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日本の物価

2023年10月02日 23時00分00秒 | 様々な話題

最近、アメリカ旅行した人が、物価の高さ、
中でも飲食店の値段の高さに驚いた、
という記事が増えている。

たとえば、ニューヨークに仕事で入った経営コンサルタントの経験。
到着してすぐに入ったカフェ。
現地の人が食べるような普通の朝食を食べたいと思い、
クロワッサンとコーヒーを2つずつ、
さらに卵とベーコンが入ったクロワッサンを1個注文。
クロワッサンは2つで9ドル(1個4.5ドル)、
コーヒーは11ドル(1杯5.5ドル)。
卵・ベーコン入りクロワッサンは12.5ドル、
合計32ドル50セントに税金2.88ドルが加わり、
最終的な価格は35ドル38セント
日本円にして5130円(1ドル=145円計算、以下同)。
クロワッサンとコーヒーだけで5千円(多分二人分)は、
日本人の感覚からしたら、
バカ高い。
でも、現地の米国人は当然のように支払っている。

仕事を終えて、ミッドタウンのホテルに戻ろうと歩いていると、
うどんチェーンの「つるとんたん」が。
そのメニューを見て驚き。
30ドル以上のメニューがずらりと並んでいる。
「プレミアム10握り+うどんセット」が38ドル。
日本円で5510円
ニューヨークの外食、
中でも日本食は特に高い。
高級料理と思われているからだ。

コロナの前の2019年8月、
私はニューヨークとワシントンDCに12日間の旅をしたが、
6年ぶりのアメリカで物価が高くなっていることに驚かされた。
最初の夜、庶民的なフードコートでとった↓のジャンクフードが
19ドル。 


当時のレート108円で換算して2080円
今のレート(145円)なら2785円。
マクドナルトの朝マック↓が


6.95ドル、当時のレートで750円。
日本なら400円。
ニューヨークでも、スーパーの食材は比較的安いが、
それでも、↓の500㎖のスプライトが2.29ドル。当時のレートで250円。


日本なら100円しないのに。
また、ラーメン屋の前で値段を調べて驚いた。
ラーメン一杯が2500円もする。
なのに、客は結構入っている。
今はもっと高いだろう。
その値段でいいのは、
食べる人がいるからだ。
ニューヨークは飲食代金だけではない。
レストランで食べたら、
15から20パーセントのチップが加算される。

これだけの高い食事をニューヨークの人たちは支払えるのか。
その答は、「給料が高いから払える」だという。
なるほど。
物価が上がっても、収入が多いから、
大丈夫、ということなのだ。

発展途上国を見ると、年収100万円、などというのはざら。
それでも暮らしていける。
なぜなら、物価が安いからだ。

つまり、物価と収入は、
両輪の輪のようになって、
経済を構成している。

人件費を上げるということは、
生産コストが上がるということ。
すると、価格を上げざるをえなくなる。
当然のことだ。
人件費が上がれば、価格も上がる
人件費が低い国は、価格は安い。
問題は、そのバランスだ。

日本は、「失われた30年」ということで、
経済成長はほとんどなかったと言われる。
給料は30年間上がっていない、と。
しかし、物価も上がっていない。
日銀が設定したインフレ目標はなかなか達成されない。

人件費や物価が上がらないと、
GDPも上がらない。
従って、経済は成長していないということになる。
中国に抜かれて、GDP世界2位の位置から転げ落ち、
近く、ドイツに抜かれて、
4位の座に甘んじなければならないという。
もっとも、4位の原因は円安のせいで、
GDPはドルベースで計算するから、
円安ならば、総額が減るのは当然だ。

ここで、大きな疑問。
そんなにGDPは増えなければならないのか
経済は、成長し続けなくてはいけないのか
適度なところでとどまるということはないのか。

ニューヨーク市で、
雇用労働者の最低賃金(時給)は15ドル、2175円
ロサンゼルスでは、ホテルで働く従業員の時給は
19.73ドル、2860円。
そりゃ、物価も上がるはずだ。

日本では、最低賃金の全国平均が初めて1000円を超え、
1002円になった。
2、3倍の開きがある。

その結果、今、日本は、世界有数の物価の安い国になった。
円安も加わって、
外国人旅行者にとっては、
買い物天国になっているという。
特に、日本の食事はうまい上に安い
なにしろ、1000円出せば、
極上のおいしい料理が口にできる。
1000円ださなくても、
かつやのかつどんは、税込で594円。


今のレートなら、4ドル少々。
4ドルで、あんなにうまいものが
腹一杯食べられる国は他にあるまい。
吉野家の牛丼並盛が税込み468円。


サイゼリヤのハンバーグステーキランチは500円、
餃子の王将の炒飯は550円。
基本的に、日本は500円前後(3.5ドル)で
おいしい食事が食べられる。
アメリカ人がきいたら腰を抜かすだろう。

要するにバランスの問題だ。
収入も増えるが、物価も上がる国に住みたいか。
収入はそれほどではないが、
物価が安定している国に住みたいか。

昔、東南アジアに出かけて、
物価の安さ、特に飲食の安さに驚いたが、
その思いには、
半分は軽蔑が含まれていた。
物価が安いのは、
社会全体が貧しいからだと。
収入が少ないからだと。

今、日本が世界の中で物価が安い、
と思われていることに、
軽蔑が含まれていると、
自虐的に思ってはいないか。
先進国の中で、収入も物価も下の方にいるから、
見下されているとしゃくではないのか。
それは錯覚というものだろう。

日本の物価が安いのは、社会が貧しいからではない。
努力と工夫で適正さが保たれているのだ。
私には、日本のバランスはいいと思える。
今の水準が適切ではないか。
最近の物価上昇は心配だが、
まだ、デモが起こる段階ではない。
ストライキも起こらない。
みんなそこそこに豊かに生きている。
飢えて死んだ人は、いない。
(ただし、母子家庭などの貧困家庭には、
 救いの手を差し伸べる必要がある)

賃金が高いとはいえ、飲食価格も高いニューヨーク、そして米国。
賃金が安く、飲食も安い日本。
今後、日本も米国のように飲食価格は上がっていくのか。
そして、その時には賃金も上がるのか、
あるいは日本独自の道を歩むのか。

私の娘はリベラルで、
30年間給料が上がっていないことを怒っている。
上記のような「バランス」論を口にすると、
「政治家たちが言っていることだ」と怒る。
物価が安い=日本社会は貧しい(と外国に思われている)
とくやしがっている。
最近では、政治ネタは我が家では禁句となっている。