リブインピースホームページ自民党「特定秘密保護法の新聞報道への反論・23」が明らかにする特定秘密保護法の危険よりの転載
以下Qは「特定秘密保護法の新聞報道への反論・23」による
Q18(12月5日 毎日新聞)Q22(12月6日 毎日新聞) 「国会や司法のチェックも及ばない」
回答では、「一定の条件のもと、国会の秘密会に特定秘密を提供するものとする仕組みが盛り込まれており、国会の求めに応じ、特定秘密を提供しなければならない」とする。
これを見ると国会議員に特定秘密を取得する権限があるかのように読めるが、実際の条文は全く違う。条文では、行政機関の長が「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めた」場合に限り、「各議院又は各議院の委員会若しくは参議院の調査会」に「非公開」を前提に提供するものであり、あくまで提供権限は行政機関の長にある(第10条)。
しかも、提供されるのは秘密の「委員会」「調査会」であり、議員個人ではない。だから、議員が情報公開請求をしても、行政機関の長は拒否することができる。また秘密会で重大な(たとえば政府が戦争を準備しているというような)情報に接した議員がその危険を国民に訴えることは出来ない。市民集会などで、議員が「秘密会」で取得した特定秘密を明らかにした場合は処罰の対象となる。
このように、特定秘密を指定し管理する行政が国会や司法の上に立つこと、を条文で定めているのである。
Q19 今回の修正案は国家秘密法と同じ。(12月2日毎日新聞)
回答は、「『スパイ行為の防止』を主眼としたものではない」とする。
だが、「第七章 罰則」を見れば、「人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取若しくは損壊、施設への侵入、有線電気通信の傍受、不正アクセス行為・・・その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為により、特定秘密を取得した者」を罰すること、それだけでなく、「共謀し、教唆し、又は煽動した者」を罰する等、まさに「スパイ活動」の防止を定めた法律である。たしかに、刑罰は死刑・無期懲役から最高懲役十年に減刑されているが、取り締まる範囲の大きさからすると、「スパイ防止法」をも上回る。
また12条では、「特定有害活動」(スパイ活動)が「公になっていない情報のうちその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動」とされており、ここからも、国家機密の漏洩防止、取得活動の防止を目的としていることが明らかである。
国家機密が「防衛、外交、スパイ活動、テロ活動」の4つに細分化されたにすぎない。特定秘密保護法の原型である秘密保全法の特別秘密には「公共の安全及び秩序の維持」がはいっており、治安維持法と軍機保護法を一体化したような内容であった。
Q23 いわゆる「沖縄密約」など、政府の違法秘密も隠蔽できる。(12月6日 東京新聞)
回答はここでも「内閣総理大臣の指示」を持ち出し、「『政府の違法密約も隠匿できる』ということはないのです」と締めくくっている。
だが、西山太吉氏の情報スクープ行為は、森雅子担当相の答弁でも「処罰対象」とされている。西山氏に対しては、違法密約の内容や暴いたことそのものではなく、情報入手の仕方が問題であったとして有罪判決を支持している。入手方法を処罰対象にすることで、事実上違法密約を隠蔽できる。西山氏が暴露した違法密約も、日本政府はその存在を一貫して認めてこなかった。沖縄密約について政府がはっきりと認めたのは2010年3月民主党政権になってからのことである。
佐藤栄作首相の密使であった若泉敬氏が暴露した基地自由使用や核持ち込みに関する沖縄密約についても、2002年米公文書から密約を裏付ける文書が発見されていたが、日本政府は一貫して密約の存在を否定してきた。密約が明らかになったのは2009年12月に佐藤栄作首相の遺品から「合意議事録」が発見され公表されたことによる。
沖縄密約が「国際社会の平和と安全に関する重要な情報」「国際約束に基づき保護することが必要な情報」(別表2-ハ)とされれば、間違いなく特定秘密に指定されるだろう。
(参考)
※「特定秘密保護法の新聞報道への反論・23」は以下のホームページに掲載
秘密保護法報道?自民党反論文書の中身」(GoHoo)
※「特定秘密の保護に関する法律Q&A」(自民党)
※「特定秘密保護法 ―3つのポイント―」(自民党)
※「特別秘密の保護に関する法律案【逐条解説】」(内閣官房 2013年11月)
※「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」(秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議)
(なお、法律案の制定過程で「特別秘密」が「特定秘密」に変わったため、古い文書では「特別秘密」と表記されている場合がある)
※「特定秘密の保護に関する法律(全文)」
(おわり)
(ハンマー)