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歌舞伎「當世流小栗判官」

2006年03月15日 | 芝居小屋
国立劇場にて、市川猿之助一門の「當世流小栗判官」を鑑賞した。猿之助自身は出演せず、一番弟子の右近笑也コンビを中心に一門で昼夜通しの演目である。
今回は夜の部(後半)から観た。

最初に前半のあらすじを段治郎が口上役で述べ、登場人物が一揃え挨拶して後半が始まる。実を言うと、歌舞伎は昔から先輩方の引き回しでかなりの上演数を観たが、猿之助一門だけは食わず嫌いで観たことがなかった。
それが何故、今回観たかというと、昨年末にこの一門の若手、笑三郎丈の取材に同行して写真を撮ることになり、それが縁で今回観てみようかな、ということになったのだ。

これが不思議なもので、小栗判官と照手姫が主役なのに、夜の部の8割の見せ場は、笑三郎丈演じる後家役の独壇上。品の良い大棚の後家が、小栗判官に懸想したわが娘を主君のしがらみで切り殺すという辛く悲しい話。
しかも、嘘の婚礼の約束を小栗にされた娘は純白の花嫁衣裳を着ており、それが何度も切られて血で染まっていくという、ホント観ていて凄惨な場面が続くのです。
首まで切られてしまい、横溝正史ばりのグロテスクさ。(しかも席が前から4列目で迫力あり)
このシーンをせつなく、しかも妖しく演じきった笑三郎丈はスゴイ! と思いました。

だから、はっきり言って娘の呪いで顔が爛れ、足が萎えた小栗判官に全然同情できなかった。純情娘がいわば小栗判官に結婚サギに遭ったわけで、呪われるのも当然なカンジ。
最後の幕で小栗判官は遊行上人の霊験あらたかな温泉をぶっ掛けられて治癒し、天馬にのって悪人退治に、というラストは華々しかったが…。

笑三郎丈へ御礼と感動を伝えようと幕間に楽屋へご挨拶に伺ったが、お会いできず残念でした。


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