少し前の話になるが、6月中旬にイギリスの北アイルランドで開かれたG8サミットでは、「タックスヘイブン」対策が主要議題の1つとなった。
タックスヘイブンについては、報道でもしばしば耳にするが、主には先進国の税収不足による財政難との関係で、語られることが多い。
今回のサミットでも、その文脈で議題となったと思われる。
しかし、このタックスヘイブンには、あまり報じられることのなかった、もっと醜い側面があることが、NEWS23(TBS系)によって報じられた。
その内容を以下に紹介する。
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アフリカのザンビアで砂糖を生産するザンビアシュガー社は、食品や衣料を扱うイギリスの巨大企業の子会社。
年間の売り上げは1兆1千億円。ザンビアの国家予算の3倍を超える。
170平方km(東京ドーム3636個分)のサトウキビ畑を持ち、そこでザンビアの労働者が働いている。
労働者にはノルマが課され、日の出から日没まで強い日差しの中で、サトウキビの刈り取りを続ける。
給料は1日740円。1節(約20センチ)食べたのがバレれば、200円の罰金。
ザンビアシュガーは月11億円の利益を上げるが、2007年以降、ザンビアに税金を納めていない。
アイルランドやモーリシャスなど税率の低い国に関連会社を置き、そこにマネジメント料などの名目で巨額の資金を移しているからだ。
しかし、アイルランドの会社を尋ねると、そこにいる人は誰もその会社を知らない。なんと従業員はゼロ(これについて、会社は「間違い」と弁明)。
ザンビアの貧困率は68%。5歳以下の子の45%が栄養失調。
ザンビアシュガーのあるマダブカの病院では、扱える患者は月に20人だけ。ベッドは3つしかない。月に2人の子どもが死んでいく。
2歳の子を亡くした母親の話。夫はザンビアシュガーでペンキ塗りをしていたが、この3年仕事はない。
「夫も私も働いていないから、食べ物を買う余裕がない。あの子に何もしてあげられなかった」。
税収があれば、もっと栄養失調の子を助けられるのに。
近くで砂糖を売っている店を尋ねる。
28歳の女性は3人の子を育てながら、朝6時から夜9時まで働く。休みもないという。
砂糖を20kg売って、利益は100円程度。その中から税金を20円、毎日徴収される。
稼ぎは月1万円。そのうち600円が税金で取られる。
家賃2200円の、電気も水道もない家に6人で暮らす。子どもたちは床で寝る。
教科書代が払えず、公立学校に通わせられない。
NGOは、ザンビアシュガーが年間5億円の税金を逃れていると見ている。
この額があれば、48000人の子どもを1年間学校に通わせられる、という。
ザンビアシュガーは、ゴルフのトーナメント大会も主催する。優勝賞金は1200万円‥‥。
この事例は、ザンビアシュガーが株式会社で情報が公開されているから分かったもの。
見えないところには、どれほどの税金逃れを行う企業があるのか?
特に、地下資源を採掘する企業は、もっとひどいと言われている。
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一銭も税金を払わない巨大企業のそばで、貧しい住民が毎日税金を払っている。
その子どもたちは、お金がないために死んでいく。
眩暈のするような対照‥‥。
G8諸国は、各国とも財政が苦しい中、自分の取り分を増やしたいために、タックスヘイブンをやり玉に挙げる。
しかし、タックスヘイブンにあると見られる富裕層の財産18兆5000億ドルのうち、40%はG8管轄下の地域にある。
例えば、タックスヘイブンとして有名なケイマン諸島やヴァージン諸島はイギリス領だ。
また、各国は、自国に拠点を置く企業に有利なように、法人税の引き下げを競っている。
日本でも、野田政権が法人税を引き下げた。安倍政権は「成長戦略」で、また法人税を下げようとしている。
タックスヘイブンを非難しながら、一方で自国をタックスヘイブン化しようとする、この矛盾。
彼らは、自国の税収が減る限りではタックスヘイブンを問題にするが、途上国の人々の生活がどうなろうと、気にも留めないのだ。
(by ウナイ)