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映画『マハーラージ』

2024年09月07日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

       

1832年、インドのグジャラート地方のヴァダールに生まれた
カルサンダース・ムルジー(以下、カルサン) は、
疑問に思う事柄に対しては
徹底的に質問攻めにする子どもで、
インド社会にはびこる悪習に
強い疑問と反感を抱く正義感の強い青年に育つ。
ボンベイの新聞社に就職すると、
社会悪についての告発記事を書く記者として注目されていた。
たとえば、未亡人の再婚を自由にすべき、など。

カルサンにはキショリという許嫁がいた。
キショリは信心深い女性で、
ヒンドゥー教の一宗派のヴィシュヌ派の
主管僧侶(マハーラージ)を務める、通称JJを盲信していた。
JJは「足の奉仕」と称して
信心深い若い女性に性的奉仕を強要しており、
キショリもカルサンとの結婚前に
奉仕役に選ばれ、身体をJJに差し出してしまう。


それを知ったカルサンはキショリとの縁談を破棄する。
自らの過ちを悟ったキショリは自殺してしまう。

憤ったカルサンはJJの悪行を正し、
因習を断つために行動を開始し、
そのことを記事にするが、
絶対的権力者のJJを恐れる新聞社は掲載してくれない。
そこで、カルサンは独立して新聞を創刊し、
JJの悪行を書き立てる。
JJはあの手この手で妨害するが、カルサンは負けない。
そこでJJはカルサンを名誉毀損で訴え、
莫大な、一生かけても支払えないよう賠償金を要求する。
カルサンはJJに立ち向かおうとするが、
JJの脅迫により次々に証人を失っていく。
出廷を約束していた最後の証人も奪われ、
敗色濃厚な中、JJが出廷した裁判を迎えるが・・・

以下、ネタバレになるが、
最後の瞬間、
告発する証人が現れ、
それと共に、傍聴人の中から
「私も」「私も」と証言をする女性が現れる。
声をあげた女性たちの数は30人を越える。

これ、1800年代半ばのの話。
英領時代の1862年
ボンベイ最高裁判所で争われた
マハーラージ名誉毀損事件を題材にした法廷ドラマ。
日本で言うと江戸時代末期。
セクハラの概念もなく、
まして、女性蔑視と権力者と宗教が混在したインドで、
こんな裁判があったとは。
後の「Me Too」運動を彷彿させる展開に驚いた。

カルサンは無罪となり、
逆に裁判所はJJに対する刑事告発を勧告した。
こうして、インドにおいて
宗教は司法よりも上にはないという判例が
初めて作られたという。

篇中、不可触賤民の姿も描かれるのだが、
道を「不可触賤民が行きます」と
宣言しながら歩く。
カルサンはそんなカースト制度など気にしない風だったが、
カースト制ほどおかしなものはないから、
それへの反発も描いてほしかった。

女性たちは自ら進んで宗教指導者に身体を差し出しており、
名誉なこととすら考えられていた。
宗教指導者が女性信者と性交する様子を
人々はありがたがって覗き見ていた。
というのも描かれる。
長い間の因習は、おかしいと気づかない社会を作る。
中世ヨーロッパでも、領主による「初夜権」がありましたしね。

宗教指導者による女性信者の性的搾取を糾弾する内容であるため、
2023年に完成していたものの、
ヒンドゥー教過激派の報復を恐れて映画館での公開ができずにいた。
主演のジュナイド・カーンがイスラム教徒であることも問題を複雑化した。
その後、Netflix配信権を獲得し、
配信しようとしたが、配信差し止めの訴訟が起こされ、
一旦停止となった。
しかし、グジャラート高等裁判所が配信にゴーサインを出したため、
6月21日、即日配信が行われた。

監督はシッダールト・P・マルホトラ
脚本はビプル・メータスネハ・デサイ
主演のジュナイド・カーンは、「PK」のアーミル・カーンの息子。
JJを演じたのは、ジャイディープ・アフラーワト



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