今は仕出し屋になってます。屋号は儀平。でも子供たちはゲーサンって呼んでました。懐かしいな。
ついてったかな。
それとも、お母さん早く早く、、、と引っ張った方かしら。
中内さんがダイエーを始める前は、大阪はどこの町にも公設市場のようなのがあって、乾物屋、魚屋、八百屋、履物屋、駄菓子屋、何でも集まっていたものです。
時々通り抜ける市場の中は、なんで店開いてるの?
と思うような、閑散とした状態ですね。
Lilacさん、語りべになって古い話残していかれたらよいでしょう。
ここは、コンビニもないのか、、、と言う時代ですね、今。
建ち並ぶ小さな商店、飛び交う声・・・
とっても好きな世界です
セピア色の風景が、頭の中に浮かびましたよ！
そして、主人の育った大阪の町を思い出しましたLilacさんの甘すぎない文章が素敵ですね
これからもどんどん読ませてください！
素敵な世界をありがとうございます♪
レジ袋などない時代ですから、我が家でも当然買い物かごでした。素材は分からないけど、編みこんで作ったものでしたね。
帰宅すると、まず買い物の中をさぐります。『通い帳』や財布、そして、お目当てのおやつに手が触れます。油紙（？）に入った、量り売りの落花生（ピーナッツとは言いませんでした）か、千鳥形の醤油味のおかきでした。
何もないときは、まだ買い物に行っていないということ。自転車で買い物です。ワシは荷台に乗せられました。腿に当たる荷台の鉄の痛さ、落ちないようにしっかりと抱えた母の胴のぬくもり、…思い出していくと涙が出そうです。
Lilacさんの違う一面を知りました、東京の下町情緒が溢れて、哀愁が漂っていて、最後の一行(セブンイレブンに変わっていた)が全体を引き締めました。
時々はお書きになったほうがいい、寝ぼけがなくなりました。