空飛ぶ自由人・2

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映画『ハリガン氏の電話』

2022年10月15日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

2003年。
メイン州の小さな町ハーロウで暮らすクレイグは、
大金持ちの老人、ジョン・ハリガンのために
本を朗読する仕事を請け負う。
視力が低下し、代わりに本を読む人物を探していたハリガン氏は、
教会の礼拝で聖書を朗読したクレイグに目をつけたのだ。
クレイグにとって、週3回、時給5ドルの仕事は魅力的だった。

ハリガン氏は資産家だが、
冷酷で利己的な人物として世間から嫌われていた。
未婚で子供も無く、親族とも連絡を絶った孤独な人物だった。

読んだ本は「チャタレイ夫人の恋人」や「闇の奥」、
「彼らは廃馬を撃つ」など、
子供には難しい内容だったが、
長ずるに従い、クレイグは作品の内容を理解できるようになる。

5年の歳月が経ち、(2008年)
クレイグは成長し、高校生になっていた。
高校では、スマホを介在してグループが出来ており、
クレイグはその一つに参加する。
と同時に、問題児のケニーという男からのいじめが始まる。


そのことをハリガン氏に話すと、
「容赦しない」、それが老人の答えだった。
敵に出会ったら急いで片付けろ、
罪悪感を感じる必要は無い、とも言う。

また、他に興味のある事は沢山あるのに、
なぜ週3回も通ってくれるのかと訊いたハリガン氏に、
クレイグは楽しいから、本の臭いも語り合う事も、音読するのも好きだ、
自分の意志で通っていると答える。
老人と青年の間には、いつのまにか敬愛と友情が生まれていた。
            
ハリガン氏は記念日に宝くじを送る習慣があり、
クレイグに送られた宝くじが3千ドルの大当たりとなる。
クレイグはスマートフォンを買って、
ハリガン氏に渡し、使い方を教え、
老人がいつも気にする株式市場もリアルタイムで見れる、
新聞や雑誌の記事もより早く読める、と教えると
ハリガン氏はその有用性を素直に認めて活用するようになる。

いつものようにハリガン邸を訪れたクレイグは、
椅子に腰かけ亡くなっている老人を目にする。
そして誤ってハリガン氏のスマホを持ってきてしまう。

教会で行われたつつましいハリガン氏の葬儀
最後の別れををする人々の列の最後尾に並んだクレイグは、
誰もいないのを確認すると、
ハリガン氏のスーツのポケットに彼のスマホを忍び込ませる

葬儀が終わった後、
クレイグはハリガンの会計担当の男から、
彼が2ヶ月前にクレイグに宛てに書いた手紙を渡される。
そこにはハリガン老人がクレイグに、
80万ドルの信託財産を遺したと記してあった。
大学に通い好きな事業を始めるには充分な額だ、とも。

夜が明け目覚めたクレイグは、
ハリガン氏の携帯からメールが送られてきたと気付く。
生きたまま埋葬されてしまった、助けなけりゃ、
というクレイグに、
父親は、看取られずに死んだハリガン氏は検死解剖されており、
生き返る事は有り得ないと告げる。
ハッカーか誰かがしているいたずらだと。

ケニーは校内で大麻を売り退学になるが、
クレイグが告げ口したと勘違いしたケニーが暴力をふるう。
その夜ハリガン氏のスマホに電話をかけ、
クレイグは暴行された事実を語る。

次の日、酔っぱらったケニーが自宅の窓から落ちて首の骨を折って死んだ。

クレイグは今のスマホを手放し、
新しいものに機種変更する。
もうハリガン氏のスマホには連絡が取れなくなった。
しかし、クレイグはスマホを捨てず、
クローゼットの中の箱にしまいこむ。

やがて、大学に進学し、故郷を離れて、
クレイグはボストンの大学で学び始める。(2012年)

そこへ、高校の時、クレイグをケニーから守ってくれた
ハート先生が亡くなった知らせが届く。
婚約者と旅行中の彼女の車に、
ディーン・ウィットモアという男の車が衝突したのだ。

ハート先生の葬儀に参列したクレイグは、
事故の相手のディーンは飲酒運転の上に無免許で、
無傷だったと友人から教えられる。
しかもディーンは罪を問われず、
豪華な矯正施設に送られただけだった。

自宅に戻ると箱の中にしまった古いスマホを取り出したクレイグ。
充電すると、棺の中のハリガン氏に電話をかける。
ハート先生の死の経緯を告げ、
ディーンに死んで欲しいとクレイグは伝えた。

そしてある日、クレイグは
ディーンが死んだことを知る。
ディーンの入所した矯正施設を訪れたクレイグは、
そこの男から死因を聞き出す。
ディーンの死は自殺で、
朝食前にシャンプーと石鹸を飲み込み、
石鹸を喉に詰め窒息死したという。
彼が自殺に使用した石鹸はハート先生が愛用したものだった。

そして・・・

偏屈な老人とピュアな少年が心を通わせる
ハートウォーミングなドラマかと思いきや、
老人が死んでからも少年と繋がったかのようなホラー。
原作は、あのスティーヴン・キングの短編。
いかにもスティーヴン・キングらしさにあふれた内容。
スマートフォンが重要なアイテムになっているのは、
やはりスティーヴン・キングらしい取り入れ方だ。

ラストはあいまいだが、
もしかすると、
二人の死は、
ハリガン氏によるものではなく、
クレイグ自身の怨念の結果かもしれない。

監督・脚本は、ジョン・リー・ハンコック
出演者は、クレイグにジェイデン・マーテル

ハリガン氏にドナルド・サザーランド
サザーランドの存在感が光る。

クレイグが墓中のスマホに電話をかけ、
墓の地面に耳をつけて、
中から呼び出し音が鳴っているのを確認するなど、
めざましい描写もあるが、
総じて単調。
もっとホラー的な演出はいくらでも出来たのではないか。

10月5日からNetflixで配信