まさに憲法の「平和的生存権」が問われる事態に
自民党の勝敗の第一のカギを握るのは、政府に批判的な世論と大衆運動の広がり如何である。今回の選挙には、新しく18歳以上の若者たちが加わる。昨年の戦争法反対運動では、特に若者たちの活動が目覚ましく、現在でもなおその熱気は引き継がれている。「戦争法」が施行された3月29日前後の運動状況はこのことを如実に示している。また、大津地裁判決を齎した反原発運動も、根強い広がりを持っている。
安倍内閣の最大のアキレス腱の一つは、経済問題である。これまで、安倍内閣はアベノミクスという幻想によって株価を釣り上げ、比較的高い支持率を維持してきたが、ついにこの幻想の破綻が白日の下に晒される時がやってきた。前代未聞のマイナス金利を含む際限をしらぬ金融緩和にも拘わらず、年初よりの株価の大幅下落と乱高下、円高、GDP・景気の長期低迷、実質賃金の4年連続(2012~15年)のマイナス、消費税値上げ問題、加えて全世界的な景気の低迷、とくに中国・アジアの景気の低落、等々が株価連動内閣の心臓部を襲っている。
社会保障や福祉・教育予算が切り捨てられ、国民生活が破壊され、憲法によって保障された国民の諸権利や生存権さえ脅かされる深刻な事態がこの日本で起きている。「保育園落ちた日本死ね」「奨学金地獄「子どもの貧困」「下流老人」「原発棄民」等々は氷山の一角だ。これらは決して偶然に起こっているのではない。戦争準備や改憲にひた走る安倍政権の政策と不可分のものとして生じているのである。
最後に、旧海軍の空母搭乗員として真珠湾攻撃やミッドウェー海戦に加わった生き残りの兵士(94歳)の声を聞いてみよう。さすがにその言葉には、体験に裏付けられた格別の重みがある。「戦場体験者の私からすればすぐそこまで軍靴の音が聞こえている。火の粉が落ちてくる、つまり紛争が起きる直前のように思う。もっと政治に関心を持ち政治に関して高い判断力を持つ国民になろう。また戦争で息子が死に、親が泣くのをみたくないから」(「朝日新聞」2016.2.7、オピニオン)。(岩本 勲)
(おわり)
(2016.3.29)