12月6日特定秘密保護法強行採決・成立、日本版NSCの設置、初の国家安全保障戦略の決定と安倍政権の戦争準備体制の勢いは止まりません。年明けの通常国会でも、集団的自衛権の行使解禁の表明、国家安全保障基本法案の提出、国民投票法「改正」などが目論まれ、さらに盗聴法改悪、「共謀罪」関連法案の提出なども狙われています。なかでも、通常国会で問題になるのが集団的自衛権の行使解禁の表明、国家安全保障基本法案の提出です。
集団的自衛権行使解禁については、米軍活動への支援や日米共同の軍事行動という従来からの解釈に加えて、「国益のあるところ」「日本にとって死活」などという概念を用い、かつての旧日本軍による中国・アジア侵略を想起させる帝国主義的な意図をむき出しにした解釈への変更を打ち出そうとしています。外交を軽視し武力に訴えて問題を解決する、自衛隊が世界中にある日本の利権を守るために出動するなど、およそ「平和国家」「民主国家」とは言えません。
自民党は2012年4月に「自民党憲法改正草案」発表したのに続き、同7月に国家安全保障基本法案の概要を発表しています。これは明らかに改憲草案と対を成すものであり、内容からすれば、改憲が実現できないもとで、集団的自衛権の行使と米軍への戦争協力、自衛隊の海外派兵、基本的人権の制約、国防の義務、軍事機密の保全、国益の優先等々を法律レベルで実現しようというものです。
武力攻撃事態法や国民保護法がいわば日本における戦時を想定したものであるのに対して、海外派兵時における国内統制、さらには平時からの自衛隊の強化と国内統制をめざしています。
秘密保護法に関して、デモをテロよばわりし、報道規制にまで言及した石破茂氏は、この法律の目的について「国や地方自治体、国民の責務を定め、国をあげて国家安全保障に取り組むことを明確にした」と言い切っています。
※時代に即した安保体制を石破茂安全保障調査会長に聞く(自由民主党)
https://www.jimin.jp/activity/colum/117888.html
法案概要は「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃については、その国に対する攻撃が我が国に対する攻撃とみなし、当該被害国から我が国の支援についての要請がある」場合に自衛隊を出動させることを明記し、集団的自衛権の行使について言及していますが、それだけではなく、集団的自衛権行使に伴う「国や地方自治体の責務」(第3条)なるものが定められているのが大きな特徴です。
その中で、「教育、科学技術、建設、運輸、通信その他内政の各分野において、安全保障上必要な配慮を払わなければならない」と書かれ、すなわち、産業や科学技術、土地や建物、道路、各種のインフラはもちろん、学校教育やマス・メディアにいたるまでを動員と統制の対象としているのです。教育に「安全保障上必要な配慮を払」うとはどういうことでしょうか。通信に「安全保障上必要な配慮を払」うとは何を意味するのでしょうか。教科書や学校教育の内容への介入、国防教育、領土問題などの政府見解を教えさせる、あるいは政府の政策に批判的なマスメディアへの圧力と情報統制などに違いありません。
さらには、「政治・経済及び社会の発展を図るべく、必要な内政の諸施策を講じること」もまた安全保障につながるとされています。そして「広報活動を通じ」「国民の理解を深めること」が国と地方自治体の責務とされています。「成長戦略」もアベノミクスもTPPも、メディア統制も秘密主義もすべてが安全保障のための責務となるのです。第12条には武器の輸出入が条文化され、安全保障に不可分に組み込まれています。
しかも「国の安全保障施策に協力し、我が国の安全保障の確保に寄与する」という、国民の責務さえ定められています(第4条)。
「我が国の独立と平和を守り、国益を確保する」ための安全保障が国家の最優先課題となり、国内のあらゆるものを常日頃から動員・統制する、いわば「安全保障」のための国家総動員法になってしまいかねません。
このことは、集団的自衛権の行使--これまでのように、後方支援や復旧支援、給水活動などでお茶をにごすのではなく、米軍と一緒に前線で戦闘行為に加わり、武力を行使する、正真正銘の侵略行為--のためには、単に「自衛隊」員を訓練して戦場に派遣するだけでなく、国内全体を統制下におき、秘密国家、警察国家、治安弾圧国家、すなわち戦争国家体制をつくらなければならないことを意味しているのではないでしょうか。
全国から反対の声を上げましょう。
※国家安全保障基本法案 (概要)平成24年7月4日(自由民主党)
http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-137.pdf
(ハンマー)