LiveInPeace☆9+25

「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」

No to the New Cold War第1回国際会議での発言(1)

2020-10-04 | 「新冷戦」反対

 これから何回かに分けて紹介するのは{新冷戦にノーを」第1回国際会議での各スピーカーの発言要旨です。
それぞれの発言は極めて重要な問題を取り上げています。

・マーチン・ジャックMartin Jacques (ケンブリッジ大学国際政治研究学部元上級研究員)
「新しい冷戦は米国の衰退を止めない」

 なぜ中国に対する米国の態度がこれほど大きく変化したのだろうか。
 その発端は2008年の金融危機にある。1972年から2016年までの米中関係の比較的安定した温和な期間は、米国の2つの仮定によって支えられていた。 
 第1に、中国は米国の世界的な経済支配を脅かすことは決してないだろう。第2に、中国の台頭は西洋スタイルの政治システムを採用しない限り持続不可能だろう。 
 これらのどちらも起こらなかった。
 逆に、金融危機は中国ではなく米国で起こり、中国の政治システムは非常に成功して持続可能であることが証明された。2008年の危機は、それ以前の対中政策への米国支配エリートの支持を掘り崩した。中国に関する覇権の不安が高まり、その気分が米国で定着した。中国は、ますます、米国のグローバルな支配に対する脅威として見られるようになり、その過程は2016年のドナルド・トランプの米国大統領選出で頂点に達し、中国は敵と見なされるようになった。
 米国がそのグローバルな覇権へのいかなる脅威も受け入れることができないのは、まったく明らかだ。ナンバーワンとしての米国というのは、DNAに基づいたものだと見なされている。しかし、それは持続不可能なものだ。
  米国は、比較的急速な衰退過程にある。もはや世界で首位の独占を満喫することはできない。しかし、米国は、その権限のいかなる減少にも徹底的に抵抗すると決めている。われわれは、危険で、不安定で、予測不可能な時期に突入している。というのは、米国が、避けられないことに対してどんなコストを払ってでも抵抗するということを追求しているからである。
 その結果として、われわれは、もはや世界平和を当然のこととすることはできない。世界平和は、かつての冷戦終結以来初めて危機に瀕している。さらに、今回のCOVID-19の危機は、2008年以降に起こったものよりもさらに大きな、米国から中国への権力のシフトを確実にもたらすだろう。それは、米国のさらにいっそう絶望的な対応につながる可能性がある。中国と首位を共有しなければならないという新しい現実に、米国が同意するときまで、世界情勢は非常に不安定になるだろう。1945年以降のイギリスが例証しているように、勢力の衰退しつつある帝国が、低下した地位に同意するのは非常に困難である。米国にも同じことが当てはまるが、はるかに劇的で危険な形になるだろう。
 われわれは、既に新しい冷戦の中にいる。貿易と技術においても、そして中国のヒューストン領事館の閉鎖が示すように外交においてもそうである。マイク・ポンペオ米国務長官の最近の発言は、中国に対する新たな冷戦の宣言に等しい。米国は、中国に対して既に多くの戦線を開いた。
 非常に心配なのは、トランプの予測不可能性、不安定さ、そして絶望である。トランプに関する限りは、11月の大統領選挙で敗北する恐れに駆り立てられて、何でもありで、あらゆることがありうる。
 この冷戦は、米国とソビエト連邦との間の以前の冷戦に戻ることはないだろう。旧冷戦では、両国は、ほとんど完全に分離された世界、密閉された領域に住んでいた。たとえば、経済的にはほとんど相互関係がなかった。トランプ政権のタカ派が、完全な経済的分離によってそのような世界を再びつくり直したいといくら思っても、それは彼らの能力をはるかに超えている。 
 さらに、今日の統合されたグローバル経済において、中国は米国よりも大きな経済的プレーヤーであることは明らかだ。旧冷戦時代には、ソビエト連邦は常に米国よりも経済的にはるかに弱かったのに対し、今日の状況は完全に異なっている。中国はすでにいくつもの重要な点で優位を占めており、さらに重要なことに、衰退の中にある米国に対して、急速な上昇の中にある。
 2つの冷戦には、もうひとつ重要な違いがある。ソビエト連邦は、誤って、米国と軍事的に競争しようと追求したが、それは、米国よりも経済的にはるかに弱いという前提のもとで、悲惨な戦略であった。中国は、その過ちを犯してはこなかったし、今後も犯さないだろう。米国がどれほどのものを費やしても、中国は、それよりはるかに少ない費用で国境と領土の防衛に資源を集中させるだろう。そして、長期的には、経済力が常に軍事力に勝るのである。

 



最新の画像もっと見る