改憲の危険シリーズ 押しつけ憲法論批判(14) 極東委員会の重要な役割
FEC(極東委員会)は日本占領政策に関する最高決定機関ではあったが、執行権を欠き、委員長はアメリカ、本部はワシントン、しかも11カ国の寄合所帯である、という諸事情の下では時宜に応じた迅速で的確な決定がおこなわれ難い、という弱点をもっていた。それにも拘わらず、日本国憲法制定に関しては重要な役割を果たした。
①FECの衆院選挙延期の申し入れ(1946年3月29日)
FECは、4月10日に予定されている衆議院議員選挙の延期をマッカーサーに申し入れた。それは、日本政府による改正憲法草案の新聞発表が3月7日であり、国民の間には十分にその内容が浸透していない、という理由であった。だが、マッカーサーはこれを無視し、その結果、総選挙が予定通り4月10日に行われて、自由党141議席、進歩党94議席、社会党93議席となった。
②FECの憲法採択の3原則(5月13日)
()憲法審議に対して十分な時間を確保すること
()明治憲法との法的継続性を保つこと
()国民の自由な意思表明を保障すること
上記()については既に戦時国際法である「ハーグ陸戦協定」(第43条)で被占領国における現地法の尊重という原則が定められており、これが遵守されたのである。
マッカーサーと日本政府は当初、短期間のうちにしかも無修正で憲法改正を仕上げるつもりではあったが、マッカーサーといえども、このFEC決定を無視することが出来ず6月22日、憲法審議には十分な時間が与えられるべきことを声明した。
③FECの「日本の新憲法についての基本原則」(7月2日)
FECは憲法原案の国会審議に合わせて、いくつかの極めて重要な指摘を含む指令を発した。
()人民(people)主権の原則の確認
()成年による普通選挙の明確化
()独立した司法部の確立
()すべての日本人及び日本の管轄下にあるすべての人に対する基本的市民権の保障・法の前の平等・貴族のような特権の廃止
()地方政治における首長と議員の選挙による選出
()日本国民の自由に表明された意思を実現するような方法での憲法改正
()天皇制の存廃は国民の自由に表明された意思によって決定されるべきこと
()内閣総理大臣および国務大臣はすべて文民であること。総理大臣と閣僚の過半数は国会議員であること
()天皇制が存続する場合は、天皇はあらゆる場合に内閣の助言に従って行動すること。天皇大権の全廃
()皇室財産はすべて国有化
(ローマ数字の番号は、便宜的に筆者がつけた)(岩本 勲)
(つづく)