[映画紹介]
田舎の舗装道路を自転車で疾走する黒人テリー。
耳にはイヤホンが入り、音楽を聴いているらしい。
背後から現れたパトカーが自転車に追突し、
テリーは倒れる。
警官がテリーをうつ伏せにし、手錠をかける。
横断歩道で止らなかったのと、
パトカーの追尾を無視したのだという。
所持品を調べると、
ビニール袋に3万6千ドルの現金があった。
警官は麻薬の金の疑いがあるからと押収する。
テリーは、その金はいとこの保釈金として持ってきたものだという。
それは出頭して言え、と警官は行ってしまう。
こうして、不当に所持金を奪われた男と警察との闘いが始まる。
いとこには事情があり、ギャングの大物の殺人事件の証人になったため、
州刑務所に移送されたら、ギャング団に殺されてしまうのだ。
前半は、いとこの命を守るための
警察の不当行為とテリーの闘い。
後半は裁判所で得た協力者が罠にかかったのを救うための闘いと、
警察との全面対決。
面白い。
特に、前半は、兄弟同然に育ったいとこを救うための
テリーの孤独な闘いが胸に迫る。
この手の映画は、主人公への感情移入が肝心。
その点で、及第点。
後半はやや感情移入が失せるのは、
協力者救出の経過がもどかしいのと
手段がやや強引なため。
ただ、警察の腐敗はよく描かれている。
警察は、自らの運営費を捻出するために、
民間の資産を没収して金儲けをしている。
テリーはその被害者だったのだ。
途中、テリーの正体がネットで明らかになる。
海兵隊マーシャルアーツプログラム、
徒手で戦う接近戦の戦闘システムの教官だったことが分かる。
警察は、敵にしてはいけない男を敵に回してしまったのだ。
しかも、この教官、警官を一人も殺さない。
そのポリシーで、警察とどれだけ戦えるか。
そして、腐敗をどうやって証明するか。
テリーを演ずるのはアーロン・ピエール。
訓練されたマッチョな肉体と憂いを含んだまなざしが魅力的だ。
ロンドン音楽劇芸術アカデミーの卒業生で、
グローブ座で「オセロー」の舞台に立ったこともあるという。
署長を演ずるのは、ドン・ジョンソン。
腐敗しきった権力者を憎々しく演ずる。
監督はジェレミー・ソルニエ。脚本も。
アメリカの田舎の警察の腐敗っぷりが半端ではない。
こんなことで市民の安全が守られるのか心配になる。
ラスト、病院に到着してからの1分38秒の長回しが見事。
Netflixで、9月6日から配信。
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