国民に定着した日本国憲法と最近の世論傾向
自民党は、占領下の憲法は日本国民の自由な意思が反映したものではない、という。なるほど、明治憲法固執論者の声はほとんど反映されなった。だが逆に、国民投票こそ行われなかったが、憲法自身は国民の圧倒的多数の支持で迎えられた。政府も当初、その普及に努めた。その後、芦田内閣、鳩山一郎内閣、岸信介内閣によって、主として第9条を中心に改憲の方針が掲げられたにも拘らず、国民の強い反対によってそれは実現せず、2016年はすでに指摘したように日本国憲法公布から数えて70年となる(明治憲法は57年間)。この間、日本国憲法は、国民の日々の生活と膨大な判例・学説の積み重ねの中で、日本国民の間に定着しているのである。
最近の世論調査では、参院選挙で改憲派議席が3分の2以上を「占めた方がよい」33%、「占めない方がよい」46%(「朝日新聞」1月16~17日調査)、改憲勢力が3分の2以上を占めることを「期待する」40%、「期待しない」46%(「毎日新聞」1月30~31日調査)となっている。これらの調査は改憲勢力が3分の2以上を「占めない方がよい」、「期待しない」がやや多数となっているが、賛成・期待派との差はそれほど大きくはない。しかし、3月段階の調査では改憲反対派が過半数を占めている。「日本経済新聞」とテレビ東京の合同調査(3月25~27日実施)では安倍政権の下での憲法改正について、賛成31%、反対52%でかなりの開きがある。
安全保障関連法では、賛成31%、反対52%(同「朝日新聞」)、安全保障関連法を投票の「判断材料とする」53%、「しない」35%(同「毎日新聞」)となっており、依然として昨年の戦争法反対に運動の気分は持続されている。
一方、今年1~3月の安倍内閣支持率では、40%~50%前後を維持している。「安倍内閣支持」42%(4ポイント増)、「不支持」38%(2ポイント減)(同「朝日新聞」)、「支持51%(8ポイント増)、「不支持」30%(7ポイント減)(同「毎日新聞」)となっている。安倍首相が一時、第9条正面突破の強気を示したのも、この支持率に基づくものと判断される。
最近の「毎日新聞」の3月6~7日調査によれば、内閣支持率42%(前回より9ポイント減)、不支持率38%(8ポイント増)となっている(同紙2016.3.7)が、他紙の調査では今のところ顕著な増減はみられない。例えば、「日本経済新聞」調査(3月25~27日調査)では、内閣支持率46%、不支持率38%で、いずれも横ばいとなっている。
いくつかの週刊誌は早々と、これらの比較的高い内閣支持率に基づいて、7月選挙における自民党の圧勝を報じている。だが、果たして事態は、安倍内閣にとって思惑通りに動くのであろうか。(岩本 勲)
(つづく)