[映画紹介]
吉川朱海が勤める広告代理店は、
大手の下請け仕事で、
無理難題をもちかけられて、
徹夜の毎日だが、
ある月曜日の朝、朱海は後輩の二人組から
「僕たち、同じ1週間を繰り返しています! 」
と言われて驚く。
同じ会議、プレゼン、発注、直しが繰り返され、
鳩が窓に激突して死ぬのも、
下の道路で起こることも、
夜中の停電も、
繰り返している、
前の週のことは夢のように忘れ、
同じことの繰り返される毎週が
タイムループして閉じ込められているという。
そう言われて観察すると、
確かに同じことの繰り返しだ。
そのことに気づく社員を増やして、
何とかタイムループからの脱出を試みるが・・・
こういうワン・アイデアでの低予算映画は、
「カメラを止めるな!」をはじめ、時々現れる。
成功の可否は、そのワン・アイデアを
どう工夫して、ふくらませ、面白いものにするかだが、
本作は、その点での成功例といえよう。
同じ日の繰り返し、というのは、
「恋はデジャブ」「オール・ユー・ニード・イズ・キル」
などの先行作品があり、
新味はないが、
それが、広告代理店制作部の事務所の中で限定して描かれる、
という点がユニーク。
なにしろ、カメラは、9割方、
代理店の事務所の一室で占めちれている。
出ても、会社の屋上や
窓から見える下の道路に限られている。
そして、繰り返される日常の描写も、
よく工夫されている。
タイムループが起こっていることに気づかない同僚を
説得して気づかせ、
部下から上司へと上げていき、
最後に、タイムループの原因らしい部長に気づかせるために奮闘する、
というのも面白い。
どうも原因は、部長がしている
数珠のような、呪いのブレスレットらしいと見込んだ社員たちは、
部長に気づかせ、部長の手で、
問題のブレスレットを破壊させるが、
タイムループは止まらない。
では、本当の原因は・・・?
二人の若手よりも早くタイムループに気づいていた人物が現れて・・・
というてんやわんやだが、
その背景に、
会社の仕事が毎日同じことの繰り返し、
という認識があるのも大きな布石だ。
そういえば、サラリーマンの日常は、
まさに同じルーティンの繰り返しだともいえる。
ワン・アイデアを脚本の工夫と撮影の工夫で
上手に昇華させた
監督の竹林亮、
脚本の夏生さえり、竹林亮の手腕の勝利といえよう。
部長役のマキタスポーツ以外、
知らない俳優たちだが、
良く役柄を理解して、
作品を彩り豊かにした。
特に朱海を演ずる円井わん、
部長を演ずるマキタスポーツが面白いが、
他の面々も良い味を見せる。
特に部長にプレゼンする場面は出色。
長さが1時間22分というのも、
短くていい。
必見の拾い物映画。
5段階評価の「4」。
TOHOシネマズ日本橋他 で上映中。