本書冒頭で『「世界一危険な危険な基地」である普天間基地に、タイム誌が「空飛ぶ恥」と報道した複合機「オスプレイ」の配備が、強行されようとしている』と今回のオスプレイ配備の大問題点を提起している。現時点でも普天間閉鎖・返還が必要であるのに、そこへ危険なオスプレイを配備するということは、全く矛盾している。「オスプレイ普天間基地の危険性」の章は、「オスプレイにオートローテーション機能はあるのか」とヘリコプターのエンジン停止時に着陸出来る機能がオスプレイにあるのか問いただしている。国会答弁で当時の北澤防衛相が「オスプレイはオートローテーション機は十分にある」と答え、松本国務相は「オスプレイのパイロットはシュミレーターを用いて訓練を定期的に行っている」と発言している。この機能は実際の訓練ではしていない、シュミレーター訓練のみなのだ。本書では、「 オスプレイ(以下OSと略す)はオートローテーション(以下ORと略す)機能で安全に降りることができない」として、展開する。 元国防分析研究所のリボロ氏は「OSがORで安全に降りることが出来ないことは、メーカーも海兵隊も知っている」と爆弾発言し、「OSが垂直離着陸モードから固定翼モードに移行するのに12秒かかる。その間高度は1600フィート下がる。垂直離着陸モードで1600フィート以下でOSが全パワーを喪失した場合は大惨事を引き起こす」と指摘した。本書は計算して実証を試みている。普天間基地では2004年8月13日の沖縄国際大学への米機墜落事件を受け、2007年8月防衛省が出した「普天間飛行場の危険性の除去に向けた取り組み」(以下「取り組み」と略す)は、「ORによって民間市街地に墜落することなく、飛行場に帰還できる」と結論を出している。防衛相は、OSは現行のヘリと同じ飛行経路を飛ぶと回答している。現行でもヘリはその飛行ルートを越えた飛行を繰りかえしているのが実態だ。7年前の事故機はORの状態で墜落した。OSは、ORでその2倍の速度で4倍の運動エネルギーで地上に激突する計算で、周辺住民に甚大な被害が及ぶことが確実だ。それでもOSの配備を強行しようというのだ。第3章で真喜志好一さん(沖縄平和市民連絡会)が「沖縄のオスプレイ問題」を書かれている。そこでは、辺野古新基地や高江のヘリパッド建設がすべてOS配備と結びついていることなど、たくさんの問題点を指摘し展開されている。
もう一点OS配備が「低空飛行訓練が全国で展開される」という項目は、絶対に注目する点だ。OSが飛ぶ低空飛行ルートを2012年6月13日防衛省が発表した。OS沖縄配備に向けた米海兵隊の環境審査(レビュー)である。鹿児島から沖縄本島に向かうルートと本土を低空飛行するルート5本の計6ルート。一体どのような目的の訓練か。低空飛行訓練は、対地攻撃と一体になった訓練。敵のレーダー探知を避けるために地形に沿って飛行し、目的地の手前でポップアップしてから急降下して爆撃、これが低空飛行訓練の実態である。
沖縄本島周辺では射爆場で爆撃訓練。岩国基地の北東から中国山地を横断するブラウン・ルートがOSの飛行ルートに入っていないが理由は不明である。 OSは戦地では単独で飛行しないので、AH1、A10など強力な火力を持つ機体がエスコートし、一体となって低空飛行訓練し、回数がもっと増大する。オレンジ・ルートでは米軍機が墜落(1994年10月14日)。この事故報告書では、事故機が厚木基地から飛び、オレンジ、イエロールートから岩国基地で給油し、パープル・ルート、沖縄県鳥島射爆場で模擬爆弾投下し、嘉手納基地に下りる予定だったことが公表された。OSは公表した低空飛行ルートだけでなく、岩国基地からオレンジ、イエロー、パープル・ルートやキャンプ富士(静岡県)からブルー、ピンク、グリーンの各ルートを陸上飛行し、爆撃訓練はしないが、強行着陸訓練を組み合わせてする行うだろう。米軍の低空飛行の安全策は「よく見て避けろ」(SEE AND AVOID)・・・OS普天間配備の調査書にも出てくる。何年経っても安全策はこの程度である。私たちはこの視点からもOS配備に反対しなければいけないと思う。
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(ルーラー)