野田政権が尖閣諸島を国有化する方針を固めたことが、明らかとなりました。7日の各紙で大々的に報じられ、NHKニュースでもトップの扱いでした。
※首相“尖閣諸島国が購入へ交渉”(NHK)
野田政権が今、このような方針を打ち出した背景には、もちろん、石原東京都知事による尖閣購入の表明があります。都が購入するに任せれば、石原知事から「政府は中国に弱腰」と批判され続ける恐れがあります。
逆に、消費増税や原発再稼働などで、国民の批判にさらされている野田政権にとって、尖閣購入は国民の支持を得られるという思惑もあるでしょう。
民主党の前原政調会長は4月に「尖閣は国が買うべきだ」との考えを示し、自民党も5月に発表した次期衆院選の政権公約案で「尖閣諸島の国有化」を明記しています。
石原知事の尖閣購入も、ナショナリズムを「新党」の旗印にしようとの意図があるのは間違いありません。
このように政府と都知事や各政党がが競い合うように、尖閣諸島について、ナショナリズムをあおっています。ナショナリズムは、手っ取り早く国民の人気を得るための、格好のネタです。尖閣購入のための東京都への寄付が13億円を超えたというのも、それを表しています。
しかし、ナショナリズムで国内の人気を得たとしても、その先はどうするのでしょうか?
先日、ロシアのメドベージェフ首相が「北方領土」の国後島を訪問したことで、日本政府やマスコミは大騒ぎしました。では、中国から見れば、今回の石原知事や野田政権の動きはどう見えるでしょうか? やはり大騒ぎせざるを得ないでしょう。
これがエスカレートした先にあるのは、武力で領土を守る、または奪う、すなわち戦争です。
野田首相は「尖閣諸島は、国際法上も歴史的に見ても、我が国固有の領土」と言いますが、それは日本政府の立場でしかありません。「領土問題」で自国の主張に固執し、相手国の主張に一切耳を貸さないとすれば、戦争まで行きかねません。だからこそ、尖閣諸島の領有権の問題は「棚上げ」とすることで、かつて日中両政府は合意したのです。その立場に戻り、「領土問題」は平等と互恵の原則に基づき、交渉によって解決すべきです。
※シリーズ「尖閣諸島問題」をどう見るか ──歴史的経緯を中心に(リブ・イン・ピース☆9+25)
by ウナイ