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「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」

ウクライナ事態は、憲法9条と核兵器禁止条約の意義を再確認させています!

2022-02-28 | 改憲反対
■ウクライナ事態が私たちに問い掛けていること
 ロシア軍のウクライナ進攻を受けて、欧米諸国では戦争熱が高まっていて、核戦争=人類破滅の危機すら招来しかねない事態となっています。「武力でことを解決しようとするロシアには武力で対抗するしかない!」との世論誘導が大々的に行われています。
 「武力でことを解決してはならない。」というのなら、政治的・外交的に解決すべきだということになるのですが、不思議なことに日米欧諸国の政府もマスメディアも、これまでの対ロシア外交について何も語りません。そしてロシアが政治的・外交的解決を探ることなく、いきなり武力行使に及んだかの印象を人々に植え付けようとしています。実は、欧米諸国、とりわけ米英両国とウクライナ政府は、ロシアとの政治的・外交的努力を放棄してきたために、政治的・外交的経過について口を閉ざしているのです。
 この辺りのことについてはまた別に述べることとして、今日は現在進行中のウクライナ事態が、憲法9条の意義と核兵器禁止条約の現実的・決定的意義を再確認させていることについて、述べることにします。

■改めて憲法9条の意義が明らかに

 わが国でも、ウクライナ事態を利用して戦争準備態勢の完成を急ごうとする動きが表面化しています。「ウクライナを見よ! 憲法9条で平和と安全は守れないことが分かっただろう!」とのキャンペーンが大々的に行われており、憲法改悪への世論誘導が一気に進められようとしています。
 しかしちょっと冷静に考えれば、ウクライナ事態は憲法9条の今日的意義を再確認させてくれていることがわかります。ウクライナは、政治的・外交的努力を回避し、ひたすらNATOに接近して軍備の増強を図ってきました。しかしその軍備増強は、ロシアの軍事的進行を止めることができなかったばかりか、むしろロシアを軍事進攻に追い込んだという事実をしっかりと見つめなければならないでしょう。
 ひるがえって日本です。日本は戦争準備をして誰と戦争をするのでしょうか。尖閣諸島(釣魚群島)をめぐって中国と一戦を交えるのでしょうか? 竹島(独島)をめぐって韓国と一戦を交えるのでしょうか? あるいは「北方領土」をめぐってロシアと一戦を交えるのでしょうか? 戦争熱を煽り戦争準備を急ぐ人々に、「本当に戦争を始めるつもりなのか、またその場合どのような結果になるのか?」はっきり答えてもらう必要あります。ちょっと考えれば、実際に戦争をすることなど「できない」ことが分かるでしょう。すると戦争ができないのに、膨大な軍事費に国の富(税金という形で国に治められた人々の労働の成果)を浪費し、戦争体制によって人々の権利と自由を著しく制限するという馬鹿げたことだけが結果として残ることになります。本格的な戦争は闘う双方に壊滅的な結果をもたらす現代では、憲法9条こそ平和と安全を担保する現実的方策だということが分かります。今こそ、憲法9条の意義を声高く叫び、改憲の動きを止めなければなりません。

■核兵器禁止条約締結・批准は火急的課題
 ウクライナ事態が示しているもう一つのことは、核兵器禁止条約締結の重要性です。「ウクライナが現在の事態に陥ったのは、NATOに加盟していないからだ。NATOに加盟していればロシアも手を出せなかっただろう。」との声が、欧米諸国だけでなく、わが国でも主張されています。本当でしょうか? 「なぜNATOは全面的に介入してウクライナを守らないのだ。」とNATOやアメリカを非難する人たちもいます。しかしNATOが直接介入すればどうなるのでしょうか。戦場は欧州全域に一挙に広がり、破壊と犠牲者の数も飛躍的に増加するでしょう。その結果、戦況はウクライナが多少押し戻すことになるかもしれませんが、対NATO戦において通常兵器で負けそうになれば、ロシアは核兵器の使用に踏み切るかもしれません。実際プーチン氏は、核兵器の使用に言及しています。そうなれば米国も核の使用に踏み切るでしょう。それは人類を破滅へと導くでしょう。そのとき「ロシアが悪いのだ!」と言ってみても、何の役に立つというのでしょうか。全面戦争を煽る人々の無責任性は明らかでしょう。ウクライナ事態が核戦争に至ることを絶対に阻止しなければなりません。米政府が核の先制不使用を明らかにしようとしたとき、日本政府が強く反対したと伝えられています。広島、長崎、焼津の悲劇を経験した日本の政府がそのような態度を取り、今また安倍元首相を先頭に「日本の核保有について真剣に検討すべきだ。」との意見が公然と語られ始めています。日本政府に核兵器禁止条約の締結・批准を行わせること、それは核保有国に対する大きな圧力となるでしょう。核戦争の危険性がキューバ危機以来、今ほど高まったことはありません。今こそ核戦争阻止のために、全世界の民衆が手をつないで行動すべきときです。

■「ロシアは何をするか分からない!」
 戦争熱を煽り戦争準備を急ぐ人々は、そう言います。しかし本当に「何をするか分からない」のなら、どう対処してよいのかも分からないことになります。軍備増強と戦争準備態勢の確立が有効だということも単なる思い込みに過ぎなくなります。実は、政治的・外交的努力に背を向けている人たちが、「何をするか分からない!」と叫んでいるのです。個人でも国家でも、その行動にはそれ自身の動機や原因があります。ロシアの動機を「プーチン氏の野望」といった掴みどころのない精神状態に帰着させるのは、現実の政治的・外交的解決に関心がない人々の発想です。ウクライナ問題について言えば、少なくともウクライナ東部2州とウクライナ中央政府の間で自治権を巡る対立が武力衝突に至ったときから、そしてその解決方法としてドイツとフランスも加わって成立したミンスク合意(2015年2月)から7年間の外交交渉の経過を見れば、ロシアが求めているものは極めてはっきりとしています。ロシア系住民が多数を占める東部2州の高度の自治権の保証とウクライナのNATO非加盟です。このミンスク合意をウクライナ政府が反故にし、武力による東部2州の制圧を目指したこと、そしてそれをアメリカが後押ししたことが今日の結果に導いたのです。ですから、「何をするか分からない」のではなくて、「分かろうとしなかった」と言えます。政治的・外交的努力とは、相互の利害調整・妥協点を探ることです。それを成し遂げる以外に解決はありません。

■それでも、今回のロシアの軍事的侵攻は歴史的誤りである
 以上のような経過から、ロシアは今回の行動に追い込まれて行ったと言えます。だからと言ってその行動が許されるわけではありません。今回の行動によって、ウクライナの民衆の間の反ロシア感情は高まらざるを得ません。結局東部2州の自治権の拡大とウクライナにおけるウクライナ系住民とロシア系住民の和解と共存は、当分の間は望めなくなるでしょう。この戦争によって、最大の犠牲者となるのはウクライナの民衆であり、戦場で若者が死んでいくロシアの民衆です。両国の民衆は武器を取るべきではありません。この戦争に反対しなければなりません。また世界の民衆は、政府やマスメディアの扇動に乗せられて、戦争の拡大・長期化につながるような行動をとるのではなく、戦争反対・核兵器使用反対の国際共同行動を繰り広げるべきです。今すぐ行動を開始しましょう。
(老居士)


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